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なんとしても何でも屋にはならない努力 │ カフェ開業メソッドvol.05

まず早速前回の「メインメニューと心中する覚悟」クイズの「答」というとエラそうなので「私の考え」から行きます。
結論から言います。

「ワインとチーズのお店」のほうです。

根拠や理由はあとで一応述べますが、理路整然と説明なんか出来なくても、「なんとなくワインとチーズのほうかなぁ」とぼんやりイメージ出来た人はもうそれでいいと思います。

いったん離れまして(いや、一応関連性はありますが)、本日の題目&結論からいきます。

それは、「何でも屋にならないように気をつけましょう」です。

自店のメニュー構成に関しては、様々な方向から、または、選択の余地もなく自分にはこれしか出来ないから、とか、これが好きでしょうがないから、と理由はいろいろかとは思いますが、どうであれ、「これを主役にあとはこれとこれとこれでいく」というようにメニューを決断して開業することになると思います(というよりそうしてください)。

晴れてお店が開店となり、お客さんがついてくると必ず起こる出来事があります。

それは、「日本酒を主軸に据えたお店でいこうと決めたが、お客さんから、【シャンパン置いてよ、ほら、誕生日とかめでたい日もあるわけで】とか、【女性客をつかむためにスイーツも充実させてよ、日本酒には合わないかもしれないけどさ】と言われるその都度その声を取り入れていったら結局よくある居酒屋のラインナップになった」みたいな話です。

メニューの数は増やせば増やすほど主軸がブレていきます。

ジャズに例えれば個人店というのは「ピアノ、ウッドベース、ドラム、のトリオ」みたいな感覚です。中でもリード楽器がピアノなのであればあくまでもメインはやはりピアノであり、リズム隊のソロもたまにあるとアクセントとなり効果はありますが、やり過ぎは禁物なのと、何よりまずいのが、「ホーンセクション入れてみようよ」「ストリングスでしょ」「パーカスだってば」と当初のスタイルにはないものを取り入れた瞬間ビッグバンドみたいになり膨れ上がったメンバー一人一人にギャラを払わなきゃいけなくなったりスケジュール調整も必要に・・・

あ、これは仕入れコストや在庫管理の比喩です。

主軸メニューのみならず、コンセプトの根本的な話にも助言してくれるお客様や友人が出てきます。

喫茶、カフェの形態のお店に「喫茶店ならやっぱりモーニングやらないとダメじゃない?」「今どきカフェといえばランチでしょ」「アルコールは単価も上がるからおかないと」もちろんこれらを言ってくれる人たちはほぼ全員がよかれと思って言ってくれます。

だからオーナーのあなたはそれを「受け入れない努力(すごく語弊があるフレーズですが)」をする必要があります(言ってくれたその気持ちには感謝はしつつ)。「これで行く!」と決めて、厨房設備や作業動線、仕入れ先の開拓、などなど全体を把握しているのは間違いなくオーナーのあなたです。


親切心から言ってくれているお客さんや友人はやはり全体像は見えていません。というより飲食の世界は目に見えない部分の動きがとても多いです。

おそらく開業前の段階の人は「大丈夫、オレ(ワタシ)のメニュー構成は揺るぎない。誰がなんと言おうと貫く」という姿勢がありそうなものですが、怖いのが実は開業後なんです。開店後すぐには結果が出ずにお客さんもほとんど入らず、毎日がなんとなく過ぎていく恐怖は体験した人しかわかりません。

加えてここで(今後述べていきますが)私が提唱していくのは「脱・スタートダッシュ」、「オープニングを派手にしない」という手法です。これは必然的に開店後しばらくお店そのものが盛り上がるわけもなく、かなり不安になるものです。

そんな時にぜひこの「なんとしても何でも屋にはならない努力」を忘れないでください。

クイズの「世界各地のジュース専門店よりもワインとチーズのお店のほうが向いている」話の詳細はしなくても良いような気がしてきてるのですがどうですか?

だんだんめんどくさくなってきました(笑)。別にいいですよね。

ひとつ言うと「ジュース専門店」ではなく、果実の中でも「苺」に特化し、ストロベリージュースのほかにアイス、シャーベット、タルト、ババロア、ロシアンティーなど、全て優良農園から採れた上質な苺のみを使用した「苺の専門店(本物の苺のテイクアウト販売もする)」なら有りかとも思います。店名は「ストロベリーフィールズ」とかにして・・・。


ただし、これが苺ではなく「いちじく専門店」になるとニッチ過ぎて厳しいということは前回言った通りです。とにかく「何でも屋にはならない」「メニューを増やさない」ということは本当に頭の中心に常に置き、とりわけ開業後しばらくしてからもいつもこの哲の掟の中に身を置き、主軸のブレを無くす努力(はい、完全に努力レベルになります)をしていきましょう。


さて、個人店開業に際して、私の中で「こういうふうにだけはしないほうが良い」という中の一つがこの「なんでも屋にならない。メニューを広げない」です。

あと二つ、計三つあるんです。哲の掟が・・・

もう一つが「価格競争をしない」。

そしてもう一つが「あまり大きなハコではやらない」。

というわけで、次回は「価格競争をしない」について述べていきます。

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