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353 電波も電気もないランプの宿で非日常を過ごす~青森県・青荷温泉

旅のきっかけ

「旅色」さんから、旅色で紹介した旅行プランのどれかを実際に体験してみませんか、という企画に参加する機会を頂きました。旅色さんには旅色コンシェルジュと呼ばれるプロの旅行プランナーさんが何人かいらっしゃって、日々旅の提案をされており、おすすめプランをHPで紹介しています。
そんな数あるプランの中からわたしが選んだのはコチラ。

「雪見風呂」。いいじゃないですか。私は毎年1回、積雪地に赴いて雪見風呂を楽しむのをライフワークにしています。ちらちらと降る雪の中で露天風呂に入るなんて最高の贅沢です。
また、この青荷温泉はスマートフォンの電波が届かないほどの山深い場所にあるとのこと。情報社会の今、溢れすぎた情報の波身もまれながら日々を生きていて少々疲れ気味の今日この頃、山伏のように山奥にこもり俗世間から隔絶されるのもいいのではないか。青荷温泉にいくことを決めたのはそんな理由もあったからでした。

独特のアーケードが楽しい「中町こみせ通り」に立ち寄り

青荷温泉への旅の玄関口は弘南電鉄黒石線の終点、黒石駅。JR奥羽本線弘前駅からローカル線にゆられ36分で到着します。
青荷温泉へは黒石駅から弘南バスに乗り、終点からさらに送迎バスに乗って行かなければなりません。冬期はマイカーでは行けず、途中の道の駅で送迎バスに乗らないといけません。それを聞いただけでも青荷温泉がいかに到達困難な場所であるのかをうかがわせます。

バスの出発までまだ時間があったので黒石の街を散歩します。旅色さんも紹介していた「中町こみせ通り」。藩政時代からの古い伝統的建造物が今も遺ります。くす玉の巨大さに驚かされますね。

こみせ通りの特徴は、建物前にあるアーケード。雪深い黒石で商店街に来た人たちが買い物しやすいようにと作られた建造物です。

歴史的建造物と一体化して作られた木造のアーケードは他の街では見られない独特の光景です。

コーヒーショップは冬眠中のよう。

いよいよ山中の温泉宿・青荷温泉へ

再び黒石駅に戻って14:20のバスに乗ります。山奥に向かうバスですが座席はほぼ満席。全員青荷温泉に向かう宿泊客でした。

30分ほどバスに乗って着いた終点板留(いたどめ)からはこちらの送迎バスで青荷温泉に向かいます。送迎バスは道の駅を過ぎると道を間違えたのかと思うような山道に入っていきます。

かなり山奥に入り、スマートフォンの電波は全く届かなくなりました。こんな山の中に本当に温泉があるのか?不安になるほどです。

送迎バスに揺られて35分ほどで突然森が開かれた中に建物の一群が現れました。ここが黒石山中の一軒宿、青荷温泉です。

さて、すでに写真でお気づきのことと思いますが、雪がほとんどありません。今年はかなりの暖冬で12月上旬のこの時期、青森県の山の中でも御覧の通り雪がない状況でした。残念ながら雪見温泉は次の機会にお預けです。

世間から隔絶された山中で温泉を楽しむ

旅館に入るとランプが私たちを出迎えてくれました。この宿では居室をはじめ、共用スペースの電灯はすべてアルコールランプ。あたたかな火の灯が建物を照らします。

部屋はこのような感じ。8畳一間をアルコールランプが照らします。
寒いので部屋に灯油ストーブがあるのですが、しばらくつけているとのぼせるような暑さになったので切ってしまいました。宿の建物自体には電気はきている(トイレがウォシュレットでした)のですが、部屋にコンセントはありません。したがってスマートフォンの充電はできませんので注意が必要です。次の日の旅程を考えるとモバイルバッテリーは必須でしょう。電波が届かない場所なので機内モードにして一晩おいておくことにします。

館内には温泉が4箇所あります。本館の裏手にある滝見の湯は浴槽から滝が見える絶景の温泉。明るいうちに入りに行くことにします。

温泉内にも電灯はありません。ランプの灯りの中で湯を楽しみます。浴槽ひとつだけのシンプルな温泉ですが、体の芯から温まります。

そして窓の向こうには白糸のように流れ落ちる滝!これはなかなか絶景です。雪の中だったらもっと美しかったことでしょうが、これが見られただけでも来た甲斐があったと言えます。

滝見の湯から戻る途中にあるこちらの温泉は川を望む露天風呂。混浴ですがレディースタイムがあります。この日はお湯の温度がぬるいそうで…風邪をひくといけないので遠慮しました。

時刻は16時半。北国ではもう日の入りの時間で外は薄暗くなってきました。電気のない、長い夜を迎えようとしています。

スマートフォンはもちろんテレビもない中で、この長い時間をいかに過ごすか。本でも読もうかと持ってきてはいたものの、ランプの照度は本を読むには足りません。結局売店で酒をお酒を買い、いろいろなことを考え頭を整理していました。ふだんは整理した結果をスマートフォンにまとめているのですがそれもできず、いかに日常、デジタルデバイスに頼っていたかを思い知らされます。

18時をまわり、夕食の時間になりました。津軽名物イカメンチや鴨鍋、イワナ、キノコ類など派手ではありませんが、津軽の山の宿に来たことを感じさせてくれる料理。料理長が津軽弁で説明をされていました。

食事の後は、4つのお風呂のうち唯一本館内にある内風呂に入りました。ヒバの香りのする浴槽がここちよかったですが若干狭め。私が入ったあと学生らしい宿泊客が4人入っていきましたが、入れたかな…?

ランプの傘の影を眺めながら、おやすみなさい。

そのあとしばらく部屋で瞑想タイムを過ごしましたが、かなり早い時間に寝床に入りました。

おはようございます。午前五時です。本館前にある健六の湯に入りに来ました。24時間入れるのでこの時間でも電気が煌々とついています。さすがにこの時間は誰もいません。

こちらもランプの灯りだけを頼りに湯船に入ります。
こちらもヒバで作られた木のぬくもりを感じることができる浴槽。暖かいお湯に身を包まれると「あーあずましいねぇ」と知りもしない津軽弁を口に出してしまいます。

ランプに照らされた本館もなかなか趣深いですね。

朝餉を終え、ようやく明るくなった部屋の中で身支度を整えました。電気がない生活は不便を感じましたが、そのありがたみを肌で感じることができ貴重な体験ができたと思います。

実は部屋からも滝が見えることに今気づきました。バイバイ、今度は雪深いときにまた会いに来るよ。

昨日来た山道を下り広い道に出ると溜まっていたメールがじゃかじゃか届きました。また俗世間に戻ります。情報機器の便利さを知った反面、頼りすぎている自分にも気づきました。便利さから逃れることはなかなかできませんが、付き合い方を考えさせられるいい機会になったとも思います。
電波も届かず、ランプで一夜を過ごす山の宿、青荷温泉。これからいよいよ深い雪に覆われるシーズンを迎えます。雪見風呂を堪能しながら非日常を過ごしてみてはいかがでしょうか。





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