嗚呼、職人の出張 ~新潟編~ part1

「秋田美人」という言葉があるように、秋田には美人が多いと言われている。
そこで私は一つの仮説を立てた。

言わずと知れたブランド米である秋田こまちが美人を育むのだとしたらどうだ。
同じく米の産地として知られる新潟にもまた、美人が多いということではないか。

なぜ私がそのような仮説を立てるに至ったのか。
それは、イベント出店で新潟へと出張に行くからである。

これはたんなる願望や妄想ではない。
経営者に必要とされる「仮説思考」というやつだ。
未来を予測し、望む結果を手にする能力である。

それはともかく、出店するのは三条ものづくり学校で行われる「工場蚤の市2019」。

地元企業などを中心に、「あと一歩で商品にならなかったモノ」や、「工場の隅に眠っていた道具」などが出品される。
高い金属加工の技術を持ったモノづくり事業者が集まる燕三条地域ならではのイベントなのだ。

昨年度の来場者数は2日間でのべ8千人だったということで、売り上げへの期待が膨らむ。
美人と出くわす確率も必然的に高まる。

会場で炊き立てのコシヒカリのようにツヤめいた瞳のお姉さんに声をかけられるかもしれない。
「漆器のことを詳しく聞かせてほしい。」と懇願され、夕食をともにする展開も予測しておくべきだろう。

「しかしあなたは新潟の人、、、。私が京都に帰ってからではあまりに距離がありすぎる、、、。」

出発の日の朝、そんなゆきずりの恋に想いをはせながら机の引き出しを開けた私は、わが目を疑った。

「ない、、、。お金が、ない、、、。」

机の引き出しにお金を多少は入れていると思っていたのだが。

見当たるのは散乱した文房具たち。
いつどこで作ったのかもわからない会員カードの数々。
いつどこで知り合ったのかもわからない人々の名刺の数々。

見間違いかと思って、一度引き出しを閉めた。
もう一度開けた引き出しの中には、やはりお金は入っていなかった。

消えたチーズを探して迷路をさまようという自己啓発本が昔あったが、私も迷路をさまよわねばならないのか。。
チーズというのはもちろん、仕事・金銭・恋愛などの比喩であるわけだが、私の場合は比喩表現などする必要もなく、現金が消失した。

現金を探して迷路に迷い込むのは生活困窮者かトレジャーハンターくらいのもので、自己啓発本にすらならないではないか。
そんなことを考えているうちに、あることを思い出した。

「そういえば、先週あの機械買ったな、、、」

「あの機械」とは家具作りに欠かせないもので、10万円弱もするものを思い切って購入したのだった。
わが銀行口座は2つあるが、片方には千円ほど、もう片方の口座には数百円の残高しかないことは憶えていた。

現時点での財布の中身は1万9千円。
私にしてはたくさんの現金が入っていたので、リッチな気分を味わっていた。
それがあろうことか全財産であったとは。

新潟の会場へは車に荷物を積んで向かうわけだが、京都からは最短ルートでも500キロ以上ある。
くわえて、わが愛車のジムニーはおそろしく燃費が悪い。

単純に片道のガソリン代と出店費用を合わせただけでも1万4千円が必要となる。
つまり、どう節約しても現地で売り上げを確保しなければ帰ってくることができないというわけだ。

はからずも背水の陣で新潟へと向かうことになった。
京都の韓信と呼ばれる日もそう遠くないかもしれない。

つづく。

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嗚呼、職人の絶望日記

京都で漆と木工の仕事をしている脱サラ職人。 父は職人歴50年のガンコ者。 絶望的な経済状況の中でおもしろおかしく生きていこうとする、希望にあふれた職人の生きざまをご覧あれ。 アウトドア漆器ブランド「erakko」を立上げ日記など。
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