『「介護ネットワークビジネス」とは何か? その六』(伊永紳一郎)

「ネズミと同じ」


「いや、そもそもあなたは、ネットワークビジネスをやること自体を、悪だと決めつけて話を進めているのではないですか?
いかにそれが社会問題になっていて、世間から厳しい目で見られているとしても、法の範囲で行われていることまでひとまとめにして悪と決めつけるのは、言い過ぎではないですか?」

僕のこれまでの意見に対して、そのような異議は当然あるだろうと思う。

そして僕も、そのように思っていた。「自己責任」そう言って、そのビジネスに対して無関心を装った。

B君の問題が明らかになった時でさえ、「ネットワークビジネスなんて、ネズミ講でしょ?」というAさんの物言いに、僕は持ち前の天邪鬼さと、介護職特有の決めつけに対する反感から、簡単に同意できなかった。

そのビジネスを嫌悪しているにもかかわらず。

そこで、ネットワークビジネスとは何か、自分なりに調べてみる必要に迫られた。

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D講師が薦めてくれたネットワークビジネス宣伝本「WIN WIN WIN~合法ネットワークビジネスが超高齢化社会を救う」は、そんなAさんや僕の疑念を見透かしたように「それって、ネズミ講みたい?!と言われたことがあるのではないでしょうか?」と問いかけている。

そこにはまず、こう書いてある。

「ネズミ講とネットワークビジネスの一番はっきりした違いは、商品の売買の有無です」

ネズミ講には商品がなく、お金だけがある。そのお金を増やすことだけが目的である。

ネットワークビジネスでは、販売する商品が存在している。

その商品を気に入って買って使うだけでなく、それを売ったり、勧誘して会員になってもらってその人にも活動してもらったりすれば、いわば宣伝費のような形で、報酬を得ることができる。

もうひとつの違いは、ネズミ講の連鎖(報酬が発生する親子関係の範囲)が無限であるのに対して、ネットワークビジネスは有限であることだ。

つまり、ネズミ講は、そのファミリーツリーに早く参加すればするほど有利に金儲けができる。

しかし、連鎖が無限であるというのは、参加者が無限に増加するということを前提にした話だ。

実際には、そのファミリーツリー自体が、すぐに世界の総人口を越えてしまう計算が成り立つのだから、参加が遅ければ損しかしない。

簡単にイメージすると、参加者が持ち寄ったお金を、参加順が早いか遅いかで、配分を変えて再分配するだけだ。

しかも、参加が遅いほど、新たな参加者を探すのが困難になり(なにせ、一人の参加者が5人を勧誘すると仮定してネズミ算をすると、12代目には日本の人口の3倍になってしまうのだから)、投資を回収できるチャンスがなくなり、対してファミリーツリーの上位に位置する者は、労することなく金儲けのチャンスがさらに増えるのも待つだけだ。

ネズミ講は、始めた人が一番儲かる仕組みになる。

儲かる人がいるということは、損をする人が必ずいるという前提があってのことだ。

儲かる可能性がないのに、言葉巧みに誰かを誘うことは詐欺であり、ネズミ講は無限連鎖防止法で違法とされている。

ネットワークビジネスは、そうではない。

商品の魅力が基本にあって、報酬が発生する親子関係の範囲が決められているので、だれがいつ参加しても、チャンスは平等にある。

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このようなことは、少し調べれば簡単に知ることができる。

しかし、そこから先は、ビジネスの仕組みや法律の概要を知るだけでは、なかなか実感が掴めない。

ではなぜ、ネットワークビジネスは、こんなに社会問題になり、逮捕者がでて、世間からネズミ講呼ばわりされるのだろうか。

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次のことは、僕が、介護アロマセラピーに関わっている時に実際に見聞きしたことだ。

「これから介護の世界でネットワークビジネスが大きくなっていくのは間違いない。
けれど、まだ多くの人はその可能性に気がついていない。
あなたもそう思うでしょ?あなたのことを信用しているので、お誘いするの。
早ければ早いほど、チャンスは大きいよ」

僕はそれを実際に見聞きしただけでなく、同様の勧誘を受けたという話を、少なくとも二人の知り合いから聞いた。

介護ネットワークビジネスに熱心な複数の人が、このような勧誘をさらりとおこなっていたことになる。

「早ければ早いほどチャンスは大きい」という勧誘は、間違った情報というだけでなく、違法である。

こんなことは、とるに足らないことかもしれない。

だが、この何気ない勧誘の言葉が示しているのは、次のことである。

このような勧誘を行った人にとって、
「ネットワークビジネスは、ほぼネズミ講と同じである」

そこには、商品の魅力ではなく、チャンスの大きさだけが、価値とされている。

チャンスとは、言わずもがな、金もうけだ。

それを、ビジネスのシステムによる、あなたへの経済的援助、ともっともらしく言っているだけだ。

もしも、そのビジネスのネットワークで、僕の子供世代の人が、誠実なビジネスマンだとしても、その人が勧誘しビジネスを始めた人(僕の孫世代)が、あのような「ネズミ講マインド」で活動し成果を上げたとしたら、僕は「ネズミ講マインド」から報酬を受け取ることになる。

その見ず知らずの人の存在は、僕の想像の外だ。

これをもってまだ、自分のビジネスはネズミ講ではないと、言い切れるのだろうか。

しかも、こんなことは、僕の目の前でさえ、二度起きていたのだ。見知らぬ孫世代どころか、自分が会ったことのある人物が、言っていたことだ。

ネットワークビジネスは、ネズミ講ではない。

しかしそれを、ネズミ講の代替として利用しようとするマインドにどっぷり浸かっているのならば、天邪鬼で決めつけに反感がある僕でさえ、「介護ネットワークビジネスは、限りなくネズミ講に近い」と言わざるを得ない。

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GhostS

『「介護ネットワークビジネス」とは何か?』(伊永紳一郎)

伊永紳一郎さんによる、「介護ネットワークビジネス」に対する論考です。
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