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開けっぱなしのトイレ

小学2年生の息子が、ある時から怖がってトイレのドアを開けっぱなしで
するようになってしまった。
それを夫が
「中国人やないんやから!!!」
と咎めた。

また人種差別のようなことを言って!!!と
思いながら、あることを思い出す。

10年ほど前に、中国人の友達とインド人のその友達の彼氏と私とで
ネパールの山登りに行ったことがある。
ネパール【ポカラ】の山を転々として、山小屋に泊まりながら登り、
降りてくるという旅だった。
出発点はポカラの宿。
行きに荷物を置いて、トイレに行くとトイレのドアが開かなくなった。
ドアが歪んでいて、一度閉めると、女ひとりの力では中から開かない。
トイレの窓から大声で友達と彼を呼び、大きな男の人が
体当たりをすることで扉が開いた。

部屋の鍵は開けたままにしていたから、出られることができた。
一応、宿の人にはトイレ一度入ると出られない仕組みになってるよ!
もう、開けてするけどね。なぁんて、冗談を言いながら伝えた。

3泊の山登りから降りてきて、気持ちは晴れ晴れしかったが、
足はパンパン、体が全部が痛い。疲労困憊。重い荷物を持っての本格的な山登り。
山登り自体、初めてだった三人は疲れ果てて、それぞれの部屋に戻って、
眠ろう。
ということになった。
夜も遅かった。

山小屋に水シャワーが出る所もあったが、山は寒いので
体を拭くのが精一杯だった。
気持ち悪くて、シャワーに入ってから寝ようと
ボーっっとした頭で大きなタオルを一枚体に巻きつけて
トイレに入った。
その宿のトイレはシャワーとトイレが一緒のタイプだ。
気持ちいいぃぃぃ。至福の時。
温かいお湯がこんなにも幸せを運んでくれるのか。
これでスッキリ眠れる!!!
と思って、思い出した。

私、扉を閉めてしまっている・・・。
どれだけ引っ張っても開かない。叩いた所で誰も来ない。
やってしまった・・・。
出られない。朝まで待つのか?
ここで?
裸で??あぁぁぁぁぁぁ、ベッドに横になりたいよ〜〜〜〜!!!
と半泣きになっていたが、あることを思い出した。

私の部屋は2階。
戻ってきた時に、1階のロビーでインド系のターバン巻いたおじさん達二人が
楽しそうに喋ってたはず!!

「Help me !!!! Help me !!!!」

とりあえず、ありったけの声で窓から叫んでみる。
お願い、聞こえて!!
吹き抜けのタイプの宿だから、聞こえるはずなんだ。
叫び続けて、数分。

おじさん達が、何事かとやってきてくれた!!
ターバン!神!!!
小さな窓から泣きそうな私は状況を説明する。
トイレが開かないで閉じ込められたんだ!!
ずっとこのままだと、寒くて死んじゃう!!
宿の人を呼んできて!ドアを開けて!!

「マダム?アーユーネーキッド?」(お嬢さん、裸じゃない?)

あぁ。そうだよ。そうだけど、結構、どうでもいいよ。
タオル巻いとくからさ。頼むから、出してくれ。

宿の人が慌てて蝶番を外して開けてくれた。
「Sorry,madame」
そして、部屋を変えてくれて、翌日は送らないって啖呵切っていた
空港まで無料で送ってくれた。
どうか、このことは口コミに書かないでほしい。と
支配人に頭を下げられた。

当時から口コミは客足に影響したらしい。

空港まで送ってもらっている間、
中国人の友達とインド人の彼に
昨日の夜の私の武勇伝を話した。
「全然、ヨシミの声聞こえなかったよ。眠っちゃってた!
それで、ヨシミの部屋も新しかったし、空港まで送ってくれるのね!!」
と中国人の友達。

「大変だったわね。ヨシミ。
でも、私は元々、トイレは
ドアを閉めないから
ヨシミのようにはならなかったわ!」

中国人はトイレのドアを開けてする。
うん。そうだった。
中国行った時、ドアがないトイレ、いっぱいあったわ。


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#トイレのドア
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#旅する助産師

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