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別海高校(北海道)#第96回選抜高校野球大会#21世紀枠#下剋上球児とは似て非なる別海高校(北海道)の魅力

「春のセンバツ」に北海道から二校が選出

96回目を迎える選抜高校野球大会に北海道から北海(3年ぶり14回目)と別海(21世紀枠:初)が選出されました。
北海高校は昨夏の甲子園にも出場し、今回で春14回、夏39回の出場実績を誇り、2016年夏の甲子園では準優勝も果たしています。
北海道では、「THE甲子園」的な超強豪校です。

一方、別海高校は、北海道外の方は正直、「???」とい感じでは無いでしょうか?

この北海道から選出された北海高校と別海高校は似たような表記なので、別海は北海の「VIVANT(別班)か?」のような感じがするかもしれませんが、別海高校は、甲子園に選抜されるべくして選抜された魅力的な高校です。
これから、その魅力を余すことなくお伝えします。

別海高校のある別海町とは

別海町は北海道の東の果てにあります。
北海道の東の果てということは、日本列島の東の果てですので(最東端は南鳥島)、海の向こうに択捉島という北方領土が見えます。

面積は1,320㎢、東京23区の面積が626㎢なので倍以上の広さです。
人口は1.4万人、甲子園の収容人数は4.7万人なので町民が全員応援に来てもアルプススタンドに収まるくらいです。
一方、飼育している牛の頭数は11万頭以上で、日本一の生乳生産量を誇っており、選手の実家の多くは酪農業を営んでいます。

冬の寒さは厳しく氷点下20度近くなる日もあり、一年の半分以上は氷点下の日が続き、一年の三分の一近くグランドに雪が被っています。

別海高校の魅力①(実は軟式野球エリート軍団)

これから、別海高校の魅力や強さの秘密をお伝えします。
いくら別海町に魅力があっても、野球部が一定程度の成績を上げなけれは、21世紀枠候補にはなりません。

別海高校は部員16名の地方公立校でありながら、秋の北海道大会でベスト4を果たしました。

なぜ、そこまで勝ち進むことができたのか?
まずは、その秘密に迫ります。

先ほど別海町は「北海道の東の果て」と紹介しました。

中学生が野球をする場合、二つの選択肢が発生します。
それは「硬式か?」「軟式か?」です。
甲子園常連校は硬式出身者がほとんどです。
中学硬式には「リトルシニア」や「ボーイズ」などのリーグがあり、それぞれのチームも格付けされ、そこでの実績が各選手の進路に影響します。
大阪桐蔭高校などの超強豪校には、その序列の頂点に立つ超エリートが入部するのです。

北海道にも「リトルシニア」や「ボーイズ」のリーグがあります。
私立の中には、「リトルシニア」チームを持っている学校もあり、強豪校は強豪リトルシニアとのホットラインを持っていて、その構図は全国各地でも、さほど変わらないかと思います。

で、「それが別海高校と何か関係あるの?」と思ってますよね。
実は別海町周辺の地域は「硬式野球未開の地」なのです。
「東の果て」であるが為、「リトルシニア」や「ボーイズ」のチームが無く、それに付随する「大人の事情」が作用しにくい地域だったのです。

「地の不利」が、軟式野球や地元高校にとって「地の利」となったのです。

では、「軟式野球を選択した選手は何を目指すの?」という話になります。
それは「全中」です。
「全中」は「全国中学校体育大会」の略で、中学生時代にバレーボールやバスケットボールをやっていた方は、「全中」と言えば目指すべき目標であり、出場することは、どれだけ光栄なことかが実感できるバズです。

令和3年、「全中」に別海町から別海中央中学校の野球部が北海道の代表として出場しました。

そして令和4年、「全中」出場を果たした北海道世代最強チームの主力5名が別海高校野球部に入学します。
そんな彼らが入部直後から、チームの主力としてみっちりと実戦経験を積み、令和5年の新人戦に脂が乗った状態で臨んだのです。

その経験はベンチ入りも難しい強豪校では難しかったことかもしれません。
なので別海高校は、ただの部員16名の地方公立校では無いのです。

「軟式野球エリート軍団の甲子園に対するアンチテーゼ」
これが別海高校の魅力や強さの秘密の一つ目です。

別海高校の魅力②(リアル南雲監督の下剋上)

昨年放映された鈴木亮平さんが主演を務めるTBS日曜劇場『下克上球児』というドラマをご存知でしょうか?
『下克上球児』は、10年連続で初戦敗退していた三重県立白山高校が、2018年に甲子園出場を果たした実話に基づいて作られたドラマです。

鈴木亮平さんが演じる越山高校(実話では白山高校)の南雲監督は、教員免許偽造により教職の地位を追われるも、外部指導者として甲子園出場を果たし、自らの下剋上も成し遂げます。
しかし外部指導者に至る話は、ドラマを盛り上げる上でのフィクションであり、実話ではありません。

しかしながらドラマ終了後、間も無くしてリアル南雲監督が誕生しました。
別海高校の島影監督です。

島影監督は北海道釧路市の強豪校である私立武修館高校の監督を務めていましたが2013年に解任されます。
解任に至るまでには様々な事情があった思いますが、北海道の地方中核都市である釧路市は、「リトルシニア」や「ボーイズ」に付随する「大人の事情」が作用する硬式野球勢力圏でありました。

その後、心機一転、故郷の別海町に戻り地元のコンビニに勤務する傍ら、3年ほど少年野球の指導に携わった後、2016年に別海高校野球部の外部指導者となり、今回念願の甲子園出場を果たしたのです。

別海高校の監督赴任当初は部員4名の時期もあったと聞きます。また教員外の職業と外部指導者を両立させている点、前任校での監督解任からの下剋上という点も下剋上球児と重なり、まさにリアル南雲監督です。

ここでも別海高校の魅力や強さの秘密を知ることが出来ます。
監督には、釧路の強豪校を率いたという実績と経験があり、その後の地元の少年野球指導で培った経験と人脈は地元有力選手のスカウティングに繋がりました。

もしかしたら少年時代、島影監督と関わりのあった選手がいたかもしれません。また21世紀枠の選出理由の一つに、少年野球指導などの地元ボランティアがありましたが、そんな地縁と地道な積み重ねが甲子園に繋がったのだったらこんな素晴らしい下剋上はありません。

下剋上野球と似て非なるもの

TBS日曜劇場『下克上球児』と別海高校の甲子園出場は重なる部分はあります。
しかしTBS日曜劇場『下克上球児』は劣等感からの下剋上でしたが、別海高校の球児は、そのような部分は一欠片もありません。

昨年秋の北海道大会で別海高校の試合を実際に観戦したのですが、彼らは底抜けに素朴で、垢抜けておらず透き通るくらい純粋です。
大人の我々には眩しすぎて直視できない程、真っ直ぐで輝いており、「下剋上」というよりは、その序列とは「別世界」の存在です。

同じ北海道民として、別海高校の球児達には、その純粋な目に甲子園という夢舞台を焼き付けて帰ってきて欲しい。
今はそう思うばかりです。

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