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コロナ禍で気づけたこと

たまに食事に行くのが楽しみな、とても美味しいお気に入りのお店があります。
ご夫婦お二人だけで切り盛りされていて、良い食材を使って丁寧に作られたお料理はとても美味しくて、いつ伺ってもお店はお客様でいっぱいです。
コロナ禍で席数を減らす前からずっとそうでした。

コロナ禍真っ只中の頃にそのお店の方が当店にご来店されて、少しお話ができました。
その方がおっしゃるには、
「減らした席数に慣れてしまって、もう戻れません。だんだん年も取るし、自分たちの時間も欲しいので休日を増やすつもりです。そして、コロナが収束してもこのまま席数は増やしません。多分、コロナ前の忙しさが異常だったんです」
とのこと。
「席数を減らしても忙しいことに変わりはなく、それを思うと席数がずっと多かった以前はいったいどう乗り切っていたのだろう」とも。

わたしの営む喫茶店は、そのお店のような超繁盛店ではないし、そもそも規模も形態もクオリティも雲泥の差ですから、同じように語るのは大変おこがましいと重々承知の上で、わたしはその時「すごくよくわかります」と言ってしまいました。

店主1人や2人だけでやっている小規模な個人店は、多くのお客様を受け入れるには限界があります。
でも、いつどうなるかわからない不安定な飲食業、「お客様が来てくださる時期にできるだけたくさん受け入れたい」「満席や売り切れでお断りしたくない」という思いから、つい「席数を多めに」「仕込みも多めに」「休まず頑張ろう」などと風呂敷を広げてしまいがち。
ところが、キャパを広げ過ぎると限られた労力では個々のお客様への丁寧な対応が難しくなり、手間暇かけて手作りしていればいるほど、仕込み量が増えるごとに時間もかかり、そしてロスも増えます。
結果、自分たちが疲弊して消耗して、その仕事に向かう意欲がすり減ってしまう。
働き方にも持続可能ないろんな形があり、売上や収入を第一に追うだけではない、続けていける範囲内での個々に応じた価値の置き方があるはずです。

当店は4年前から定休日を週1日から完全に2日にしたのですが、きっかけはその前年のわたしの体調不良でした。
過去のデータを見ると当時は売上も忙しさもピークで、度々体調を崩しては臨時休業をして、さらには円形脱毛症も発症。
そこでやっと休日を増やすことに踏ん切りがつき、以降、体調は大変良好です。
一時期は朝7時半からモーニング営業をして、そのまま昼間の通常営業をした後に、夜の貸切営業をして、演奏会などのイベントも毎月のように開催していましたが、数年前から通常のカフェ営業のみにしました。
考えてみたら、日々の通常のカフェ営業が、本来わたしが一番やりたいことなのです。
自分の「やりたいこと」と「できること」と、そして「求められていること」の間で右往左往して、無理せざるを得ない時期は必ずあるけれど、ジタバタと続けていく中でやっとわかることもあります。

コロナ禍での席数減や休業は、飲食店にとって大打撃だったことは間違いありません。売上はとても大事な指標です。
けれども、様々な制限のある中でなんとか続けてきたからこそ、コロナ前を振り返って「ずいぶん無理をしていたこともあるのかな」と気づくこともあります。

欲しいものすべてを手にして走り続けることができないなら、何を選択して何を諦めるか、何を大事にして走るのか、あるいは歩くのか止まるのか、その妥協点を常に探しながら他人と自分を喜ばせるためのバランスを取り、今もいろんなお店が踏ん張っているのだと思います。
お店じゃなくても、どんな仕事も働き方も、きっと同じなのでしょうね。

いろいろな制限と、いろいろな自由と、そしていろいろな選択について考えるこのごろです。

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