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2018.11.10 ヨーロッパ企画 『サマータイムマシン・ブルース』『サマータイムマシン・ワンスモア』 @横浜関内ホール

2018年11月10日(土)@横浜関内ホール


僕が今まで観た映画の中で最も好きなのが、05年の『サマータイムマシン・ブルース』です。
とある大学のSF研究会の部室に、ふと気付くと見慣れぬものが置いてあり、それがやがてタイムマシンだとわかり、ならばそのタイムマシンをどう利用する?と考えた挙句、とりあえず、前日にコーラをこぼして壊れてしまったクーラーのリモコンを、壊れる前に取ってこようと思いつく。それで、早速ミッションを開始するのですが、そのうち、過去を変えると矛盾が起き、現実が変わってしまい、時空がねじ曲がって自分たちの存在すら危ぶまれてしまうんではないかという事に気付き、なんとか辻褄を合わせようと、今日と昨日を行ったり来たりするというドタバタ・コメディ。
演者は瑛太、上野樹里、ムロツヨシ、真木よう子、佐々木蔵之介ら。
前半に張り巡らされた謎が、後半ピタリとつながれて、最後はオールOKになる様が実に素晴らしい。
タイム・スリップものが好きな僕は1度観ただけでハマってしまい、と言うか、1度観たら、あれはどういう事だったの?と、すぐにもう1度観たくなり、再び観れば、あれとこれがこう繋がってたのか!と、観れば観るほど発見があり面白く、TV放映をビデオ録画したものを何度も観たのに飽き足らず、DVDも購入してまた観て、って具合で20回以上は観たんじゃないかと思える大好きな映画なんです。

その映画は、もともとはヨーロッパ企画という劇団の01年の舞台が原作。
映画と舞台では演者も違うのですが、それからはヨーロッパ企画という劇団が気になっていました。


そして時が過ぎ、今年の夏、ヨーロッパ企画の20周年企画として、『サマータイムマシン・ブルース』の再演と、さらに、その15年後を描いた新作『サマータイムマシン・ワンスモア』が上演されるというではないですか。
僕がこの事を知ったのは、実際に8月に東京公演が始まって、その感想がネットで散見されるようになってから。大好きな藤岡みなみさんとか本秀康さんのTwitterで知ったんだったかな。
大好きな音楽の事はアンテナ張ってるけど、演劇なんて観た事ないからアンテナ張ってなくて、そういう舞台があるなんてずっと知らなかった。
つまり、僕が知った時には既に前売り券は完売状態で。
だから、ああ、もうこれは諦めるしかないんだなあ、と。
もっと早くこのニュースを知ってれば、と悔やみました。
そう思っている間に東京公演は終了。
地方公演は、まだ僅かにチケットが残ってる所がありましたが、わざわざ遠征する費用もないし、とにかく羨ましかったです。
で、よく調べたら、全国を周ってからの最終公演が横浜であるという事がわかったのですが、こちらも当然チケットは売り切れてて。
もうチケット売ってないんだから仕方ない、と諦めたものの、日を追うごとに、ますます観たい思いが募っていきます。
大好きな『サマータイムマシン・ブルース』に、その続編の『サマータイムマシン・ワンスモア』...なんて魅力的な舞台なんだ、観たい!!

その切実な思いが通じたのか、まず1つ目の奇跡が。
9月下旬のある日、ふとチケットぴあをチェックしてたら、『サマータイムマシン・ブルース』横浜公演のチケットが、リセールで売りに出ているではないですか!
むむ、これは!!
リセールとは、1度チケットぴあでチケットを確保した人が、事情で行けなくなった時に、発券前ならば、キャンセル扱いにして、他の引き取り手を探すシステムです。
しかも定価なので、引き取る方も、普通にチケットを買うのとほぼ変わらない感じでチケットが手に入るのです。
ただ、こういうリセールにチケットが売りに出されるかはまったくの未知数で、実際、あまり見かける事が少ないし、そしてそれをタイミング良く見つけられかどうかは運なのです。
それが、運良く見つける事が出来た。
半ば諦めていたけれど、これは獲るしかない!と、即行で申し込み、リセールでチケットを購入する事に成功しました。

で、そのチケットを獲れたのは嬉しかったんですが、僕が本当に観たいのは、『ブルース』ではなくて、その続編の『ワンスモア』の方なんですよね。あの話の続きが気になる、どうしても観たい。
中途半端に『ブルース』の方のチケットを手に入れてしまったもんですから、ますます『ワンスモア』のチケットが欲しくなる。
当日、会場で昼間に『ブルース』を観て、その続きが気になるのに『ワンスモア』のチケットは無くて、泣く泣く会場を後にする...。そんな事になったらますます悲しい。
なんとか『ワンスモア』のチケットを手に入れねば!
まず考えたのは当日券。他の地方会場では当日券が出た所もあると聞いたので、横浜もなんとか出ないものかと。もし出るならば、昼間に『ブルース』を観てから、その後、『ワンスモア』の当日券の列に並んでも間に合うのかとか、いろいろ考えて。
会場となる関内ホールやチケットセンターに問い合わせてみたんだけど、当日券が出るかどうかはなんとも言えないそうで。
当日券が出そうな気配はありませんでしたし、最悪、当日、ホールの前で「チケット譲ってください」のフリップ持って立とうか、とも考えましたが、そういう行為はダフ屋とどう違うのか、許されるものなのか。どうにも危険で、それもやりたくありません。
では、近辺の金券ショップかなんかで売りに出てないものだろうか。倍くらいの値段までなら払ってもいい。でも確実性がない。
なにしろ、チケットが無いまま会場へ向かうのは不安で仕方ない。なんとか事前に手に入れられないものか。

やはり、期待するのは、『ブルース』のチケットを手に入れたのと同じように、チケットぴあのリセールで売りに出されないか、という事です。
『ブルース』のチケットを手に入れられたのはかなりタイミングが良かった奇跡なのですが、そんな奇跡がまた起きるのか。
もし売りに出される事があったとしても、僕が見つける前に他の人に買われてしまう可能性は大いにある。
なので、なるべくこまめにチケットぴあのリセール情報をチェックするしかない。
僕はスマホは持ってないので、タブレットを使って、仕事以外起きている間はなるべく30分間隔くらいでチケットぴあにアクセスして、チケットが売りに出てないか、チェックするという毎日を過ごしました。
でも、仕事している間とか、寝ている間とかに、売りに出されて他の人に買われてしまうんじゃないかと不安で不安で。
そもそも、リセールで出てくる機会が少ないですしね。
希望はかなり少ない。
でも、そこに期待するしかない、と。そんな感じでした。

そんな毎日を1ヶ月以上過ごしましたかね。
こまめにチェックする作業もかなり疲れました。
Twitterで、チケットのやりとりをする方法も考えました。しかし、Twitterで知らない人とやりとりをするというのも、うまくいくのかどうか不安で。そもそも、Twitterの方でも、チケットを余らせている人なんてほとんど現れませんでしたし。
希望はますます薄くなってきました。
これはやはりダメなのか。チケット手に入らないのか。
公演日まであと2週間を切りました。

ふと、チケットの仲介サイトはどうなんだろう、と思いました。
仲介サイトには良い印象を持ってませんでした。
業者が人気のチケットを買い占めて、高値で取引する、そんなイメージです。
それが問題視され、チケット・キャンプとかは閉鎖に追い込まれた、という認識でした。
だから、仲介サイトそのものが問題あるし、減少傾向にあるんだろう、と。
でも、オークションに手を出す気持ちは毛頭なかったので、優良な仲介サイトがあるのだとしたら、どうなんだろう、と。
仲介サイトの事なんてまったく知らなかったものですから、1から勉強というか、まずは検索をしてみました。

そしたら、1番に出てきたのが「チケットストリート」というサイトでした。
ふーむ、どういうものなんだろう。
早速アクセスしてみました。
そして、そのサイトにて、「ヨーロッパ企画」を検索してみました。
すると、『サマータイムマシン・ワンスモア』のチケットが、1枚5000円で売りに出されているではないですか。
え、これって買えるの?
通常前売りは4500円で、当日券だと5000円ですから、この価格はほぼ定価と考えていいでしょう。
それが、売りに出されている。
検索したらすぐ出てきた。
なんてタイミング??
これを逃す手はないんじゃないか、と、急いで購入準備。
仲介サイトの事なんてまったく知らなかったものですから、システムもよくわからないので、どうやって取引するのかを調べ、そしてこの「チケットストリート」というサイトが怪しい業者じゃないかどうか、評判を検索したりもして。
公演日まで2週間以上あれば、サイトが間に入ってチケットを配送してくれるため、お互いの住所を知られずにすむとの事でしたが、この時点では2週間を切っていたため、出品者との直接のやりとりとなります(代金のやりとりはサイトがやってくれますが)。
とても不安ではあったのですが、どうしても欲しかったチケット、このチャンスを逃したら後悔する!
もし騙されたとしてもいいと覚悟して、チケットストリートに登録して、申し込んでみました。
実際には、チケット代に、手数料や配送料などがかかって、6000円ちょいかかったのですが、倍の値段でもいいと思ってたくらいですから安いものです。
そうして月曜日の朝、購入を申し込んだら、水曜日に出品者から反応があって、「明日発送する」と。
初めての事なので、上手くいくのかどうかハラハラしましたが、土曜日に無事チケットが届きました。
公演日のちょうど1週間前でした。

2つ目の奇跡が起き、どうしても欲しかったチケットを手に入れる事に成功したのです。
とても嬉しかったですね。久々に満たされた気分でした。
とにかく、僕が検索をしてみたタイミングが絶妙だったみたいです。
サイトでは、扱った『サマータイムマシン・ワンスモア』のチケットのすべてが履歴として残っていたのですが、それを見ると、全部で20件強の取引があり、中には、1枚2万円近くで取引されてたものとか、2枚連番でバラ売り不可の出品があったりとかで、僕が見つけた1枚5000円というのは、すべての取引の中で2番目に安いものでした。
この時より早く検索してたら、まだこのチケットは出品されてなかっただろうし、これより遅かったら他の人に買われてたかもしれない。
それが、検索してみたそのタイミングで見つかったのですから、偶然というか、縁があったというか、ホント、ドンピシャだった。
これで、安心して、当日、会場に向かう事ができる事になりました。
この舞台の事を知ったのはかなり遅く、絶望的な状態だったのに、幸運が重なって、2つの舞台とも観る事ができる事になったのです。
楽しみで仕方ありませんでしたね。


当日は晴れ。
横浜に来るのは15年振りくらい。
関内ホールは初めて来る場所だけれど、地下鉄の出口から50mくらいなのでわかりやすく、すぐ着いちゃった。
昼の部『サマータイムマシン・ブルース』公演は12時30分開場との事だったけれど、11時45分くらいに着いちゃって、まだお客さんはほとんどいなかった。
スタッフが受付の設置作業をしている様子を横目に、ロビーの椅子に腰掛けて時間潰し。

12時30分開場。
僕の席は1階27列35番。
後ろから2番目の席だ。
だけど、僕の好きな、通路側の席だったので、そこはラッキー。

13時開演。
演劇を観るなんて、初めての事です。
期待と不安が入り交じってました。
しかし、早速不安が的中。
演劇ってのは、生声なんですね、やっぱり。
今回は1000人以上のキャパのホールだから、マイク仕込ませて、スピーカーで音出してくれるかな?と微かな期待をしてたんですけど、やっぱり生声でした。
で、僕のいる1階ほぼ最後列の右端の席だと、いまいち声が聴き取りにくいんですよ。何しゃべってるのかわからない事が多々あって。
まず、これには困りました。
それからもう1つ、これは迂闊にも予想できなかった事なんですが、こんな後ろの席からでは、役者さんの顔が見えないんです!
なので、今誰がしゃべってるのかがわからないんです。舞台上に10人以上出てきてる時なんか最悪。
この劇団の事に詳しい方なら、声や背格好、雰囲気なんかで判別できるんでしょうけど、初心者の僕にはとてもムリ!
特徴のある人を中心にして、なんとなくでしか判別できませんでした。
髪型や衣装で判別しようにも、この舞台は今日と昨日を行ったり来たりするという設定が仇となって、余計に混乱。
それが大きな誤算でした。
演劇は、やはり大きなホールの後ろで観るのはキツイですね。だから演劇って、小さな小屋でやるのか...。

ストーリー自体は、映画で知っているので、大まかな流れはわかってます。
でも、映画より出演者が多く、キャラの分別にひと苦労。って言うか、ムリ。
それで、どうしても映画と比べちゃうんですよね。
ああ、この場面は舞台だとわかりにくいなあ、とか、映画だと、場所も変わるし、演者のアップにもなるから、わかりやすかったよなあ、って。

内容はやっぱり面白いし、映画との違いを楽しめた部分もあったのですが、どちらかと言うと、わかり辛さとか不満の方が勝っちゃって。
だんだん疲れてきて、後半30分くらいは眠くなってしまいました。
終盤に、伏線の回収の波が押し寄せて、いろいろと繋がっていくのが、この物語の醍醐味なのに、肝心のそこが眠気との戦いになってしまいました。

ほぼ2時間の舞台。
そんなわけで、僕にとっては辛い観劇となってしまいました。
終盤、見逃した場面が多すぎて、痛恨です。
はあ...。

眠くなってしまったのは自分が悪いとしても、まずは、後方席で演劇を観る事の辛さを体感しました。
夜の部『サマータイムマシン・ワンスモア』の方は、今度は2階、そして正真正銘、最後方の席なのです。
こんなんでは、楽しめないのではないか。
不安が大きくなってきて、暗い気持ちになってしまいました。


夜の部が始まるまで、近所のBOOK OFFで時間潰し。
収穫はまったく無くて、ガッカリしながらホールに戻ってくる途中で、disk unionを発見したり。
もっと早くdisk unionの存在を見つけておけば良かった...。


『サマータイムマシン・ワンスモア』は、17時30分開場です。
18時の開演15分前に会場入り。
今度の僕の席は2階10列5番。
2階最後列です。
後ろでも、1階と違って、ステージ全体が見渡せる感じなのはいいと思いました。
が、はたして楽しめるのか。
不安になりながら、始まりました。

そしたら、何故かさっきの1階席よりも、声がよく聴き取れました。ああ、これならまずまず安心。ストーリーに付いていけそうです。

物語は、SF研究会とカメラ・クラブOBとなったお馴染みのメンバーたちが、同窓会の折に、15年振りに、母校の部室を訪ねてくるところから始まります。
そして、そこには現役のSF研究会員(厳密に言うと違う)の男の子と、カメラ・クラブの女の子がいたのでした。
さらに、同級生だった蛭谷という人物も部室にやって来て...という流れ。
この、『ワンスモア』における新キャラ3人の登場が良かったですね。2階席後方からではもちろん表情はつかめないのだけれど、蛭谷はクセのある関西弁なので、すぐに見分けが付いたし、若い現役生もフレッシュな動きと声なので、遠目で見ててもわかりました。
『ブルース』よりも登場人物が増えたというのに、今回は、軸になる人物の見分けがついたので、ストーリーにも付いていけました。

やがて、またもやタイムマシンを駆使して、現在と過去を行ったり来たりする事になります。
現役生の女の子は、レポート提出しはぐったので、単位取得のために2週間前にレポート提出しに行きたいと言い、OBの面々は、かつての学園祭の日に行きたいと言い出す。
全員でタイムマシンに乗る事は不可能なので、分割して行き来する事にするのですが、やがてタイムマシンが3台、4台と増えていく事態に。
そして、タイムマシンの事は部外者だった蛭谷も巻き込まれて行って、学校存続の危機を救おうとなったり、恋心の行方も描かれたり。
もう、話があっちこっちへ飛ぶし、あれはどうなったんだ、これはどうなるんだ、そうか、あれが繋がるのか、などと、頭の中はやや混乱しながらも、次々に起こる笑いの連続で、まったく飽きませんでしたし、眠くもなりませんでした。
「自力で帰る」。何度思い出しても笑えます。
役者さんたちが、現在と過去が切り替わる短い場面転換の中で、早着替えをして登場するのも凄い。それが観られるのも舞台ならではの醍醐味。

そして、ラストは、ちょっと切なくなったかと思いきや、話は終わらずに、まだドタバタは続くの??と思わせる笑いと共に終了。
もちろん、スタンディング・オベーションでの拍手の嵐で舞台は終わりました。

いやあ、面白かったです。
素晴らしい続編でした。
声も聴き取れない、顔も見えないのでは、まったく楽しめないのでは?と思っていたのは全くの杞憂に終わりました。
途中10分の休憩を挟んでの、2時間50分。ワクワク、ドキドキで笑いっぱなしでした。
今回も伏線がたくさん散りばめられていて、それを見事に回収する快感はたまらないものがあったし、「時間」を巡る、バラバラのエピソードをうまく繋げるこの脚本はとても素晴らしかったです。こんなにこんがらかった末に上手くまとまる話を作り上げる上田誠さん、やっぱ天才。
でも、1回観ただけでは、この話を充分理解したとは言えないんだろうな。
気付かなかった小ネタや、見落とした伏線などがたくさんあったと思います。
現在と過去、さらに過去の過去とを行ったり来たりで、すべてのエピソードが僕の中で繋がったわけではない。腑に落ちない、結局わかんなかった所も多々あります。
でも、面白かった。
何回でも観たい。
撮影するという話だったので、DVD化されるかもしれません。そしたら是非購入して、この世界をもっとじっくり堪能したいところです。
『ブルース』の様に映画化なんかもしてほしい所ですが、現在と過去の2役をやるにはムリがありそうなので、それはありえないかな。

とにかく満足。
帰りの電車の中では、行ったり来たりした時空の流れに頭が一杯でボーッとしていました。
この舞台を観る事が出来て、ホント良かったです。
いろいろあって、いろんな幸運があって、この舞台を観る事が出来た。
もし、こんな素晴らしいものを観る事が出来ていなかったらと思うとゾッとします。
演劇鑑賞なんて、初めての事でしたが、良い1日になりました。

サマータイムは終わらない。
タイムマシンは永遠に。

最後まで読んでいただきありがとうございます。楽しんでいただけましたか? もしもサポートしていただけましたら、今後もライヴをたくさん観て、がんばって感想書きたいと思います。