十人十色 (#紅茶のある風景)
ポトン。
彼はスプーンを握らない。
「なに見てるの?」
「なんだと思う?」
「ウェッジウッドに注がれたアールグレイ」
「いいや」
「じゃあ、久々にお目にかかった角砂糖」
「惜しい」
「えー、何?」
「時間だよ」
「時間?」
「ああ。純白が紅く染まる様子、角がとれて丸くなる様子、すべて時間が具現化したものだと思わないか?」
ポカン…
柑橘系の湯気がハテナの形になる。そしてちょっと寒くなったりして。
「思わないけど、ま、いっか。私は温かいうちに味と香りをいただくね」
ポワン、ポワワン、ポワワワン、
それぞれ楽しいティータイム。