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追い詰められた話 1

一人暮らしにも慣れて数年

この間、母が心臓弁膜症の手術をしたり
父がアスベスト被害からの
中皮種でこの世を去ったり
私の人生の中でも激動の数年だった

父の葬儀が済み、これからまたそれぞれの
日常が戻ってくると思っていたら
母に「寂しいから実家に戻ってきて欲しい」
と言われた

ちょ、待てよ!(キムタク風)

そもそも私が一人暮らしを始めたのは
“出戻りと暮らすなんて恥ずかしい” と
世間体第一の貴方達に追い出されたからだ

どの口が言う!?
勝手すぎるだろーが!

と口に出しては言わなかったが
既に私には私の生活リズムがあり
今まで通りの生活に戻ることにした

それでも今まで父に頼りきりだった母が
独居老人となったことは気がかりで
しばしば様子を見に行っていた

ある日仕事帰りに実家に寄ると
チャイムを押しても返事がない
どうやら母は出かけている様子
そろそろ日も落ちる時間だし
すぐ帰ってくるだろうと待つことにした

何かあった時の為に鍵を預かっていたので
鍵を開けると内側からチェーンがかかっている

え?

心配になりドアの隙間から
声をかけてみたが返事はない

裏口に回るとこちらも施錠されている
裏口のカギは持っていなかったので
とりあえず妹に連絡
妹も驚いてすっ飛んできて
大きな声で呼んでみたがやはり返事はない

二人顔を見合わせる
「まさか家の中で倒れてるんじゃ…」
「警察に連絡する?」「救急車呼ぶ?」
二人揃って半ばパニック

数分後、警官が二人やってきた
相変わらず中からの反応はなし
仕方がないので裏口のガラスを割り
警察官が中に入って確認することになった

警官:万が一の事態だったら
   その姿は見たくないでしょうから
   ここは私達二人が入って確かめます

その言葉にギクリとした

すっかり日が落ちて家の中は真っ暗だ
ガラスを割り警官が懐中電灯で
照らしながらゆっくりと入っていった

▶2へ続く


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