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[令和4年度版]国内EC市場の全体像

こんにちは!Z Venture Capitalでコマース領域を担当している内丸です!

先日8月31日に経済産業省から「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」が発表されました。
国内のEC市場の全体像・動向を理解するには、とても有益な内容ですが126ページもある長い報告書なので、本noteではこの報告書のポイントを紹介していきます。
EC初心者の方でも理解できるように、Zホールディングスや海外の具体的なサービスを紹介しつつ説明したいと思います!


全体傾向

国内市場

まずは国内市場の全体像を見ていきたいと思います。
2022年(令和4年度)の国内B2C ECの市場規模は22.7兆円、前年比+10%でした。この10年間でも、コロナが直撃した2019年⇒2020年を除けば、毎年+10%前後の高い成長率で伸びてきています。

B2CのEC市場は物販系分野/ サービス系分野/ デジタル系分野の3つのカテゴリーから構成されています。下記は各カテゴリーの市場規模と前年比成長率です。

  • 物販系分野:14.0兆円/ 前年比+5%

  • サービス系分野:6.1兆円/ 前年比+32%

  • デジタル系分野:2.6兆円/ 前年比▲6%

旅行需要が回復したことにより2022年は特にサービス系分野が全体の成長を牽引しました。

物販系分野は、2020年は成長率が鈍化してきていますが、2013年から見ると市場規模は6兆円から14兆円(2022年)まで伸びており、EC市場の成長に一番貢献していることがわかります。EC化率も3.9%(2013年)から9.1%(2022年)まで伸びており、間もなく10%を超えると思われます。

デジタル系分野は、2013年から物販系分野と同程度の成長率で伸びていますが、規模は物販系分野と比較して1/5以下とまだまだ小さいです。
また、興味深いことに2022年の市場規模は2.6兆円と前年比▲6%で縮小しています。これは、デジタル系分野の市場の半分を占めるオンラインゲームが落ち込んだことが原因で、コロナが明けて支出の選択肢が増えたことが背景にあるのだと思います。


Zホールディングスのコマース事業

ECに馴染みにのない方は、物販系/ サービス系/ デジタル系と言われてもイメージが湧かない方もいると思いますので、弊社の親会社であるZホールディングスのコマース事業も紹介したいと思います。

数値面では、2022年度の国内EC取扱高は3.79兆円と前年比+6%の成長を遂げました。内訳を見ると、物販系が大半を占めるものの前年比の成長はやはりサービス系が牽引しており、これは国内市場の全体傾向と同様ですね。

  • 物販系分野:2.99兆円/ 前年比+1%

  • サービス系分野:0.61兆円/ 前年比+36%

  • デジタル系分野:0.18兆円/ 前年比+4%

各カテゴリーの具体的なサービス名・内容は下記となります。コマース事業だけでも結構の数がありますね。全部知っている人はZホールディングスマニアだと思います(笑)。

物販系分野

サービス系分野

  • 一休.com:高級なホテル・旅館の予約ができるOTA

  • Yahoo!トラベル:宿泊・航空券の予約ができるOTA

  • Yahoo!口コ:地域のレストラン予約・施設情報の総合サイト

  • 出前館:フードデリバリーサービス

  • LINE PLACE:写真・動画でお店が見つかる口コミ検索サービス

デジタル系分野


物販系分野の動向

ここからは国内市場の各カテゴリーの動向を見ていきたいと思います。
まずは国内B2C EC市場で最も大きな割合を占める物販系分野です。

物販系分野は、8つのカテゴリーに分解することができ、特に市場規模が大きいのは、
①食品・飲料、酒類:2.75兆円
②生活家電、AV 機器、PC・周辺機器等:2.55兆円
③書籍、映像・音楽ソフト:1.82兆円
⑤生活雑貨、家具、インテリア:2.35兆円
⑥衣類・服装雑貨等:2.55兆円
の5カテゴリーとなっています。

この中でも特に「①食品・飲料、酒類」はEC化率が4.2%と低く、大きなポテンシャルが眠っています。
海外では、直近IPO申請を出した米国のネットスーパーの「Instacart」、メキシコの「Cornershop」、ドイツの「Flink」、クイックコマースの「Gopuff」等、いずれも評価額が$1Bを超えるスタートアップが多数いる領域になります。Zホールディングスでは、「Yahoo!マート by ASKUL」が同領域でのプレイヤーになります。

上記以外でも、「④化粧品、医薬品」と「⑦自動車、自動二輪車、パーツ等」はEC化率が低い領域になります。
「④化粧品、医薬品」では、2018年にAmazonに買収されたオンライン薬局の「PillPack」、約$700Mを調達した「Alto Pharmacy」等、海外では複数の大きなサービスがあります。
「⑦自動車、自動二輪車、パーツ等」においても、オンライン中古車販売の「Carvana」「CarGurus」「Vroom」といった上場済みのサービスが複数あります。
この領域はEC化が今後特に進展していくかもしれません。
(EC化の難易度が高い領域と捉えることもできますが。。。)

また、数年前から「モバイルコマース」という言葉が普及するなど、スマホ経由の購買率は2020年に50%を超えてもなお成長率+10%以上で伸びています。
海外ではSMSマーケティングによってモバイルコマースを加速させようとしている「Attentive」が約$7Bのバリュエーションがついていたり、ZVCの支援先でもチャットコマースを提供する「ZEALS」はこの領域のプレイヤーとなります。


サービス系分野の動向

次は、サービス系分野の内訳を見ていきます。サービス系分野は7つのカテゴリーに分解できます。

サービス系分野の約50%を占める最も大きいカテゴリーは「①旅行サービス」です。2019年には3.90兆円の規模だったもののコロナ禍で大きな打撃を受けて2020年には半分以下まで落ち込み、2021年には1.40兆円まで減少しています。直近2022年の市場規模は2.35兆円と回復傾向にありますが、まだ2019年の60%程度の規模となっています。

同じくコロナ禍で落ち込んだ「②飲食サービス」と「③チケット販売」の市場は2022年には2019年と同水準まで回復しています。

一方で、コロナ禍で大きく成長しているのが、「⑥フードデリバリーサービス」となります。2020年からCAGR+51.6%で0.53兆円(2022年)の市場規模にまで成長しました。
日本でもコロナ禍をきっかけにして「UberEats」「出前館」「menu」「Wolt」等、複数のサービスが登場し、各社がしのぎを削っていたのは記憶に新しいと思います。コロナ禍が一旦の落ち着きを見せている中、今後も高い成長率で伸びていくのか注目しています。


デジタル系分野の動向

最後はデジタル系分野です。デジタル系分野は5つのカテゴリーから構成されています。

物販系分野やサービス系分野と異なりデジタル系分野は前年比で唯一市場規模が減少しています。
内訳を見てみるとデジタル系分野の約50%を占めている「④オンラインゲーム」が、前年比▲19%と大幅に落ち込んでいることが原因となっています。これは前述の通り、コロナが明けて支出の選択肢が増えたことが背景にあるのだと考えられます。

他の「①電子出版」「②有料音楽配信」「③有料動画配信」はいずれもCAGR+10%以上で伸びており、「④オンラインゲーム」を除けばデジタル系分野も成長している市場であることがわかります。


国内市場のポテンシャル

日本のEC化は今度どの程度進展するポテンシャルがあるのでしょうか?
最後に国内市場のポテンシャルを考えてみたいと思います。
経産省のレポートには、国別のEC化率も発表されており、EC化率の高い国Top 5は下記となります。

  • 中国:45%

  • イギリス:36%

  • 韓国:30%

  • インドネシア:28%

  • シンガポール:17%

5位のシンガポールでさえ、日本のEC化率の2倍近くの水準となっています。
なお、EC化率の世界平均は19.3%と高い水準ですが、これは世界のEC市場シェアの約50%を持つ中国に大きく引っ張られていることが原因です。

上記の水準を見るとまだまだ日本のEC市場のポテンシャルは大きいことがわかります。どこかでEC化率の天井が見えるかもしれませんが、少なくとも「今ではない」と思います。


おわりに

ここまで経産省のレポートをベースとして、国内のEC市場の全体像とポテンシャルを見てきました。ECがいかに可能性に満ち溢れた市場であるかを感じて頂ければ嬉しいです!

ECの領域で事業を行っている方、起業を考えている方と是非ともお話したいので、お気軽にご連絡下さい!

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