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熊野を越えたもう一つの鯖街道・柿の葉寿司

今回は吉野山の名物、柿の葉寿司について書こうと思う。吉野山をお花見がてら歩き、小腹が減った時に食べるもよし、お土産にも良し。一口サイズに一つ一つ葉っぱでくるまれて杉の箱におさまってる様はなんともかわいらしい。でもそもそも海のない奈良県になぜ魚のお寿司ができたのか、吉野の名物になったのかを探ってみようと思う。

なぜ海のない奈良に鯖のお寿司があるのだろう?

なぜ海がない奈良県に海の魚である鯖のお寿司があるのだろう。なぜ鯖なのだろう、そしてなぜ柿の葉でくるんだのだろう。これはおおよそ検討がつくかもしれないが、海がない件で育つと、海へのあこがれが強くなる。食に関しても、どこかのだれかが奈良から海のある三重県に行った時、それはそれは今まで食べたことのない美味しい魚を口にして、なんとか奈良でも海の魚料理を食べられないか…と試行錯誤をして持ち運んだ結果、または魚を売る商人がなんとか販路を広げようと海のない県に魚を運んだ…そして抗菌作用が強い比較的どこにでもある柿の葉でくるんで保存食の寿司にした。と、そこそこ容易に検討が付いたのだが、調べていると諸説ある柿の葉寿司の起源についてこんな記述を見つけた。

和歌山の猟師が年貢を納めるお金をかせぐためにはるばる奈良へ鯖を売りに来た

高い年貢代を稼ぐために、比較的安価な鯖を痛まないようにきつく塩でしめて奈良まで運んできたところ、夏祭りの最中だった奈良の人がとても喜んで以来奈良でお祝いの料理として定着したということだ。鯖を持ってきて定着した理由はわかったのだが、なぜ柿の葉にくるんだお寿司にしたのか?

熊野灘から吉野山は200キロ弱、2日間超の道のり

正確なルートはわからないが、熊野灘で捕れた鯖を吉野まで運ぶと200キロ弱の距離を、2~3日かけて運ぶ計算になる。当然冷蔵運搬技術もなかったことから、足の早い鯖を運ぶには塩漬けにするしかなかった。水揚げした鯖を浜ですぐ塩漬けにし、吉野に運ぶ。そうすると到着するころちょうどよい塩鯖ができあがっているということだ。しかし、そのままでは塩分が強くて食べられないので薄く切ってごはんの上に乗せてねかせることでごはんにもよいあんばいで塩がゆきわたり、さらに柿の産地ということもあり抗菌作用の強い柿の葉にくるんで食べたのだそうだ。

買ったばかりより、2日目がおいしいと言われた

取材で何件かのお店をまわって柿の葉寿司を購入する。元祖柿の葉寿司は鯖と聞いたが?おや、どこの店もさけがあるではないか。聞いてみるともともとは鯖だったが、いろどりや味のバリエーションを増やしたのだそう。そして取材と伝えるとお店の人がこぞって、「今すぐ食べますか?」と聞く。ちょっと山を散策しながらどこかでお弁当もかねてと伝えると、「柿の葉寿司は1日くらい寝かしたほうがおいしいですから」という。好みもあるが、お米と魚とが時間がたつにつれてうまくなじんで味が丸くなり深みが出るというのだ。ためしに買ったばかりと1日置いたものを食べてみると、なるほど、なるほど。

店によっても酢や塩の具合、お米などそれぞれが違う。小さいサイズは7つ入りの箱もあり、いくつか購入して自分好みを探してみるのも良いだろう。今の季節はまだ柿の葉の塩漬けを使っているが、柿の葉が出始める夏場はこのお寿司が旬を迎える。その頃はフレッシュな柿の葉で包むので、香りも変わってくるとのことだ。吉野についたら早めに柿の葉寿司を購入して、持ち歩きながら熟成させて食べてみるのもおすすめです。


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