360 いま、日本の図書館が新しい⑥~豊橋市まちなか図書館
昨年の夏以来、久しぶりの日本の図書館が新しいシリーズ(?)です。
今回ご紹介するのは愛知県豊橋市にある「豊橋市まちなか図書館」。豊橋駅から徒歩5分という駅から近い場所に2021年11月27日にオープンしたばかりの新しい図書館です。
豊橋市では現在、駅前を中心に再開発が行われています。2005年に始まる再開発構想の段階からこの地に新たな図書館を作ろうと計画がなされていました。学術的な書物を集める中央図書館に対し、まちなか図書館は「世界を広げ、まちづくりに繋げる “知と交流の創造拠点"を基本コンセプトとしてカジュアルで親しみやすい本を集めて親しみやすい図書館とするとともに、イベントなどを行うことで「人が集まりコミュニケーションを取る場」として活用してもらうことを目指しています。どのような図書館にするかについてはワークショップなどで市民との間で議論が交わされており、市民が自分ごととして考えることを通じて愛着を持ってもらうことに努めました。
豊橋市まちなか図書館は再開発事業で誕生したemCAMPUS EASTの2、3階にあります。図書館のほかにも行政機関やワーキングスペース、屋上農園なども備えた複合施設です。
館内は5つのゾーンと8つのスペースに分かれています。各ゾーンに空間コンセプトを持たせて市民が目的にあった場所で快適に過ごせるよう多彩な空間を設け、それぞれのゾーンコンセプトと親和性の高いスペースを配置しています。
エントランスゾーンにはマガジンスペースを配置して手に取りやすい雑誌をラックに並べて親しみやすさを演出します。
アクティブゾーンにはキッズスペース。自分で本を撮ることができるよう低い書棚でそろえられています。
同じアクティブゾーンのパフォーマンススペースは普段は健康などの本が置かれていますが、可動式と書棚が配置されていてイベントスペースとしても使うことができます。その際にはイベントの内容に関連する書籍を並べるなどの工夫もしています。
む。リラクゼーションスペースには「僕らが旅に出る理由」のコーナーが。いま、日本の図書館が新しいシリーズで取り上げている図書館の多くが従来の日本十進分類表に基づく本の配置をしておらず、オリジナルで考えられたテーマ別の書棚に並べられていますが、こちらの図書館でも十進分類表にこだわらずゾーン・スペースごとに本の配置を行っています。
期間限定で特集を組んでテーマに沿った本を並べるコーナーもあります。秋のこの時期は「全国食巡り」。食欲の秋にちなんだもので雑誌からちょっとした専門書までが同じスペースに並べられています。
階段も兼ねたこのスペースは「中央ステップ」。普段はここに腰かけて自由に本を読んだり飲食をすることができます。また毎週セミナーやイベントをここで開いていてこのスペースを観客スペースとして活用しています。このようにイベントスペースが図書館の中央にオープンに存在するのも「人が集い交流する場」をコンセプトにしているからこそ生まれた発想です。
その中央ステップの前にはカフェもあります。ここで買った飲み物や軽食をとりながらお気に入りの本を読んだり、一緒に図書館に来た友人と会話をすることも可能です。あまり大声で話すのは考えものですが、この図書館は「人と人とのコミュニケーションの場」として活用してもらうことを目的としていますのでおしゃべりも自由です。
もちろん一人で静かに時間を過ごしたい人のスペースも用意されています。予約制のラウンジやブースなどで集中して本を読んだり調べ物をしたりすることが可能です。
長い時間をかけて市民の間で議論を重ねて作りあげた「豊橋市まちなか図書館」はユーザーの様々なニーズに応え、コミュニケーションを大切にする暖かさを感じる図書館でした。市民に愛される知の拠点としてこれからも進化していくことを期待したいと思います。
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