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Vol.52#挑め!Leading Article/募金に苦情

今日のテーマは”子ども病院募金への苦情”の話です。

🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸

ロンドンのGreat Ormond Street Hospital(以下GOSHと表記)は1852年に開設されてから、小児医療とその研究で卓越した実績を重ねてきました。病院の日々の運営は英国の他の病院同様にNHSからの拠出により賄われていますが、研究活動や最新の機器導入、スタッフの待遇改善の原資は様々な寄付と募金です。こうした運用自体は寄付の盛んな英国の国柄が良い結果につながる好ましい事例といえますが、その寄付を募る方法に問題があるようです。病院は募金活動を外部の企業にアウトソースしており、その下請先が募金を集めるやり方がえげつないというのです。

外観も診療も素晴らしい病院なわけですが。。。

The Times紙が行った潜入取材(udercover reporting)の内容と合わせて、読み進めていきましょう。


◎今日のLeading Article:Hard Sell

Trouble arises from the fact that the GOSH Charity is outsourcing fundraising to an agency called Acwyre, which subcontracts the work to a firm called IBA Global, which dispatches fun- draisers to go from door to door encouraging the public to sign up to a regular donation plan. Yet when our undercover reporter trained as a fundraiser at IBA Global, it became clear that many elements of their instruction and operations were transgressing the Code of Fundraising Practice.

Trainees were denied an hourly wage and instead worked on commission, receiving payments that varied according to the size of pledge they secured, and other performance-related bonuses.

They were schooled in pressure-selling tactics: one senior fundraiser even boasted he could make himself cry at will. Recruits sometimes walked as much as 10 miles a day, covering 120 households before the last doorknock at 8.30pm. And although GOSH is required to alert the local authorities over when and where they are fundraising, when our reporter went door to door in five London postcodes it transpired that the Metropolitan Police — the London licensing authority — had not been informed.

Door-to-door solicitation of donations is frequently unpopular with the public: the fundraising regulator warned last year that complaints about the practice had risen by 110 per cent in 12 months.

At best, it can feel mildly intrusive or inconvenient.

At worst, it is intimidating: for an elderly person living alone, the appearance of two determined fundraisers on the doorstep after dark may feel rather more like a demand than a request. It is therefore vital that commission payments do not create an additional financial incentive for largely young and impecunious fundraisers to “seal the deal”. That is partly why the Code of Fundraising Practice says “undue pressure” must be avoided, and commission pay used only as a very last resort.

As the Charities Aid Foundation has noted, the UK is one of the most generous populations in the world when it comes to giving money to charity.

But good causes that adopt a hard sell also risk the long-term hardening of hearts. Supporters are right to scrutinise what proportion of their donation is being spent on fundraising, which other firms are thereby profiting and what techniques are used. GOSH is not the only charity to employ such fundraising subcontractors. But they, and others, must now take the necessary steps to restore both proper accountability and public trust.

□解釈のポイント■■■

①impecunious/お金のない

pecuni-はラテン語で金銭の意味です。否定のimがついてお金がないという意味の言葉です。pecuniary(金銭に関わる)という単語も同じ起源ですね。

病院の外注先の、更に下請会社がグレーな感じの企業だったわけですね。お金のない、しかし血気盛んな若者を歩合制で雇ってお金を集めさせるわけです。一旗あげようと無茶しちゃうんでしょうね。

②undue pressure/不当な圧力

dueという言葉は当然のとか正当なという言葉ですの、否定のun-が付くと不当なという意味になります。程度が不適当で過剰という使い方もありますが、ここでは法律的にNGな圧力という意味です。Undue influence(不当威圧)という法律用語もありますね。

各自の善意で行う募金なんだから圧力をかけられる筋合いなどないわけです。そこを募金活動員達は玄関先にやってきたり、嘘泣きしたりしてサインさせようと食い下がるわけです。そりゃあ苦情増えますよね。

③hard sell/押し売り

強い圧力をかけて相手に物を買わせるセールスのやり方の事、つまり押し売りです。逆に物腰柔らかにセールスをする事はsoft sellと言います。

いくら小児医療の推進といった文句のつけようがない目的の下で行われようとも、押し売りのようなやり方を採ってしまうと人々の心は閉ざされ財布の紐も固くなるというものです。短期的成果志向のコミッション制で金額をのばそうとするやり方は募金活動と相性が悪いと言えるでしょう。


■試訳

問題の発生源はGOSHチャリティーが募金活動をAcwyreと呼ばれる業者にアウトソースしているという事実だ。その下請先にIBAGlobalという企業があり、募金活動をする物を各家庭を派遣し定期的な寄付プランに登録する事を促している。ところが本紙が覆面報道員にIBAGlobalでトレーニングを受けさせると、その指示と活動の少ない要素が募金活動規約に反している事が明らかになった。研修生の給与は時給制ではなく歩合制となっており、支払の受取額は確定させた額の大きさにより変動する。またその他のボーナスも成果に連動するものだ。
トレーニングの中で彼らは威圧的な販売戦略を仕込まれる。ある熟練の募金活動員などは好きな時に涙を流すことができると自慢してさえいる。新人達は1日10マイルも歩き回り120世帯を訪問する。制限時間は夜8:30までだ。またGOSHは募金活動を行う際には日時と場所を地方自治体に対して連絡する必要があるにも関わらず、我々の報告員がロンドンの5つの郵便番号に該当する地域を回った際、活動に許可を与える組織であるロンドン市警は関知していなかった事が明らかになった。
戸別訪問での寄付の依頼が嫌がられる事は少なくない。募金活動の監督官庁は昨年募金活動に関する苦情は12ヶ月間で110%も増加したと警告を発している。

控えめに言っても自宅に押しかけられるのはいささか邪魔で面倒なものだが、最悪の場合威圧的なケースもある。独居老人にとって自分の家の玄関先に日が暮れてからの時間、断固とした態度の募金活動員がやってくる事自体お願いというよりは要求だ。だからこそ、歩合制で経済的なインセンティブが発生しないようにするのが不可欠だ。そうしたインセンティブがあると募金活動員の大半は若くてお金がない為”契約をものにしよう”としてしまうのだ。これは募金活動規約に不要な圧力は避けなければならない、歩合制は最終手段としてのみ使用されると記載している理由の一つだ。チャリティー支援財団が述べているように、英国はチャリティーにお金を出すことについては世界でもっとも気前が良い国の一つだ。しかし、目的自体は良いものであって押し売りのような方法をとれば長期的には人々が心を閉ざしてしまうだろう。支援者は自分たちの寄付のうちどのくらいの割合が募金活動に使われているか、他の企業がその過程でどの程度利益を得ているか、どのような方法が取られているかを精査すべきなのだ。GOSHの他にもそうした募金活動の下請業者を利用している組織がある。今GOSHも、その他の組織も必要な措置を講じ、説明責任と世間の信頼の双方を取り戻さなくてはならないのだ。

◇一言コメント:

外注先、募金活動員に支払うお金を何故そのまま研究費や機器の購入費に回す事をしないのでしょうか。あえてそのお金を外注先に流すのは、それが元手の何倍にも相当する募金となって帰ってくるという打算があるのでしょう。しかし、募金活動員に半ば脅されるようにして募金をした人は以降も同様に身銭をきって募金をし続けるでしょうか。
そのお金は玄関先に現れた邪魔な存在を追い払う為に支払ったもので、できる限り次はないようにとおもうのが人間の心情です。継続的に募金をするどころか役所に威圧的な募金活動をやめさせるよう陳情をする人が増えて、それが12ヶ月で110%も増えた苦情の件数という数値に反映されたのではないでしょうか。

何にせよ自宅を何の関係もない人に訪問されるというのは面倒で気味が悪いものです。

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