原油価格は上がり続けるのか?

今回は昨年にnoteで記事をだした「2022年の原油価格暴騰か?」https://note.com/campnou1978/n/n9d76042a428a
のアップデートになります。
前回記事をアップした12月9日のWTI原油価格終値は70.59ドルでしたが、2月4日終値時点で91.95ドルまで上昇してきています。このまま原油価格は上がり続けるのでしょうか?原油価格を左右する5つの要因から考察していきたいと思います。

① OPECプラスの動向
② 米国の動向
 (a)バイデン政権の動向
 (b)米シェール企業の動向
③ ウクライナ情勢
④ イラン核合意復帰による経済制裁解除はあるのか
⑤ COVID-19

① OPECプラスの動向
先ずOPECプラスの動向ですが2月2日オンラインで閣僚級会議を開き現在の増産計画の維持を決定し、追加増産はしないことが決まりました。
又、リビアやカザフスタンでの情勢悪化、ナイジェリアやアンゴラではメンテナンス不足により原油が生産できず、増産計画の目標生産量でさえクリアできていない状況となっています。
この辺は時間が解決してくれると思いますが、OPECの月次レポートを読む限りサウジアラビア,UAEとロシア以外は生産余力はあまり残されていない状況であり、今後はサウジアラビア,UAEとロシアがどれぐらい増産するかにかかっている状況です。今後も増産計画が維持されるのか注意してみていきましょう。
またOPECプラス以外ではカナダ、米国、ブラジルが生産増できると予測されています。

OPEC月次レポート
https://www.opec.org/opec_web/en/publications/338.htm

② 米国の動向
バイデン政権
SDGsに前向きなバイデン政権ですが、前回の記事ではカナダからのパイプライン建設計画を停止しているとお伝えしましたが、今回は米国沖合海域での油田・ガス開発に関する記事がありましたのでご紹介します。
1953年以来米国内務省長官は、米国沖合海域における石油・ガスの5年計画を作成することが法律で義務付けられています。オフショア油田・ガスは米国エネルギーの30%占めているため非常に重要な計画です。
現行計画は7月1日に期限切れとなる予定ですが、バイデン政権が2022年から2027年の新たな5カ年計画を開始するためのプロセスをまだ開始していないことに懸念が高まっています。
今後プロセスが開始され計画の内容が明らかになってくると思いますが、消極的な内容だと今後長期的に供給が足りなくなる懸念がでてくると思われます

https://www.zerohedge.com/energy/offshore-us-oil-gas-critical-lowering-energy-prices

米国シェール企業

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こちらは2月4日にリツイートさせて頂いたのでフォロワーのなかには目を通した方もいると思いますがRieker Reika.H@doll__enさんのツイートになります。
このWSJの記事は非常に興味深く、そもそも米国シェール油田の埋蔵量は豊富に残っているわけではないという内容です。
「米シェール企業がパンデミック時と同じように生産量をほぼ横ばいに保てば、その多くは今後10~20年にわたり採算の取れる油田を掘り続けることができる。しかし、米最大の油田地帯パーミアン盆地におけるコロナ前の成長率と同様に、年率30%の増産に走ればわずか数年で優良な油田は枯渇する。」
先日のエクソンモービルのカンファレンスコールでも、パーミアンとガイアナ沖油田はとても付加価値の高い油田であり今後生産量が増えると述べていましたが、その採算ラインの低いパーミアンも2025年には生産が頭打ちになってしまうそうです。
https://jp.wsj.com/articles/oil-frackers-brace-for-end-of-the-u-s-shale-boom-11643936003

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上記はEIA原油在庫と米国原油RIG COUNTになります。
Oil Rig Countは現在米国で稼働する採掘装置数になります
Rig Countが増えれば増えるほど原油生産量も増えますので原油生産量を占う
先行指標になるわけですが、2016年以降で最も在庫がなく原油価格が高騰している状況でRIG COUNTがあまり増えないのは単に銀行等の株主から生産増を止められているからだと思っていましたが、もしWSJの記事が正しいのであれば増やしたくないのが本音なのかもしれません。
しかし、現在原油価格は90ドルを超えてきていますので採算価格が50~60ドルでも十分に採算がとれる水準になっていますので、原油価格が高い水準で推移し続ければRIG COUNTも増えてきそうです。
https://jp.wsj.com/articles/oil-frackers-brace-for-end-of-the-u-s-shale-boom-11643936003
https://www.nissan-sec.co.jp/market-research/supply_and_demand/oil-stock/

③ ウクライナ情勢
日に日に緊迫感が増しているのは事実ですが、実際に軍事衝突があるかは全く分かりません。
仮に起きてしまった場合は経済制裁が発動されますから原油価格や天然ガス価格はあがると考えられます。ここまで織り込んで上がってきていますがそれでもやはり上がるのではないでしょうか。
軍事衝突なしに解決した場合は、実需以外にウクライナ情勢による投機で上がってきた分がありますので原油価格は一旦下落するでしょう。しかし需給が改善しなければ再び上昇していくと思います。

④ イラン情勢

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イランは原油埋蔵量第4位、天然ガス埋蔵量第2位の国です。
現在経済制裁により原油取引が禁止されていますが、もし核合意に復帰し経済制裁が解除されれば原油供給量は増えることになりますので原油価格にとってはマイナス要因です。
また現時点で天然ガスはトルコやイラクに輸出する程度ですが、経済制裁が解除され外資が入ってくることができるようになれば天然ガスの生産量も増えることが予測されます。
https://www.globalnote.jp/post-3197.html

では交渉はどうなっているかと言うと
「米国は、イランが人質として拘束している4人の米国人を解放しない限り、イランと合意する可能性は低いと米国の核交渉責任者が日曜日にロイター通信に語った。 ロバート・マリー米イラン特使は、イランに拘束されている4人の問題は核交渉とは別のものであるという、米国が長年主張してきた立場を繰り返した。」

「イランのホセイン・アミール・アブドラヒアン外相は、EUのジョゼップ・ボレル外交部長との電話会談で、ウィーンでの核合意回復に向けた協議に一定の進展が見られたものの、これまでのところ期待に沿った結果にはなっていないと述べた。」

「ウィーンで核合意が成立した場合、米国のイラン制裁解除の確認に最大6カ月かかる可能性がある。」

米国もロシアがウクライナに侵攻した場合はロシアに対し経済制裁を発動しますから、イランとは合意したいという思惑もあるように思えますが、こちらも正直どうなるか分かりません。
ただ合意できた場合は、今年の原油供給量にカウントされていないイランからの原油供給が加わりますから需給は緩むと考えられます。実際にイランから輸出できるようになるのは少し時間がかかりそうですが。

https://csmtimes.com/us-envoy-iran-nuclear-agreement-unlikely-without-release-of-us-prisoners
https://iz.ru/1287342/2022-02-06/v-irane-nazvali-srok-protcessa-vozmozhnogo-sniatii-amerikanskikh-sanktcii?utm_source=twitter&utm_medium=social

⑤ COVID-19
現時点ではオミクロンも多くの地域で感染者減少に向かいつつあります。
しかしながらオミクロオンの強い感染力を維持しながら強毒化することも有り得ますので引き続き注意が必要です。

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まとめ
短期的にはウクライナ情勢とイラン情勢に左右される展開になると思います。この2つの問題は2月中に動きがあると言われていますので注視していきましょう。
そしてイランへの経済制裁が解除された場合には、イランがどの程度供給できるのかが短期的だけではなく中長期的にも重要になってきます。やはり技術的にも欧米の力がないと設備投資やメンテナンスが進みませんので。
イランとの合意がない場合かつ米シェール企業にそれほど生産余力がないのが事実であれば、最低でも2020年代後半まで伸び続けると予測されている原油需要に供給が追いつかないと考えるのが自然かもしれません。
今後も①~⑤の要因をチェックしていきましょう。

今回は以上になります、最後まで読んで頂きありがとうございました。Twitterのアカウントは雅@Diegooooalです、よかったらこちらもフォローしてください。



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