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Vol.46#挑め!Leading Article/英国経済は停滞しているのか

今日のテーマは”英国経済は停滞しているのか”です。

🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸

経済はお金とモノの動きですので金額や数量によって計測が可能です。一方で経済を動かすのは他ならぬ生身の人間ですので、計測された金額や数量の解釈は型どおり(technical)にはいきません。その典型的なものが現状をもって景気が良いとするのか、悪いとするのかという問題でしょう。何かしらの報告や統計数値が公表されるや否やアナリスト、学者、政治家、一般大衆が各々の威信と実益をかけ議論に興じています。
しかし、そうした短期的な数値の上がり下がりに振り回されず一歩引いて大きな傾向をみれば、問題点は明らかだというのが今日の内容です。

経済に関する語彙を確認しながら、読み進めていきましょう。


◎今日のLeading Article:Stagnation nation

The UK’s technical recession will likely prove to be short and shallow. Harder to overcome will be Britain’s chronic inability to generate growth and investment

It should surprise no one to discover that Britain’s economic performance at the end of last year was sluggish. Though some analysts consider the label a misleadingly severe term of art for so mild a downturn, it turns out that the two final quarters of 2023 saw a contraction sufficient to constitute a “technical recession”. Gross Domestic Product (GDP) fell by 0.1 per cent in the third quarter of 2023, and by 0.3 per cent in the last quarter. The combined effect of high interest rates and high inflation saw output fall across all major sectors, and by more than anticipated. Overall in 2023, the economy registered the faintest tremor of growth — 0.1 per cent. The UK is in a state of stagnation.
(中略)
More worrying than the ephemeral flux in GDP figures is Britain’s underlying trend of stagnation. Throughout the 2010s, the UK’s growth in output per hour collapsed to 0.7 per cent. For too long, Britain has tried to get away with being a lowinvestment economy, underspending all others in the G7. The sustained decline in productivity now threatens to significantly cramp the country’s ability to achieve any goal of note. Hiked by the pandemic, government debt now nudges 100 per cent of GDP; servicing the interest — £119 billion last year — would be greatly eased by a revival in productivity. How to unlock this trapped potential remains an unsolved political problem.

□解釈のポイント■■■

①technical recession /定義上の景気後退

ここでのtechnicalは特定の業界で通例となっているという感じの意味です。なんと景気後退には公式な定義がないそうです。そこで慣行として2四半期連続で成長率がマイナスになると、景気後退(recession)とします。こういう杓子定規は当然議論を呼ぶわけですね。

今の状況を景気後退とかいったら誤解を招くという主張に対して、2四半期連続でさがっているんだから通例となっている定義上は景気後退だよねといなしてます。

② ephemeral /短命の

1日しか持たないというギリシア語が語源です。ephemeraとなるとカゲロウのことです。成虫になってからの寿命は1日の短命な昆虫ですね。また本などの保存を前提とした印刷物に対してパンフレットなどの使い捨ての印刷物もephemeraと言ったりします。

そんな儚いGDPの動きよりも大事なのはその背後にある経済の停滞傾向だというわけですね。

③of note/重要な

note(言及)に値するもの、つまり重要であるということですね。

医療制度の改革やら防衛費の増額やら国には大事な目標があるわけですが、生産性が低くお金がないとそういうのも達成できない国になってしまうよということですね。

■試訳

英国のテクニカルリセッションは短期間、限定的となる見込。むしろ成長と投資を創出できない現状の打破が容易でないだろう

誰も驚きはしない事だが、昨年を終えた所で英国経済のパフォーマンスは停滞していた事がわかった。この表現に対してアナリストの中には景気後退は穏やかなものであり、用語としては強すぎる意味なので誤解を招くとする人もいる。しかし、実際の所2023年の第三四半期、第四四半期ではいわゆる”テクニカルリセッション”の要件を満たす経済の縮小があった。GDPの縮小幅は第三四半期は0.1%、第四四半期では0.3%。高利子率と高インフレが同時に起こった影響で、全主要産業で生産活動が縮小し、その縮小幅は予測値を超えた。2023年全体として、経済成長実績は0.1%と微弱なものとなった。現状を言うのであれば、英国は停滞している。
(中略)
GDPの短期的な動き以上に懸念されるのは、英国の潜在的な停滞トレンドである。2010年代をかけて、英国の時間あたり生産高の伸びは0.7%に急落した。英国が低投資経済からの脱却できないまま時間は過ぎ、その金額はG7最低となっている。

生産性が継続的に低下している事で、重要目標を達成する力が制約をうけてしまっている。パンデミックにより急激に増加した政府借入はGDPの100%に達する所まできており、利子の支払額は昨年で1190億ポンドにもなる。これも生産性が再び上がればだいぶ緩和されるはずだ。制約下にある潜在能力をいかにして解き放つのか。この政治的問題の解決が待たれている。

◇一言コメント:

タイトルにもなっている”Stagnation nation”は経済学で有名なロンドンスクールオブエコノミクス(LSE)とResolution fundingというシンクタンクが3年間に渡って行ってきた経済調査の最終報告書とも言えるレポートだそうです。ここ数年でいかに英国経済が停滞したか、そして英国はどうすべきかが提言されています。

https://economy2030.resolutionfoundation.org/wp-content/uploads/2022/07/Stagnation_nation_interim_report.pdf

計測可能な数値は客観性を重んじて淡々とまとめられるべきですが、その解釈とそれに基づくメッセージは主観的に未来を見据えて発信されるべきです。それは国も私企業も変わらないように思います。例えば四半期決算が芳しくない場合、指標やグラフで惨状を報告するだけではどこにも行けません。どうしていくかを発案し実行に尽力していくことが仕事なわけですね。


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