重症ASにおける腸管血管異形成の頻度と治療後の変化

N Engl J Med. 2023 Oct 19;389(16):1530-1532.
Gastrointestinal Angiodysplasia before and after Treatment of Severe Aortic Stenosis より

参考 Heyde症候群について(旧ブログより. NOTEでもまた書きます いずれ)

重症のASにおいて 後天性のvWFの欠乏を生じ, 腸管の血管異形成より出血を繰り返す病態. しばしば原因や出血原不明の消化管出血の原因として重要である.

ASに対してTAVRを行う予定の患者群で,
 さらにHb <11.0g/dLを満たす50例を対象とし, 全例でTAVR前に全消化管の内視鏡検査を施行した.

■ Angiodysplasiaは94%で認められた.
□ 病変の部位は, 胃に26%, 小腸に69%, 結腸に49%
□ 活動性の出血は5例で認められた(552部位中の5箇所, 1%)

■ TAVR後に再度腸管検査フォローが可能であったのが31例.
 
□ このうち初期の検査においてGAVE(gastric antral vascular ectasia)を認めなかった30例において, Angiodysplasiaの数やサイズを比較した(GAVEがあると正確なAngiodysplasiaの数が観測できないため).
 
□ GAVEを認めた1例に対しては個別に評価した.

アウトカム

■ TAVR後, 平均8.2±1.8Mで消化管検査フォローを施行.
□ Angiodysplasiaの病変数は有意に減少
 9.0±12.2箇所 → 4.0±5.1箇所(MD -4.97[-8.42~-1.52]).
□ また, サイズ(径)も有意に縮小していた
 2.5±2.9mm→1.4±3.1, MD -1.06[-1.59~-0.53]

■ GAVEを認めた1例でも, ほとんどの病変は消失していた.
■ どの患者でも活動性出血は認めず, またHbはTAVR前と比較して改善した.


このことから, 重症AS自体がAngiodysplasiaの原因であり, 治療後に改善を認めた可能性がある. TAVR待機患者のAngiodysplasiaの頻度もかなり高い.
うっ血や心不全に伴う拡張の要素があるのだろうか
そこにvWFの欠乏を生じ, 出血しやすい病態がHeyde症候群と言える.


継続モチベーションになります。 いただいたサポートでワンコの餌にジャーキーが追加されます