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参政党の統一地方選を振り返る

統一地方選で100人の議員を誕生させた参政党

今年4月に行われた統一地方選では、参政党が前後半合わせて100人の議員を誕生させ、支持者からは「躍進」の声も聞かれた。

トークライブでは何度か話したこともあり、そろそろこちらにも参政党の統一地方選についてまとめておきたいと思う。

全体概要

まずは、統一地方選結果の全体概要を記載したい。

総務省が発表している第20回統一地方選選挙結果から、一般市議選・町村議選・東京都特別区議選の候補者数と当選者数を取得し、合算したものを表にすると下記のようになる。

一般市議選・町村議選・東京都特別区議選の合計候補者数・当選者数

これを見ると、確かに参政党は100人の当選者を出しているが、同時に当選率が40%台と、3.4%の政女党(旧N党)に次いで2番目に低いことが分かる(神谷氏が「60点の結果」と投稿していたのは正直な気持ちだろう)。

当選者数では国民民主党に次ぐ規模とはいえ、当選率では大きく水をあけられていた。また、当選者数が1,000人を超える自民・公明・共産はさすがに桁が違う。新興政党の中では頑張っているが、やはりまだまだといった印象だ。

参政党各候補者の結果一覧を作成

国政選では、例えば2022年の参院選における候補者別市区町村別得票数のようなデータを総務省からダウンロードできるが、統一地方選ではそれが見当たらなかった。このため筆者は各選挙結果サイトを巡り、候補者230人分の選挙結果データを手打ちで作成した(このデータは記事の最後にアップロードしている)。

作成したデータの一部

マッピングした結果

データには自治体名列を追加し、市区町村レベルの名称を記載した。これにより、Looker Studioで地図上に当選有無をマッピングすることが可能となる。

下記がその結果である。当選率で濃度を変化させて(複数擁立している選挙区もある)おり、最も薄いピンクが擁立したものの全員落選、それより濃い赤が当選者を輩出した選挙区である。北海道・関東・関西で多く候補者を擁立し、当選させていることが分かる(なお、東北に候補が少ないのは、東日本大震災時に延期した影響で、選挙が行われていない自治体が多いことも影響している)。あなたの住む地域で、参政党議員は誕生しているだろうか。

当選者の順位傾向

各当選者が、定員内の上位何%の順位で当選したかを算出してヒストグラムを作成すると、下位当選に偏っていることが分かる。特に上位90%~100%(つまり下から10%)で合格している議員が最も多く、最下位滑り込み議員だけで14人いる。ちょっとした情勢の変化で、当選者数100人達成は危ぶまれる状況だった。ここには入れていないが、無投票当選の議員は6名である。

下位10%圏で合格している議員が最も多い

ラーメン店経営の2人は明暗分かれる結果に

ここからは、筆者が気になっていた候補の状況について振り返っていきたい。
参政党の選挙といえば、やはり「小麦候補」である。参政党は「小麦は有害」「GHQによって戦後持ち込まれたもので、戦前はなかった」などと小麦を攻撃してきたものの、何故か選挙の際には小麦を使ったビジネスを展開している人物が立候補する。今回の統一地方選にもそんな候補が(少なくとも)二人いた。

その二人とは、富山市の小路あきら氏と、東京都台東区の吉岡せいじ氏である。

小路あきら氏公式サイトより
選挙ドットコムより

吉岡氏は台東区で1店舗、小路氏に至っては富山市で複数のラーメン店を経営しており、ウォッチャーの間では「小麦の話はどうなったのか。それはそれとして参政党グルメマップを作りたい」と話題になった。参政党は新興政党にも関わらず大量に候補者を立てる資金力を見せており、その中には飲食店を経営している人物も時折見られる。候補者一人一人をチェックしていけば、全国にまたがる参政党グルメマップが完成するはずである。

選挙の結果としては、小路あきら氏は落選吉岡せいじ氏は当選と明暗別れる結果となった。小路氏には引き続き美味しいラーメンを作り続けてもらいたいものである。

なお、2022年の参院選で「参政党のパン屋」として話題になった渡辺ともひこ氏は今回、無所属で甲府市議会選に出馬し落選している。参政党との間に何があったのだろうか。

豊中市:3名立候補して全員落選

今回データを入力していて気になったのが、参政党が3名もの候補を擁立していた豊中市である。その3名とは、ばんば 正敏氏、長尾 ゆうすけ氏、谷 浩一郎氏だが、結果としては全員落選した

3名合わせた得票数は4,419票。最下位当選した中川 隆弘氏の得票数が1,901票で当選していることを考えると、2名に減らしていれば両名当選した可能性が高い。予想が甘かったのか、あるいは候補者調整に失敗したのだろうか。

スピリチュアル候補は落選

参政党といえば、スピリチュアル候補の存在も見逃すことはできない。2022年の参院選では、福島選挙区から出馬していた膣美容研究家の窪山氏が「宇宙人がインストールする」という名目で「宇宙人グッズ」を販売しており、その中には他サイトで1,380円で売られているブラシ(と同一と見受けられる製品)が18,000円で売られている例があった。2つが同一商品だとすれば、その差額は宇宙パワーということになるが、窪山氏は落選した。宇宙人の力を借りても選挙には勝てないようだ。

今回の統一地方選でもスピリチュアル候補が見られた。宮崎市議選に出ていた椎けいすけ氏はスピリチュアルカウンセラーの肩書きで「氏名透視」を行っている人物である。「幼い頃からスピリチュアル能力があった」と書いているが、スピリチュアル能力とは要するに霊能力のことだ。結果として椎氏は落選した。霊能力も選挙には通用しないようだ。

素粒水候補は落選

独特のビジネスを行っている候補は他にもいた。大田区議会選に出ていた末吉氏は「素粒水」の代理店ビジネスを行っているが、

氏はブログで「トンネル効果によって素粒水のエネルギーが容器を通過し、近くの水道水も素粒水に変えてしまう」「素粒水に変わってしまえば賞味期限は関係なくなり、半永久的に飲める」と宣伝していた(それなら素粒水を少し買うだけで無限に増やせるのではないだろうか…?)。

その末吉氏は大田区議会選で落選。素粒水は選挙に効かなかったようだ。

米本位制陣営の一角は当選

参政党自体が主張しているわけではないが、党員の中には金本位制ならぬ、「米本位制」を主張している人物がいる。それが和歌山支部長で、次回衆院選で大阪19区から出馬予定の林元政子氏である。統一地方選では夫の林元光広氏が和歌山市議選に出馬し当選していた。

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