見出し画像

Vol.74#挑め!Leading Article/ロンドン証券取引所の凋落

今日のテーマは”ロンドン証券取引所の凋落”です。

🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸

英国が金融大国として名を馳せた時代は過去のものとなってしまいました。j日々の取引量は2007年以来最低水準、時価総額も往時の3割減、勢いのある企業は次々とアメリカを始めとする海外の証券取引所を上場先に選択する事を発表しています。英国経済の不調、Brexit、政府の年金投資への規制など理由は様々ですが既に大国の地位を失ってしまっています。政府も改革に着手してはいますが、時既に遅しです。

後半勢いよく馬も飛び出しますので気をつけながら、読み進めていきましょう。


◎今日のLeading Article:Capital Flight

Given that the London Stock Exchange has been central to the City for more than 200 years, and that the City has been central to the British economy for as long, the decline of the LSE is of national concern. The latest blow to it is the decision by Flutter, the gambling group behind Paddy Power and Betfair, to formally shift its primary listing to New York. London is also at risk of losing the forthcoming listing of Unilever’s ice cream division to Amsterdam, according to the company’s chief executive.

Last year was dreadful for London listings. Companies raised a mere $1 billion on the LSE in 2023, the lowest level since 2009. The biggest blow was the decision of Japan’s Softbank to list its Cambridge-based subsidiary Arm in New York, despite frenzied government lobbying to keep it in London.

This is not a recent trend. It started with the financial crisis. The average volume of shares traded daily on the FTSE All-Share Index dropped by more than three quarters between February 2007 and February 2024, according to Bloomberg, and the total market capitalisation of London-listed shares has fallen from $4.3 trillion in 2007 to $3 trillion last month. Over the same period, the market capitalisation of US stocks tripled to $53 trillion. Once the world’s biggest, London is now only the seventh largest stock market in the world, measured by market capitalisation.

To some extent, the British economy is to blame, for it has failed to produce the big tech companies that now dominate global equity markets. Old-world, low-growth businesses such as banking and mining are over-represented on the exchange. The problem is self-reinforcing: a shortage of tech companies means that London lacks the critical mass of expertise in the sector that is available in New York, which further discourages companies from listing in London.

Regulation has done its bit to compound the problem. New rules governing pension investments two decades ago pushed funds to shift from riskier equities to safer bonds. Politics took a toll, too. Brexit damaged Britain’s reputation as an outward-looking trading nation, while political turmoil, including Liz Truss’s bond market debacle, has dented faith in the UK’s governance.

Does this matter? A dwindling stock market is not a good look for UK plc. And although few jobs are involved in the short term, in the long term, a listing can shift a company’s centre of gravity, determining where jobs are created.

The government is desperate to revive the exchange. The Financial Conduct Authority has proposed a series of reforms, including a more permissive approach to dual-listing shares, designed to attract founders who want to list their companies while retaining control. The government is strongly supportive of the FCA’s proposals, but some investors are lobbying against them on the grounds that they weaken shareholders’ rights. The government is also trying to boost the capital available for investment in British equities by consolidating pension funds, which would allow them to take riskier bets, and by introducing a tax break, on top of the normal ISA, available only for investment in British companies.

These moves are welcome but they have been too slow in coming. The horse bolted some time ago, and with it Britain’s pre-eminence in a business in which it is now a laggard.

□解釈のポイント■■■

①UK plc/英国株式会社

英国を1つのpublic limited company(上場企業)に例えた表現ですね。国全体の経済パフォーマンスを指す表現です。

LSEに上場する企業が減るからといって別に企業が丸ごと外国に移転してしまうわけではありません。あくまで上場先、資金の調達先が変わるだけですので急激に英国の雇用が失われ、英国株式会社が空洞化するわけではありませんが、企業の中心が変わる事でゆくゆくは雇用も英国を離れるのではないかという懸念です。

②The horse bolted/後の祭りだ

shut the stable door after the horse has bolted(馬が飛び出してから厩の戸を固く閉める)という言い回しが元になっていますが、これは手遅れという事ですね。飛び出す前に閉めないといけないわけです。アメリカの馬の場合は、close the barn door after the horse has leftというそうです。boltは飛び出すという意味ですが古くは金属でできた矢を指しました。そこから勢いよく飛び出るという意味と、その矢の形をした留め金からしっかり固定するという意味が各々派生したようです。

今更改革などしても遅いわけです。他とのリードを広げ独走状態のアメリカ、新興のインド、そしてBrexitの好機を逃さなかったフランス。もはや追いつくのは至難の業です。このまま英国は破れ去ってしまうのでしょうか。

③laggard /後進、遅れた存在

lagは遅れるという意味の言葉で、そこから遅れている人。競争の劣位者を指します。

馬は去ってしまった、つまり手遅れになってしまったわけですが、その馬と一緒に英国の当該ビジネスの優位性も去ったということですね。当該ビジネスで英国は競争劣位者となっているのが現状です。

■試訳

ロンドン証券取引所が200年の間、シティの中心であり、同期間にわたって英国経済の中心であったとすれば、LSEの凋落は国の懸念事項だ。直近の痛手としてPaddy PowerとBetfairを運営するブックメーカーであるFlutterが上場先をニューヨークに移した事がある。またUnileverのアイスクリーム部門が予定している新規上場についても、同社の最高経営責任者によればアムステルダムに負けてしまうリスクがあるとの事だ。
昨年は上場に関してロンドンは不調であった。企業がLSEで2023年に調達した金額はわずか10億ポンドで2009年以降最低の水準だ。最大の痛手は日本のソフトバンクがケンブリッジを拠点とする子会社であるArmの上場をニューヨークで行う決断をした事だ。政府が熱心にロンドンで上場するよう働きかけたが無駄であった。これは何も最近になって始まった事ではない。始まりは経済危機だった。平均的なFTSE全株式インデックスの1日あたりの取引量は2007年から2024年の間に4分の3減少したことをBloombergが報じている。LSEの時価総額は2007年に4.3兆ポンドだったが、先月は3兆ポンドまで下落している。同じ期間にアメリカの時価総額は3倍となり53兆ドルとなっている。かつて世界最大であったロンドン証券取引所だったが時価総額で測定した場合、世界第7位の規模となっている。ある程度までは英国経済の責任ではある。世界の資本市場を独占する巨大テック企業が生まれる事はなかった。旧世界なのである。銀行や鉱業などの低成長ビジネスが多すぎる。問題は勝手にどんどん大きくなる。テック企業が少ない事が意味するのは、ロンドンではニューヨークで得られるノウハウが閾値に達しないという事であり、それによってロンドンで上場しようとする企業はさらに減っていく。規制はこの問題を増幅するのに一役かっている。20年前の年金投資の規制法によって資金がリスク性の強い株式からより安全な債権に移動した。政治の影響もある。Brexitが開かれた貿易国という英国の評価を損なう一方でLizTrussの債権市場に関する大失敗を含む政治的な混乱が英国政府への信頼を急落させた。これは問題なのだろうか。株式市場の凋落は英国株式会社にとって朗報とはいえない。短期間でみれば影響をうける雇用は多くはないが、長期的な観点からすれば上場は企業の求心力を左右し、雇用の所在を決定づける。政府は必死になって証券取引所のテコ入れをおこなっている。金融行動監視機構はいくつもの改革を提言しており、そこには複数証券取引所上場を許容する方向での取り組みも含まれる。そこには制御できる状態を保ちながら上場したい起業家へ訴求する意図がある。政府はFCAの提言を強く支持する考えであるが株主の権利を弱体化するとして反対を呼びかける投資家もいる。また政府は年金ファンドを統合する事によって英国資本への投資される資本を増加させようとしている。これによりリスク性の高い投資が可能になる。他にも政府は同じ目的で通常のISAに加えて英国企業へ投資することで得られる優遇税制措置を導入しようとしている。この動向は歓迎すべきものだが、実施のスピードが遅すぎる。手遅れになってからすでに時間が経過しており、当該ビジネスでの英国の傑出も今や昔。現状は後進に甘んじている。

◇一言コメント:

半導体設計のArmは元々ロンドン証券取引所に上場していた企業だったわけで、それをソフトバンクが株式を買い集め上場を廃止しました。色々テコ入れして再度上場しようとなった今、その上場先が大西洋の向こう側でしたという展開です。英国の人もやっきになりますよね。今のSunak首相は元々はヘッジファンドの出身です。ここは自分の専門性を活かせる場面。色々働きかけをしてみたけど、結局だめでしたという感じです。

2005年から2006年の年明けにロンドンを旅行しました。新興ビジネス街の建設が進み、活気にあふれるロンドンの空気を感じたのを記憶しています。2024年、ロンドンは勢いを失い自分はおじさんになっているわけです。

▶️ひやあせ単語帳のご案内

日々取り上げた言葉をまとめたGoogle spreadsheetで公開しています。

自分が訳すときに、戸惑った単語を取り上げていますので目を通しておけば英字新聞を読む際につまづく可能性の高い単語にあらかじめ対策できます。

掲載される単語は週次で増えていきますので、ぜひご検討くださいませ。


この記事が参加している募集

英語がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?