よく見かける誤解〜酢酸ビニル単量体と酢酸ビニル樹脂 編〜

詳細解説すると、コメントに書ききれないため
引用させて頂いて、記事を起こしておきます。

最近、見てますと、
この方以外にも、非常によく見かけるようになった
誤解、間違いのようですので。

こちらの記事を拝読しました。

僭越ながら生化学、有機化学専攻からお話しますと「酢酸ビニル」(VAc)と「酢酸ビニル樹脂」(PVAc)は別物です。

単に「酢酸ビニル」とあるものは単量体、モノマーを指します。

厚労省のサイトに発がん性区分1bとされてるものも酢酸ビニルの単量体です。
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/108-05-4.html

「物理状態」の項にある通り、発がん性のある酢酸ビニル単量体は常温 (20℃、1気圧) では液体で、プラスチック状のものではありません。

酢酸ビニルの単量体は、非常に化学反応活性が高い性質をもつため、生物の生体に対して発がん性を示します。

この反応活性が高い単量体を大量に原料にして、反応活性が無くなるまで化学反応させて作られるのが「酢酸ビニル樹脂」です。ポリ酢酸ビニルとも呼びます。

この反応を付加重合反応と呼び、生成された酢酸ビニル樹脂は、無数の酢酸ビニル単量体の反応しやすい部分、よく手に例えられますが、その手同士がガッチリつながった非常に安定した状態になるので、反応活性を失った安全な物質に変化します。

このため食品メーカーさんも、「酢酸ビニル樹脂」は安全性が高いとしています。

天然由来のチクル樹脂も、似たゴム系樹木の樹液からつくる天然ゴムにラテックスアレルギーがある方はアレルギーの交差反応に注意が要りますので、そのアレルギーの場合は酢酸ビニル樹脂の方が安全とも言えます。

また、「酢酸ビニル樹脂」から酢酸ビニルの単量体に戻すには、300℃以上の高温、無酸素状態でないと戻すことが出来ません。
非常に安定してしまっているため、加熱してエネルギーを加えてやらないと単量体同士が繋いだ手が切れないためです。

燃えやすいものを燃やす時は少しの火で燃えますが、燃えにくいものを燃やす時はガンガン火で長い時間炙り続けてやっと燃えるのと似た性質です。

「酢酸ビニル樹脂」中の単量体の検査分析についても、
厚労省のサイトに情報があります。
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta5925&dataType=1&pageNo=1

ガムに使われる酢酸ビニル樹脂は、単量体が検出された場合は、食品衛生法第四条違反となり、かなり重いペナルティが科されます。

物質に関しては文字だけ追うと、現物の詳細が不明でご不安になられることもあると思いますが、

発がん性のある液体の酢酸ビニル(単量体)と、酢酸ビニル樹脂はて別物であり、ガムには発がん性のある危険なものは使われていないこと。

未反応物が混入すれば、メーカーに重いペナルティがあること。

以上の2点は安心されても良いと思います😊

その他の甘味料については、成分ごとにアレルギーに該当する方は気をつけられた方が良いと思います。

ついでに、「酢酸ビニル樹脂」を使った接着剤のお話。

酢酸ビニル樹脂は水には溶けない性質です。

接着剤に使われるものは、

ひとつは、
酢酸ビニル樹脂を有機溶剤に単純に溶かしたもの。
ホムセンで売ってる発泡スチロール用が代表例。

もうひとつは、
酢酸ビニル樹脂の分子鎖レベルで水に分散させる加工をした水系エマルション。
こちらは木工用ボンドが代表例です。

食品に使用する酢酸ビニル樹脂は、グレードも高く
人体には害が無いものですが、

接着剤にする場合は、上記のどちらのタイプも、
生産加工の過程で人体に有毒な有機溶剤や、
エマルションにするために分散材を使います。

別途、危険な成分が入っているため
酢酸ビニル樹脂の接着剤には、
万一、誤飲した場合の処置などが注意書きされているのです。

化成品メーカーの研究者レベルでお話しましたので、
少し難しいめの話になってしまったかもしれませんが、

安全が危険かは、名前の雰囲気などでは分かりにくいですので、
素人判断せずに、餅は餅屋。
それぞれ現物を取り扱った経験がある人に聞くのが一番手っ取り早いです😊

酢酸ビニル樹脂をはじめ、世の中に流通しているものは
昔に比べたら今は比較的安全になりました。

むしろ、メーカーの工場の中では、
お話の中に出た「酢酸ビニル単量体」のような
一般市民が触れることが無い危険なものを頻繁に扱って
安全な素材になるまで従事されている従業員の方が、この日本にもたくさんいらっしゃいます。

私がメーカーを早期退職した頃は、
化学合成工場の従業員は、
安全な製品になる前の物質
反応前の危ないものに晒されてる自覚があるので、

せめて食べ物くらいは…
とオーガニックや無添加のお店探したりしたものですが、

近年、石油由来だなんだと言われるようになってから
やり取りがある元同僚とも
あまりオーガニックや無添加はもういいや。
という雰囲気に、すっかりトーンダウンしてしまいました💦

ある元同僚は、いくら間違いと知らずに言ってることでも
石油由来だなんだと言ってるところで
飯食っても美味ない。と
自分で土地借りて家庭菜園始めたようですが😅

石油由来品の安全性試験などでは、
間違いは決して許されないし、
生産サンプルごとに毎回、丁寧な分析も要る。

品目も多く、同じ品目でもグレード別があったりで
帰宅は女性でも深夜になることも珍しくなく、
その上司になると家には風呂入りに帰ってるだけで
すぐ会社に出てくる。

安全で良いものを作りたい思いは、
オーガニック農家の方や無添加食材でお料理を出されてる方と何ら変わりはないです。

例え、知識が足りない間違っていたためとはいえ、
誰でも、自分がその思いを持ってやっている仕事に
ケチをつけるような所で食事をしようという気分にはならないのが人情のようです。

オーガニック農家さんにしても、
こだわってる栽培方法を、大雑把に主語を大きく
コメはコメでしょう!
と言われたら嫌だと思います。

それと同じことを、何故か他の分野には向けられる。
私はそれが今は少し悲しいな😭

物質名は細かく区別して誤解のない正確な情報でなければ意味がないと思います。

専門外の放射能の分野は、その専門に任せて
詳しく分からないことには私は触れないけども、

経験上分かること知ってることであれば
自分と人の不安を煽るよりも、
現物を扱った正確な知見で安心を届けたいですね😊✨✨

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