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Vol.72#挑め!Leading Article/安全運転はスイッチで

今日のテーマは”車のダッシュボード進化への反動”です。

🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸

製品開発の在り方は会社によって様々です。顧客のニーズに応えるように機能を開発していくというのが勿論基本形ですが、製品が成熟してくると顧客のニーズを先読みして機能が先に開発されるような事も多々起きてきます。それがしっかりとした顧客の状況を踏まえたものであれば良いのですが、残念ながら顧客のフラストレーションの原因となるケースも多々あります。
乗用車のダッシュボードに採用される事が多くなったタッチスクリーンはその最たる例であるようです。一見先進的であり、制約の少なさなど設計的なメリットも大きいですが、調査をした見込客約6割がタッチスクリーンの設定しかない場合その車種を購入するのを再考するという事がわかりました。
これはプロダクトアウトのものづくりに対する顧客の明確な拒絶反応と言えるでしょう。車を運転するという動作には実体があり物理的な反応を伴う伝統的なスイッチの方が適している様です。何が何でも従来の物の方が良いとするのも問題ですが、我慢して運転動作に沿わないものを使って気を散らす必要はありません。

中盤にラダイト運動の張本人も登場します。読み進めていきましょう。


◎今日のLeading Article:Driven to Distraction

Traditional switches and buttons are preferable to fiddly dashboard touchscreens

Not all technological so-called progress actually makes life simpler, easier or less stressful. The near-ubiquity of automated call responses across banks, GP surgeries and hotlines is a daily source of frustration to millions, such that some farsighted companies now advertise the fact that a human will answer if you call them. In mobile phones, there is a growing secondhand market for solid, no frills “brick” models from 20 years ago.

Voice and text and that’s your lot. Now car manufacturers are the latest sector to discover that potential customers have a ceiling for how much innovation they are willing to accept.

A study by What Car? found that almost 90 per cent of drivers want buttons rather than touchscreen controls on their dashboards. A predominance of the latter technology in a model would make almost 60 per cent of prospective buyers reluctant to choose it. The reason? Drivers find screens fiddly, slow, complicated and, for those reasons, distracting and unsafe. Euro NCAP, the automotive industry safety body, agrees. Under rules in force from January 2026, only cars fitted with buttons, stalks or dials to perform five critical tasks will be awarded the highest safety rating.

Manufacturers are being forced to respond.

These are sensible measures, guided not by a Luddite antagonism to progress but by the recognition that, sometimes, what looks like an upgrade is nothing of the sort. The application of new technology has a tendency towards mission creep, in which apparently smart operating systems are introduced simply because they exist, whether or not they actually benefit the average user. Endlessly malfunctioning self-service supermarket checkouts are an example, as is the infuriating autocorrect function on SMS. Does anyone believe that such modifications add convenience? If it ain’t broke…

□解釈のポイント■■■

①fiddly/扱いにくい

Fidleは古英語でヴァイオリンの事です。熟達するのが難しい楽器として有名ですが、そこから扱いにくいというネガティブな言葉です。当の”violin”という言葉はラテン語圏、ローマ神話の神の名前に由来します。

タッチスクリーン、特に最近のものは反応も良く決して扱いにくいわけではないですが運転の動作には合わないんでしょうね。操作した実感が得られるような反応(カチッとかポチッとか)はないですし、パラパラ変わるので何をONにして何をOFFにしているかが分かりにくいんではないでしょうか。とにかくドライバーたちには不評です。

②Luddite/ラダイト運動と同種の

産業革命の反動として起きた機械を破壊する運動です。

語源はNed Luddという名前の少年です。逸話によれば1779年に織工をしていたNedさんは怠惰を咎められ鞭で打たれたり、他の若者からからかわれた事で溜まったフラストレーションが爆発し自らの仕事道具である靴下編み機2台を破壊したそうです、、、、って八つ当たりもいい所ですね。ラダイト運動の方はそれとは別に盛り上がっていくわけですが、その扇動者はキング・ラッドやジェネラル・ラッド、キャプテン・ラッドと名乗るのが通例だったそうです。ただ、真面目な研究によればこうしたシンボル的な部分の荒唐無稽さはとにかく実態は労働者の待遇改善を労働者が団結して主張する運動の先駆けであったとされています。政府は厳しい弾圧で押さえ込みを図りますがなかなかうまくいきませんでしたが、景気回復の局面で運動が沈静化した事から機械への反対というよりかは待遇改善を求める労働運動としての色合いが強かった事が窺われます。

Nedさん 確かに色々溜め込んでるような人相ですね

③mission creep /ミッション・クリープ

軍事用語です。特定の役割を果たすために派遣された部隊にあれこれと後付けの役割がつけ加わり泥沼にはまるという状態を指します。米軍のソマリア派遣で初めて使われたそうです。

最初は特定の機能を満足させる為に導入されたタッチスクリーンという技術が、多機能な新技術というだけで必然性がないままに様々な部分に展開されてしまったという事でしょうか。車も建機も計器類やモニターの刷新は大規模なコストアップ案件ですので、なんとなくという事はないと思いますが。中国の電気自動車などは本当スマフォみたいなダッシュボードですね。

■試訳

伝統的なスイッチ、ボタンが扱いにくいダッシュボードタッチスクリーンよりも好まれる
所謂技術的な進歩の全てが実際に生活をよりシンプルに、より簡単に、より成功したものにしてくれているわけではない。銀行でも一般開業医でも緊急窓口でも電話をかければどこもほぼ同じ自動応答。これにより日々何百万人もの人が鬱憤を溜め込んでいる。先見の明がある企業には電話をすれば人間が応答するという事実を宣伝する会社がある程だ。携帯電話でも、20年前の頑丈で装飾のない”レンガ型”機種の中古市場が拡大している。通話、テキスト、これ以上はない。直近では車の製造業者が潜在顧客が喜んで受け入れる技術革新にも上限がある事を発見した。WhatCar?誌による研究によって明らかになったのは、90%以上の運転者がダッシュボードにはタッチスクリーンではなくてボタンを求めており。タッチスクリーンだけのモデルは60%程度の見込み客が選択に消極的になっているという事だった。理由?運転者はスクリーンが扱いづらく、反応が遅く、複雑であるために気が散って危険だと感じているのだ。自動車産業の安全機関であるEuroNCAPもこれと同意見だ。2026年から施行された規則では、ボタンとスティック、ダイアルを用いて5つの決定的なタスクを遂行する車のみが最高位の安全評価を受ける事ができる事となった。製造業者はこれに対応することを強いられている。
これらは理にかなった措置だ。ラダイト運動のような進歩に反対する考え方によるものではなく、時として更新であると見えたものが全く実態を伴わないという認識に基づいている。新しい技術の応用の際には目的がずるずると変わってしまう傾向がある。高性能な操作システムが導入される理由がただそれが存在するという事だけで、それで普通の使用者が利益を享受できるかどうかは蔑ろだ。際限なく不具合を起こし続けるスーパーのセルフサービスレジもその一例だ。SMSの腹の立つ自動入力補正も同じだ。こうした変更で便利になったと考える人はいるのだろうか。これが故障でなくて。。

◇一言コメント:

タッチスクリーンの強みのひとつは直感的な操作とされます。実際に本を読む様な視覚重視の動作においてはページを進める独自の操作になれる事でマウスやキーボードを超える直感的な操作感を得られます。一方で文中にもあったように操作に重点がある運転などにはうまく馴染まないようです。運転という動作自体が自動運転技術や運転支援機能の普及で変容すればタッチスクリーンへの反発も和らいでくるのかもしれません。
ややプロダクトアウトな視点ですが、タッチスクリーンは高額な新規部品である反面で逆に考えればそれがあれば無数のスイッチや基盤の代替えとなる為に部品点数や設計のシンプル化に寄与します。また隙間や加工精度のばらつきの影響も出にくいので製品の耐久性にもポジティブな影響があるでしょう。

ただし、それらすべてを一瞬で無意味にしてしまうデメリットがあります。それは、、、取説を変えないといけない事です。しかも速かに、全面的に、とても気の利いた形で。修理やメンテナンス、トラブルシュートも。製造業のCS、ドキュメント担当者にとってはまさに悪夢です。


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