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人生初、デリヘルを呼んだ話①

世間では、「お盆」というなんとなく和んだ雰囲気のシーズンに、僕は高校時代のエリートな友人二人と恵比寿のチープな焼き鳥屋で美味しくも不味くもない酒をちびちびと飲んでいた。
「みんな、変わってねぇな」
と京大卒(現在は銀行マンらしい)の彼は呟く。
僕はうんうんと頷いたものの、内心
「なんで京大まで行って銀行員?」とかいろいろと別の考え事で忙しかった。

彼は高校時代、僕と同じテニス部に所属し、県では個人でベスト16とかその辺の実力で、もちろん僕たちの部内では一番テニスがうまかった。
小学生の頃からテニスをはじめたらしく、ショットの切れと手先の繊細なタッチには県外からも定評があった。
しかし、そんな彼は、総体の3か月前くらいにぱったり部活をやめた。
「京大に受かるために、勉強したい」と言って部室の私物を全部持って去っていった。
少しは引き留めたが、彼の性格上、他の人の意見に大きく耳を傾けるようなタイプではないし、理由も理由で誰も食い止めることはできなかった。


僕たちは居酒屋を出て、渋谷の雀荘に向かった。
時計は23時38分、改札を抜けるとハチ公前には服装の乱れた若者が、どっかのサラリーマンが地面に嘔吐してつくったもんじゃ焼きを避けた隅で道行く女に手あたり次第声をかける。
そんな中をかき分けながら入店した渋谷の雀荘は、たばこの煙のせいだけではないぼやぼやとした空気に包まれており、3時間座っているだけで声が枯れた。

京大の彼と東大理科Ⅱ類のふたりを麻雀ではこてんぱんにして少しすがすがしい気もありながら、どっと押し寄せてくる疲労感を纏って家に着いた頃、時計の針は7:00ぴったりを指していた。

昨晩、彼女と酒を飲んでからそのままの状態の散らかったテーブル。
チータラとホタルイカの干し物が組み合わさって、体調がいい時の性汁の香りに近い薫りが部屋中に充満していた。
疲れていたし、そのままベットにダイブしたいところだったが服の異常な臭さがその疲労感を超えて、僕をシャワーへと向かわせてくれた。

頭も回っていたかった僕は、とにかくマッサージと部屋の清掃員を自宅に派遣したかったが、そんなサービスを調べていたら「デリヘルジャパン」というキャッチーなバナーが目の前に飛んできて、これだと思った。

(次回に続く)

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