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ワイルドすぎる中東飯、クルド料理を知るための10皿

今や、世界中の料理を楽しめるという意味においては、世界一、と言ってもいいかも知れない日本の首都・東京。いわゆる中東と呼ばれる地域の料理を出す店もいろいろある。エジプト、レバノンといったアラブ圏の料理(アラブ料理)、あるいはペルシャ語が広く話されるイラン(イラン料理)、トルコ料理といった中東の国々の料理を一度は食べたことがある方も多いのではないだろうか。

ここでは、その中東で、国境にまたがって暮らしているクルド人の料理を紹介したい。総人口は世界に3000万人ともいわれ、主にトルコ、イラン、イラク、シリアなどで生活している。ドイツなどの欧米諸国にも大コミュニティーがある。「国家を持たない最大の民族」という呼ばれ方もする。クルド語を使用するが、居住地域によって異なる方言が使われ、相互に意思疎通が難しいクルド人もいる。

この記事をnoteマガジン「中東の少数派ヤジーディ」の中にもいれたのは、ヤジーディはクルド語のクルマンジー方言を話し、クルド文化を共有するため、一般的にはクルド人ととらえられているため。

クルド人の食文化は、彼らが暮らしている各々の地域で随分と違うことは確か。トルコに住んでいればトルコ料理と共通する部分も多いし、イラン、イラクでもそうだ。その辺の地域差があり、「クルド料理はこれ」と言いにくいということは、読む前に含みおいてほしい。

①ケバブ

まずは中東料理の定番、4番バッターのケバブから。クルド料理で普通「ケバブ」というと、羊のひき肉を平らに細長く成型して焼いたものを指す。

ただし、上記のようなイラクのクルド・ケバブは、「イラク風」でもある。トルコのクルディスタン(クルド人が多く暮らす地域)のケバブとは微妙に違う。

②クージー(羊すね肉ご飯トマトソースがけ)

クージーは、もっぱらイラク・クルディスタンで食べられる料理で、イラクのアラブ人も食べる。バリエーションがけっこうあるが、羊のすね肉などをご飯の上にのせて、具のはいったスープ状のタレをぶっかけて食べる。イラクに行ったことがある方は一度は食べた味。

③チーキョフテ(手づくね生ケバブ)

牛肉や羊肉のいわゆる「タルタル」あるいは「ユッケ」。こちらはもっぱらトルコで食べられ、トルコ人の料理でもある。

シリア、レバノンなどいわゆる「シャーム」と呼ばれる地域のアラブ人も生肉を食べる。違いは、トルコのチーキョフテはかなり辛く、アラブの「ケッベ・ネイエ」は辛くはない、ということだろう。

④ピクルス

ピクルスは、中東あるいは欧米でも広く食される。クルド人のピクルスの特徴をあげるとすれば、塩辛いこと。クルディスタンの暑い夏を乗り切るためには、塩分の摂取が重要なのだろう。


⑤ナン

ナンも地域差が大きい。イラクのクルド人は、イラク共通の「ひし形ナン」をよく食べている。

ナンはクルド人の主食。クルディスタンを旅するとナン屋さんをよくみかける。


⑥鶏飯

「鶏飯」と勝手にネーミングしてしまったが、山盛りご飯の上に、ピンポン玉大の鶏肉のかたまりが何個ものっている料理。トルコのクルディスタンで家庭を訪問した時に何度かごちそうになった。野趣あふれる盛り付けが、いかにもクルド料理らしいと思う。

⑦キャッレパーチェ(羊の頭と足の煮込み)

羊の頭部と頭を煮込んだスープ料理。イランでも広く食され、「キャッレ(ペルシャ語で頭)パーチェ(足)」と呼ばれる。イランと異なるのは、味付けが辛いこと。

キャッレパーチェのバリエーションとしては、スープ状ではないものをブルグル(ひきわり小麦)に乗せた「丼もの」のような一品も。

⑧マスグーフ(コイの炭火焼き)

コイやソウギョを開いて炭火で焼いたもの。これもイラク料理として知られているが、イラクのクルディスタンでもよく食べられる。一時間以上、じっくりと焼くのが特徴で、ほくほくしたホッケのような味わいだ。

⑨スイカ

クルド人だけが食べる特別な果物などというものはないけれど、トルコ、イラクの内陸部というとやっぱりスイカ。その甘さとみずみずしさの虜になる。

⑩エズメ(トマトのペースト)

前菜についてもクルド人、というよりは、トルコ、イラン、イラクという国によって異なる傾向が強いかも知れない。

トルコならば、エズメというトマトなどで作るディップが特徴的。ナンにつけるなどして食べる。

さて、クルド人の食文化について、関心を持っていただけたでしょうか。ちなみに、クルド人はこんな人たち。

男性は民族衣装の、ダボっとしたズボンをはいている人が多い。私の経験では、素朴で親切な人が多い印象だ。

空気も澄んでいて、天気も晴れの日が多い。何度訪れても、何度でも訪れてみたい、と感じる場所、それがクルディスタンだ。

東京・十条には、「メソポタミア」というクルド料理レストランがある。まずは食を通じて、クルディスタンの文化・歴史の一端に触れてみてはいかがだろうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。「カフェバグダッド」について、簡単な説明を以下にまとめてあります。こうした文章を書いていることの動機・理由を説明してありますので、ご一読いただければ幸いです。


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