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企業では「従来のやり方を少し変えればDXができるのに、それを知らない」件

はじめに

筆者は生命保険会社のCDOとして、社内のデジタル戦略や執行支援をする傍ら、顧問先やパートナー企業のDX支援、自治体向けのビジネス発想支援や官公庁のDX推進委員を務めており、日本全体のDX推進や人材育成のあり方を考える活動に携わっています。この関係で、多くの事業会社や自治体、官公庁からDX人材育成の方法や進め方、組織内の巻き込み方についての相談を受けることが多くあります。

その内容には以下のようなものが多くあります。

「DXは難しい」

「DX人材がいないし育たない」

「新規事業部門を作ったがメンバーはネットワーキングと称して飲み食いと集合写真ばかりアップしている」

「外資の提供するデジタルツールに金がかかってしょうがない」

「社長や役員がエグゼクティブセミナーで厄介なものを背負ってきた」
              など

このような話を飲み会などで聞いている中で感じることは「従来のやり方を少し変えればDXができるのに、それを知らない。大変勿体無い。」ということです。今回はこれをテーマにお話ししたいと思います。

DXの本質を理解していない

日本企業の多くは、DXの本質を理解していないと思います。デジタルという以前にビジネスや顧客価値に関する知識やスキルが足りない。要はやり方が分かってないのです。

例えば、食品メーカーが市場向けに新しい商品を企画・製造・販売する際、これまで通りの手法で進めてもDXにはなりません。社内でこれまで通りに企画し、これまで通りに生産し、これまで通りに流通に乗せて消費者に販売するだけでは、デジタル技術を活用した業務改革や新たな価値創造には繋がらないのです。

DXを実現するための手順

では、どのようにすればDXを実現できるのでしょうか。先ほどの食品メーカーの例を基に、以下のような手順を踏むことで、DXを実現することができます。これは立派なデジタルを使った顧客価値の高い商品を創るトランスフォーメーションです。そこにはデジタルやデータは手段でしかなく、メインは顧客価値やビジネス発想、社内外の人の巻き込み力です。

①商品企画の際、SNSでソーシャルリスニングを行う

②リスニングで得られた顧客をLINEグループに集め、新しい商品企画に参加してもらう(プロシューマーの形成)

③プロシューマーの意見を取り入れた商品候補を、社内公募したDX企画人材に議論させ、データも活用しながら選定する

④選ばれた商品を製造する

⑤製造した商品をAmazonなどを通じてネットで先行販売する

⑥先行販売の結果をまとめ、SNSでPRするとともに、購入客をファンコミュニティーとして運営する

⑦流通に乗せて全国で販売する


このように、これまでの仕事のやり方を少し変えるだけで、立派なDXを実現することができるのです。この一連の手順に関与する人材は、まさにDX人材と言えるでしょう。

日本企業のDXが進まない理由

では、なぜ日本企業のDXが進まないのでしょうか。それは、多くの企業がDXを実現するための方法に気づいていないからだと考えられます。「DXは難しい」「専門的な知識が必要だ」といった先入観から、自社の業務にDXを取り入れることを躊躇している企業が少なくありません。

しかし、先ほどの例からもわかる通り、DXを実現するためには、必ずしも高度な技術や専門知識は必要ありません。大切なのは、これまでの業務の進め方を見直し、デジタル技術を活用して顧客との接点を増やし、新たな価値を生み出すことです。

DX人材育成のポイント

では、DX人材育成のポイントは何でしょうか。筆者は以下の3点が重要だと考えています。

1. デジタル技術の理解と活用方法の習得

2. 顧客視点に立った発想力の醸成

3. 社内外の関係者を巻き込むコミュニケーション力の向上


DX人材には、デジタル技術の理解と活用方法の習得が求められます。しかし、それだけでは不十分です。顧客視点に立ち、デジタル技術を活用して顧客にどのような価値を提供できるのかを考える発想力も必要です。さらに、DXを推進するためには、社内外の関係者を巻き込むコミュニケーション力も欠かせません。

これらの能力を育成するためには、座学だけでなく、実践的な学びの機会を設けることが重要です。例えば、社内でDXプロジェクトを立ち上げ、プロジェクトメンバーを公募で集めるのも一つの方法でしょう。

プロジェクトを通じて、デジタル技術の活用方法を学ぶとともに、顧客視点に立った発想力やコミュニケーション力を磨くことができます。またワークショップ型のビジネス発想力講座なども有効です。筆者はこれを5年以上実施しています。1日で結構ですので顧客価値とビジネス発想力を体感してください。

まとめ

日本企業のDXが進まない理由は、多くの企業がDXを実現するための方法に気づいていないことにあります。しかし、これまでの業務の進め方を少し変えるだけで、立派なDXを実現することができるのです。

DX人材育成のポイントは、デジタル技術の理解と活用方法の習得、顧客視点に立った発想力の醸成、社内外の関係者を巻き込むコミュニケーション力の向上の3点です。これらの能力を育成するためには、座学だけでなく、実践的な学びの機会を設けることが重要です。

日本企業がDXを推進し、新たな価値を生み出すためには、まずは自社の業務をDXの視点から見直すことが必要不可欠です。そして、その過程で育成されたDX人材が、日本企業のDXを加速させる原動力となるのです。

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