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ジェノゲスト服用のキロク part2



出産のときからお世話になっている産婦人科の先生は女性である。
最後に受診したのは、かれこれ3年前に子宮頸がん検診に来た時だ。そのときもついでにエコーで診てもらったが内膜症も筋腫もなかった。
出血がどんどん多くなっていること、痛みの質、出血のしかた、そんな諸々を先生に伝え、内診とエコーをしてもらう。
「うーん、真っ赤なさらさらの出血。結構出てるね。あ、やっぱりあるね、筋腫」
私の子宮の上側に、2㎝ほどの子宮筋腫があることがわかった。
「え、そうなんだ。」という軽いショックと、「だから出血量が増えたのね」という納得と。どちらにせよ冷静に受け止めて、診察台を降りて、床に血が垂れないように急いでナプキンをあてて服を着た。

「大きさは手術で取るほどではないけど、多量に出血するならまずそれを止めないとね」
診察室に戻ると、先生はパンフレットを取り出した。
ジェノゲストのパンフレットである。

ジェノゲストは、黄体ホルモン単剤の治療薬であり、妊娠に近い状態を作って月経困難症や子宮内膜症を治療するお薬。
40歳を超えると血栓症を誘発するリスクから、ピルの服用はすすめられないが、ジェノゲストはエストロゲンが入っていないため血栓症のリスクがない。
ピルより避妊効果は劣るらしいので、避妊目的の適用ではない。
副作用として不正出血や軽い更年期症状があるそうで、特に不正出血は、服用後半年間かなりの確率で出現する。
服用後、完全に出血が止まるまで半年ほどかかる場合もあるが、安定すれば、出血フリー、生理痛フリー、ホルモン変動フリーの生活が待っている。

ばっちり自分に合えば、月経からの解放という、夢のような日々が待っている…

先生が言うには、1人の女性が生涯10人以上出産していた時代と比較すると、現代女性は生涯で500回も生理の回数が多いらしい。現代女性は出産回数が多くない上に寿命も延びている。「要らない生理」がものすごく多いということだ。
それを踏まえて、先生は真顔で私に問う。

「あなたにとってさ、生理って、必要かな?」

セイリ、ヒツヨウ?

生理があることが生き物として仕方のない宿命で、必要というより必然?
必然というより、勝手に毎月やってきて悪魔のように私の心身を荒らすもの?という認識でいた私は、生理を必要かどうかなんて切り口で考えたことはなかった。
軽い混乱のあと、5秒ほど間をおいて答えた。
「必要、ないです」

「そうよね。生活の質が上がって、毎月あれが来る、って恐怖に悩まなくてよくなるなら、試してみてもいいと思うわ。このままだと貧血もどんどん進むしね。」
と、先生は言って、2週間分のジェノゲストと鉄剤(すでに中等度の貧血だった)を処方してくれた。

生理が必要かどうか。
必要ないなら止めてしまうことができるなんて。選択肢があるなんて。

毎月訪れる生理というものは、女性の人生において無視することができないものである。
生理との付き合い方は本当に人それぞれだ。
苦痛でしかないという人もいれば、女である象徴だからうまく付き合いたい、なんて人もいる。命を宿し育むためには必須の機能であるとともに、それ以外の期間も付き合わなければならない、自己コントロールできないもどかしい機能。生理があることで体調はもちろんメンタルも一定にならない。男性からしてみれば女性のメンタルのアップダウンは理解不能であろうし、それに振り回されるのが面倒と思うかもしれない。しかし、当の女性もホルモンに振り回されているのであって、自分でコントロールできない苦しみと毎月戦っているのだから、男性も一緒に振り回されてほしいと思う。

必要かどうかといわれたときに、必要な理由が全く浮かばなかった。
もう出産することもないし、毎月の痛みと出血は無いに越したことはない。生活の質を上げたい、体調もメンタルも一定にして、仕事もプライベートも楽しくこなしたいと切に思う。

かくして私は、生理痛・出血・ホルモン変動、3つのフリーを夢見て、ジェノゲスト服用を開始することにした。
(Part3に続く)


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