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財務長官かく語りき



2005.12.4  大阪某所
東亜聖堂騎士団 天空女神支部 公開勉強会
「セレマ魔術の第一歩」より





財務長官かく語りき:
セレマ的宇宙観と神々

Captain_T



緒言(東アジアのみなさんへ)

 水脈棒がある程度使えるようになったので、マイムマイムを歌いながらボランティアの一員として砂漠の国を目指す。でも、せっかく中東行くんだしぃ、と思うところあって当初の大志はどこへやら、私は一攫千金を狙うことにした。そして掘り当てたのが、21世紀の初頭 東亜聖堂騎士団が行った公開勉強会の音源という訳。
 そんな次第で、私は石油王になりそこねたのである。


0.イントロ~普通に、シンプルに

(1)無意識の抑圧を解いてやること

 こんにちは。今日の勉強会のテーマは「実践の第一歩」ということなんですけど、なんかみなさん緊張してません? 僕が担当させていただく最初のパートは実質おしゃべりですんで、チョットだらしないぐらいの楽な姿勢で、まずは気楽に聴いてもらえればOKです。まあ実質おしゃべりではありますが、理屈のための理屈ではなく、実践のためのイントロとしてしゃべりますんで、どうぞリラックスして普通に聴いてください。ここで言う「リラックスして」とか「普通に」は、私たちが普段無意識に抑え込んでしまっている部分をゆるゆるにくつろがせてやること、ぐらいにご理解ください。たとえば、パーティの席やなんかで西洋由来のマナーとしてよく言われる「政治・宗教・セックスの話題は避けろ」というのがありますが、これは余計な揉め事を避けるためであって、どうでもいいことだから放っておけということではありません。むしろ正反対。大切だからこそ、そのての話題になるとチョットしたことで過敏に反応してしまったり、第三者から見て些細な違いが決定的な亀裂となり、最悪の場合はテロや戦争にまで発展してしまいます。誇張でもなんでもなく、私たちはそういう時代、そういう世界に生きている。そんな訳でトラブル回避は重要だし、意識して自分の言動をコントロールできている間はまあとりあえず問題ないんでしょうけど、惰性というか何となく空気を読んでお約束に従ったり更にはお約束のハードルを上げるのが正義である、みたいな精神状態で日々をやり過ごすうち、そういった態度がすっかり固着というか定着してしまいがちなのは、これはなかなか厄介な問題です。自分の一部を「なかったこと」にしてしまったり、知らない間に虐待して瀕死の状態に押しとどめてしまうようなところが、僕を含め人間には少なからずあります。このへんチョットだけ意識しておいてください。
 あと、何でもなるべくシンプルに考えることをおススメします。しょーもないこといちいち気にせん方がいいですよ。たぶん(笑)



(2)LOHAS的魔術ライフとWHO憲章「健康」の定義改正論争 

 魔術はいろんな楽しみ方が可能です。たとえば、文学の一ジャンルとしても、一種の骨董趣味としても楽しめる。読みもしない古書を集めてニヤついてみるとか。もちろん、それだけじゃないですよ。
 今年、各種メディアで頻繁に目にするワードにLOHAS_ Lifestyle Of Health And Sustinability_があります。健康的で環境に余計な負荷をかけず、いい感じで長く続けていけるライフスタイル、ぐらいの意味で持続可能性がうんたらと、あれなんかセレマ魔術Thelemic Magickを説明するのにぴったりの言葉だと思います。実際にはLOHAS関連でヨガが紹介されることはあっても、魔術が紹介されてる例は見たことないですが。
 LOHAS的生活のポイントとなる「健康観」を、グローバルな視点から見てみましょう。グローバルてのがまたナンギなんですけどね、そこ突っ込みだすと紛糾しかねないので進めます。一つの基準として、WHO世界保健機関というのがありまして。WHO憲章の序文に示されている「健康」の定義は、
 『完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない』
という1946年以来の内容ですが、1999年、これに「霊性Spiritual」の要素を加えた上でそれらが「躍動的Dynamicに安定した状態」というふうに改正しましょう、という提案がなされチョットした議論があったそうです。結局採用には至ってないようですが、日本におけるLOHASブームに先行して、こういったテーマが魔術団体主催の勉強会じゃない場で堂々と議論されていたことは知っておいても良いでしょう。「身体body」「心mind」「霊性spiritual」の3つをセットで捉えたり、「霊性のあり方 Spirituality」について語るのは結構普通のことになっているのかも知れません。提案者が団のメンバーだったりしたら大笑いなんですけどね(笑)。




1.セレマ的宇宙観と神々

(1)なぜ宇宙観か:「そこそこ」自由に魔術を行うために

 ようやく本題。「理屈じゃなく実践のために」とか言っておきながら何でいきなり宇宙観か。単純に言えば、そこそこ自由に魔術を行えるようにです。
 所詮はアナロジーですが、今、僕はこの部屋で比較的自由に動くことができます。どれぐらいの音量でしゃべればやかましいと叱られることもなくみなさんに聞いていただけそうか、小走りに移動してもかまわないけどそこの壁の手前あたりで速度を落とさないとぶつかるぞとか、いちおう見当つきますから。主に視覚情報による空間認識ですね。真っ暗な部屋だとなかなかそうはいきませんが、毎晩寝ている部屋なら暗闇の中で目覚めても昼間と同じ、とはいかないにせよ、さほど困ることはありません。リアルタイムの視覚情報が入ってこない代わりに記憶というか、部屋の形状とかトイレまでのルートとかだいたい頭に入ってますから、どうってことなく動けてしまう。この、見えなくてもそこそこ動けてしまう状態、今の例で言えば、照明を点けなくても夜中にトイレへ行けるような状態を保証する空間認識、これを形成する上で必要な情報は日々の生活の中で得られ、自然に身に着くものです。でも、魔術の場合そうはいかない。人工的に何らかの情報をインプットしてやる必要が出てきます。そんな訳で「宇宙観」などという大仰なテーマをいきなり持ち出してしまいましたが、セレマの場合、ベーシックな部分がとてもシンプルにできています。


(2)啓示のステーレー:セレマ的宇宙地図と『法の書』

 セレマの宇宙観をもっともストレートに表しているのが「掲示のステーレー」と呼ばれているこれ、言ってみれば「セレマ式宇宙地図」です。実は、古代エジプトの神官を供養するために作られた銘碑でして、セレマ魔術の宇宙地図として造られたものではありません。それが、どういういきさつでセレマの宇宙地図と見做されるようになったのか。ここでチョットだけ、セレマの聖典と呼ばれる『法の書』の成り立ちにまつわるエピソードをご紹介したいと思います。その話は聞き飽きたよという方も、一瞬我慢してお付き合いください。
 『法の書』は、1904年、クロウリー夫妻が新婚旅行の帰りに立ち寄ったカイロのホテルで4月8日から10日にかけての3日間に「受信」したものです。著者はいちおうクロウリーなんですが、ご本人曰く「自分はメッセージを受け止め書き記しただけ」であると。しかも、自分が書き記した内容について、どうもよく分からなかったみたいです。メッセージの発信者はアイワスAiwassと名乗り、自分のことをホオル・パアル・クラアトHoor-parar-kraatの代理人Ministerであるとしています。ホオル・パアル・クラアトについてはあとで説明しますね。…さて、ここ、いきなり引いてしまう人が多い。この場にはいらっしゃらないでしょうけど。もったいない気はしますが、ンなアホな話に付き合ってられるかよというのは、ある意味とても健全でまっとうな反応です。一方、深く感じ入るあまりははあーってな感じで有難がってしまう方もおられるようで、じゃなくてホントに困った感じの人いるんで、僕的には大変心配していますというか、まあ少し落ち着いてくださいよという感じです。『法の書』をチラっとでもご覧になられたことはありますか? 国書版は有害であるみたいな変なこと言い出す気はないので安心してください。でも、何版であろうとそこに書いてあることを原理主義的に文字通りの事実として受け止めてしまったらマズイです。
 で、啓示のステーレーですが(笑)、これは『法の書』受信に先立ってクロウリー夫妻がカイロの博物館で目にしたものです。その時の展示番号が666だったという素晴らしい話がありますが、この話には、さらに若干の前フリがあります。実は、銘碑とのご対面に先立って、奥さんがせんもう状態というか錯乱したような感じで「ホルスが呼んでる」とか「怒ってる」といった内容の、何というか、うわごとのような言葉を口にされたと。既に妊婦さんだったこともあって、平常時よりも精神的に不安定だったとも言われています。ともかく、そういうことがあった後、博物館で666の銘碑と対面すると、そこには戴冠せるホルス、これもあとで説明したいと思います、が描かれていたと。以上がだいたいのいきさつです。
 『法の書』受信後に話を戻します。実は、『法の書』の主な登場神物、神様方同士の関係は「啓示のステーレー」に描かれていた。ということにクロウリーは気づき、これを手掛かりに『法の書』を読み解いていくことで、とりあえずは言葉で説明可能な宇宙観を築くとともに、宇宙観に沿った儀式Ritualをじゃんじゃん創っていった訳です。あと、それ以前に在籍していた黄金の夜明け団で学んだスキル、中でも「魔術的カバラ」と「儀式」の実践経験は、やはり大きかったんだと思います。いきなり『法の書』を手渡され「これに沿って儀式、頼んだよ」とか言われても普通はどうしようもない。クロウリーは、この作業をやり遂げた、とは言えないにせよライフワークとしてやり続けました。これが、現在のセレマ魔術のベースです。ちなみに、「セレマ魔術Thelemic Magick」の「セレマThelema」ですが、これは『法の書』に記された『法の言葉はセレマなり』に由来し、ギリシャ語で「意志」を指す単語です。
 『法の書』には、全体の内容を端的表しているとされる2本のフレーズがあります。

Do what thou wilt shall be the whole of the law.
 汝の意志することを行え、それが法の全てとなろう。

Love is the law, love under will.
 愛は法なり、意志の下の愛こそが。

 今のは公式訳ですが、他にもいろんな訳があって細かい部分がそれぞれ微妙に違っていたりしますが、とりあえずは全然気にしなくてOKです。あ、でも、出だしのHad! は「持った!」ではありません。
 ところで「法の言葉」あるいは『法の書』の「法」とは何ぞや? という話ですが、英語のlawすなわちLaw-SchoolとかLaw of gravityのlawですから、「生」じゃなくて「法律」か「法則」のどちらかぽい。ですが、先ほどの2本のフレーズ及びセレマという言葉の意味からすると、いわゆる宗教上の「戒律」としては何だか中途半端ですよね。守れてるんだか守れてないんだか、外からは判断できない。そんなもので信者の行動を縛ろうとしても無理がある。「法則」と呼ぶにも抽象的に過ぎる。「たぶん、こんな感じになりそうな気がするんですが」なんて法則、使いものにならないでしょう。でも、それがセレマの法に従って生きるセレマイトにとっての指針です。「指針」と理解すれば実にシンプルなもんです。



(3)セレマ式宇宙地図の使い方

 時制を21世紀現在に戻します。現在「啓示のステーレー」は大英博物館にちゃうわ。わちゃー、やってもた(笑)、どこでしたっけ? そうですね、遠いところにあります。カイロ、ハバナ、タンジール、それからえーとまあ、いずれにせよ実物は難しいため、セレマイトたちはその画像の印刷物や立体のレプリカを使っています。コレクターズアイテムではなく実用品なので、複製だから駄目だとか無価値であるといった性格のものじゃない。セレマイトにとって「啓示のステーレー」は、旅行者にとっての地図と同様とても大切なものです。
 東亜聖堂騎士団のメンバーを含むセレマイトたちがこれを実際にどう使うかというと、まず、儀式を行う際、祭壇上に置きます。ですから、祭壇とは、第一義的には地図を置く台です。これを、ボレスキンの方角に向かって据える。ボレスキンは、クロウリーが若い頃にアブラメリンなどの魔術の実験をしていたイギリスはネス湖のほとりにあった別荘ですが、そっちの方向を調べて厳密に祭壇を設定する。何てことはやりません。ボレスキンの方角とは、「魔術的東」を指す一種の符丁です。「魔術的東」とはどんな東かというと、そっちを東ということにしとけば万事都合よく運ぶ東のことです(笑)。
 最も都合のいい東に祭壇を設定し、その上に宇宙地図を置いて、あらぬことを口走りながら踊る、時々ヘンなポーズを決める。セレマ魔術の儀式を簡単かつ客観的に描写するとすれば、そんな感じでしょうか。



(4)セレマ式宇宙地図の見方

 「啓示のステーレー」に描かれている絵を見ていきましょう。下の方に書かれてる象形文字をすらすら読めるという人は少ないと思います。もちろん、僕も読めません。


a. ヌイトとハディート~ちょっとしたコツ


 上から全体をぐるっと覆うようなポーズで描かれている、青い女性らしい方、こちらが天空の女神Nuit, Sky Goddess Nu です。通常、エジプト神話においてヌイトとペアで語られる神格は大地の神ゲブですが、ここには描かれていません。セレマ的宇宙地においてヌイトとセットで説明されるのはこちら、羽の生えた球体として描かれるハディートHaditです。まずは、この2つの神格から。
 クロウリーは、『法の書』に対して自ら注釈を施した著作Law is for allの中で、「ヌイトはmatterであり、ハディートはmotionである」としています。後者は日本語の「動き」とほぼ同義でしょうけど、matterは英和辞典を見ると「事柄」とか「困りごと」とかあって僕的にはニュアンスの掴みにくい単語です。でも、何となくハディートの「動」に対して、ヌイトは「静」そして漠と広い感じはお分かりいただけるかと。さらに同書の中でクロウリーは「物理学用語で言うならプロトンとエレクトロンである」とも書いていて、これも何だかアレですが、何となく真ん中がハディートでその周囲がヌイトといったイメージでしょうか。そのほかにもいろんな言い替えがあって、無限大/無限小、客観/主観、「円とその中の点」といったグラフィックな表現もあります。どれが正しくてどれが間違いという性格のものではなく、全部ひっくるめてまるっと、まずはアバウトにイメージしていただければOKかと思います。白黒はっきりしないと気が済まない方にとっては、さぞ気色悪いことでしょう。すんませんね。
 こういった考え方を第三者目線で外から眺めつつ、知識をガンガン貯め込んでいくことは充分可能だけど、それをどうやって「実践」に活かしたらいいのか。単純なことです。ハディートを自分の中心点としてイメージしてください。
 軽く目を閉じてやってみましょう。自分の中の真ん中の点、イメージできましたか? 位置的にどのへんに設定すればいいのか、そのへんが気になって集中できない方はいらっしゃいませんか? その場合は、とりあえず自分の大事なところを選んでください。おお、やっぱりそこですか。
 今度は、そのままゆっくり上を向いてください。はい。では、ゆっくりそーっと目を開けてください。今見えている像のずーっとずーっと遥か向こうがヌイト。イメージは思い切ってぶっ飛ばすほど効果的です。

b. ラア・ホオル・クイトと神官~セレマ的アティチュード

 次は、ここに座ってらっしゃる鷹の頭をした緑色の方、こちらが戴冠せるホルスことラア・ホオル・クイト Ra-Hoor-Khuit。ヌイトとハディートのご子息とのことですが、通常のエジプト神話ではホルスはオシリスとイシスの息子とされています。先ほどのヌイトの相手がゲブじゃないところもそうですが、何というか、アップデート版なんですよ。さっぱり分からなくても大丈夫ノープロブレムです。最初から分かるんならそもそもセレマ魔術なんか必要ないじゃないですか(笑)。
 そして、ラア・ホオル・クイトと向かい合っているこの人、アンク・アフ・ナ・コンス Ankh-af-na-khonsuという神官です。神に謁見する時の神官の態度としては何だか不遜な感じもしますが、クロウリーはそこに魔術師の理想的な姿を見たようで、これがセレマ魔術において推奨される態度 atitude です。単純に言うと慇懃無礼の反対をやればいい。無意味な媚びへつらいも盲目的隷属も、相手に対する基本的で全面的なリスペクト=礼節を欠く態度も全部ダメ、好ましくない。このあたりが「セレマは日本人に向かない」などと言われる一因だったりしますが、状況は変わりました。そう思いたい。あなたが「向いてる人」であることを祈ります。



(5)トートタロットより~セレマ式宇宙地図の補足資料

 『法の書』にも、セレマ魔術の儀式にも頻繁に登場するにも関わらず、「啓示のステーレー」に描かれていないキャストについて、トートタロットを見ながら。


a. ⅩⅩ「永劫」とホオル・パアル・クラアト


 永劫Aeonは、大雑把に言って「時代」+「世界」。この1枚に、「啓示のステーレー」のコンテンツがほぼ網羅されている。世界一分かりやすセレマ魔術の入門書と呼び声高い"Abrahadabra"の著者にしてOTOのメンバーでもあるロドニー・オルフィエス氏は、「啓示のステーレー」の代替品として使える、と書いています。これを置いた瞬間、ビジネスホテルの貧相なテーブルは祭壇となり、殺風景な部屋はテンプルに早変わり。急な出張にも超便利という訳です。神官はいませんが、自分がその役をやればOK。
 神官アンク・アフ・ナ・コンスが描かれていない一方、「啓示のステーレー」にない要素が加わっています。この、指を銜えたつぶらな瞳のお子様こそがホオル・パアル・クラアト。クロウリーに『法の書』を託したアイワスをして、自分はホオル・パアル・クラアトの代理人であると言わしめた、いわばメッセージの出所。
 ホオル・パアル・クラアトは、ハルポクラテスの名でも知られるホルスの双子の兄弟、または幼児としてのホルスです。ラア・ホオル・クイトが立派に成長し戴冠したホルス、即ちホルスの力の顕在面を象徴しているのに対して、こちらは同じ力の潜在状態を表します。従って沈黙の神、という訳ですね。実践し、そして沈黙するのは、セレマに限らず魔術における基本的な態度かと思いますが、あまり好きな呼び方じゃないですけど「防御のサイン」とも呼ばれるホオル・パアル・クラアトのサイン、これ、そーゆー消極的なイメージではなく、もっと積極的に、はっきりと「力」です。また、沈黙には「忍耐」という含みがある。そのあたりを敷衍して、「苦しい時そばにいてくれる神様」という説明もあります。


b. ⅩⅠ「力」とセリオン&ババロン


 『法の書』やセレマ魔術の儀式にはもちろん、下世話なゴシップにも頻繁に登場するお二人。それがセリオンとババロン(※国書刊行会の出版物では「ベイバロン」と表記)です。狭い意味では、セリオン Thelion とはクロウリーその人、ババロン Babalon は緋色の女と呼ばれるクロウリーの魔術上のパートナー兼愛人(達)ということになりますが、そんな具合に「史実に基づいて」ガチガチに捉えてしまうと実践上不都合が出てきます。ここは他のキャスト同様「象徴」として捉えてください。
 いっぱい顔のあるライオンみたいなのが、黙示録の獣を指すセリオン。本能、肉体的な強さやなんかとして表れる人間の能動的な能力を象徴します。
 セリオンに跨っている全裸の女性がババロン。セレマの聖母的存在で「処女の売春婦」などという誠に矛盾した呼び方もありますが、どういう状態なんでしょうか(笑)。イメージしにくいところです。セレマ魔術には、こういったあり得ない矛盾した表現がしばしば出てきます。ババロンが象徴するのは、精神的な純粋さと、豊かな受容力です。惑わされたらダメ。意味のない禁欲は更にダメ。

 以上、セレマ宇宙のベーシックな構造と主要キャストを駆け足で紹介しました。今日は触れませんでしたが、黄金の夜明け系と同じように天使の名前が出てくる儀式もありますし、また、宇宙の構造を細かく見ていったり『法の書』を解読していく上で、生命の木やゲマトリアといったいわゆる魔術的カバラの技法が使われたりしています。今日あえてそこに触れなかったのは、セレマ魔術の実践を、それらの知識をがっつり詰め込んだ上で初めてアプローチ可能になるような、何や辛気くさいもんと思ってほしくなかったからです。このあと僕が端折った分までまとめて出てきたらごめんなさいなんですが。あと、意志の力で何かを実現する、と言えばまあそうなんでしょうけど、自己啓発セミナー系のペテンとか、魔術やってると見抜けるようになったり…お前らの方がよっぽど怪しいて? あいすみませんです。それとこれは真面目な話なんですが、神経とか精神的な疾患を魔術で…というのは成功例をしらないこともないですが、おススメできませんのでwillじゃなくてdoctorの方の医師にご相談いただいた方がよろしいかと。
 という訳で、予備知識としてはこれぐらいで必要充分だろう、と思われる情報を過不足なく網羅したつもりです。ありがとうございました。(拍手)




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