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「記号」と「コンテクスト」は何が違うのか?

noteでのマーケティング自論の整理にあたって、広告全体をぼんやりとテーマにするだけでは面白くないと感じたので、あえて「記号」というテーマに絞って書いている。
もともと、この記号論は大学時代に出会い、大して勉強してなかった中でも、強く印象に残っている学問だ。
その後も、ネット×広告に携わる中で存在感を感じる時もあったが、2019年「新記号論」という本に出会い、デジタルネイティブな時代でのマーケティングを考えるにあたり、この「記号」という観点での考え方の整理が必要だと強く感じた次第である。
なお「新記号論」はマーケティングに関係する部分も多く、読んでおくことをお勧めしたいと思う。

マーケティング業界において、「コンテクスト」が複雑な"コンテクスト"と、記号性が弱い「記号」

さて、タイトルの「記号」と「コンテクスト」の違いについての答えだが、自分の中ではほぼ同じ意味である。
ただし、根本的な違いがあり、それはマーケティング業界の人々にとって"コンテクスト"は記号性が強すぎる、つまり"コンテクスト"という「コンテクスト」が複雑である、ということだ。それに対して"記号"という記号性は弱く、聞きなれない人も多いと思う。
例えば、ターゲットをとりまく社会背景を"コンテクスト"と呼ぶこともあるし、ブランドによるトーン&マナーのようなものも”コンテクスト”と呼ばれることもあるだろう。なお私は前者をカルチャーと呼んでおり、後者はあくまでトンマナである。
その"コンテクスト"の用法も問題ないと思うのだが、私が言及したい「コンテクスト」とは、単語やシンプルなテキストの中にある空気感(できるだけ多くの人の中での共有事項)というものを指している。
そして、この複雑性が齟齬につながる可能性が多いため「コンテクスト」使用には慎重になっているのだ。
(ここまでの「コンテクスト」や"コンテクスト"の書き分けの意味を理解していただけるとうれしい。)
このような状況なので、マーケティング業界ではあまり使用されない、つまり記号性の低い「記号」で説明していったほうが齟齬なくしっくり説明できるというわけだ。

ちなみにマーケティング業界ほどブランディングができていない、という話はよく聞くが、”コンテクスト”を多用する人が自分の言葉の「コンテクスト」に一貫性がない場合もあるのは残念である。確かに言葉を選ぶというのは困難であるのも確かであるが、プロとしてもう少し考えてほしいものである。(自戒)

「記号化」とは?

前回の記事で「ブランドの記号化」「体験の記号化」という説明でマーケティングの役割を説明しているが、もう少し詳しく説明すると「記号化」とは、単に記号を決めるだけでなく「記号性を強める」という意味で捉えてほしいと思っている。
もしも、動画広告で説明するならば、ロゴやコピーなどの「記号」以外に、キャスティングされた人物や音楽、さらに背景、動画テンポなども、「記号性を強める」役割を持っていると考えてほしい。

マーケティング業界のメタな記号性について

今回は「コンテクスト」と「記号」についてのメタ視点を考えてみたが、実は、この他にも「認知」や「インサイト」のような言葉も同じような問題をはらんでいる。
例えば、これを読んでいるマーケティング業界の方はマーティングでの「認知」といえば、ブランドや広告のターゲット認知であると自動的に理解してしまうだろう。それは業界の慣習的なことであり、つまり記号性が高いといえる。そして「インサイト」のほうはさらに問題が根深く、様々な場面で多用されるのに関わらず「コンテクスト」がバラバラだったりもする。
今後はこれらのマーケティングでのメタな記号性を考える思索もしていきたいと思う。

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