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それって戦略的フリーターですか?

今年も残すところ10日あまり、2021年がもうそこまで来ている。

大学キャリアセンターではこの時期3年生と4年生の就職活動が重なり、相談も3年と4年がまざるので「あれ今何年生の相談なのかな」と間違えそうになることも。そんな中、今回は4年生の就活について書こうと思う。

WEBや対面での相談と並行して、進路の報告をしていない4年生に状況確認の連絡をしている。するとこんな声を耳にする。

「今年は就職せずに1年くらいアルバイトしながら来年探します」

その理由はさまざまだ。

【パターン1】志望業界の急激な業績悪化によるもの

3年生までは企業研究やインターンシップに順調に参加していたが、今回のニューノーマルで淘汰された業界を志望していたため、採用数の減少によって自分の思い通りの就活ができなかった。

「だから1年ずらして来年再チャレンジしたいんです」

それまで頑張ってきた自分の志望を貫きたい。それはよく分かるのだが実際問題、1年ずらしたとしても状況は好転するどころかむしろ難しくなる。理由は1、2年でこの現状が元通りもしくは採用増につながる可能性が極めて低い。さらに少ない採用枠をめぐって新4年生と取り合うことになる。卒業後、即戦力になるための自分磨きをするなど対策が必要となる。

【パターン2】就活していなかったので今のアルバイトを続ける

就活の煩わしさ、履歴書作成や説明会参加など面倒なステップを踏まないですむ。しかしその一時期の煩わしさを回避し続けた結果、大きなチャンスを主に2つ逃すことになる。

①給与・福利厚生

言わずもがな時間給で働くフリーターに比べ、正社員は基本給に加え賞与(ボーナス)が支払われる会社がほとんど。(アルバイトで少額の賞与が出る会社も一部ある)それを年間通すと差は歴然だ。正社員は人事や管理などマネージメント、時に責任の重い業務を担う分、賞与や取得可能な有給休暇日数等にも反映されている。貯蓄や投資に回せるお金の余裕が少しでもある方が、仕事とは別の活動を始めたくなった時に動きやすくなるのは言うまでもない。

②正社員になれるチャンス

1年フリーターしてから正社員目指せばいいやと。1年後も学生時代に見ていた優良企業を同じようにエントリーできると考えている学生もいるが、現実はそう甘くはない。日本において新卒一括採用の企業は未だ多く、新卒だからこそわざわざ大学に出向いて企業説明会を開催したり、インターンシップを実施したり学生の就活を後押ししてくれるのだ。大学に寄せられる既卒求人の少なさに卒業生はがっかりするのだが、それが日本の労働市場、企業が求める新卒と既卒の差をリアルに表している。既卒の就職率を上げても大学の評価にはつながらないため、大学側も積極的に既卒の求人を集めたりはしない(一部では卒業生にも手厚く就職支援する大学もある)

戦略的フリーター以外、粘って正社員を目指そう

例えば、プログラマーとしてゆくゆくは独立して自分で仕事を取りたい。志望度の高かった大手IT会社では新卒でもスペックの高さを要求され入れなかった。だからアルバイトから始めてプログラマーのアシストをし一定期間経験を積んでから大手に移るなど、野望を持ってアルバイト(フリーター)を選ぶことがある。これは大いに賛成だ。目的達成のファーストステップとして主体的、戦略的にフリーターを選んでいる。既卒やキャリア(実務経験)採用を積極的に行っている業界に有効な手段と言える。

個人的な意見だが、学生のうちに卒業後の将来を明確に描けなくていい。ただ卒業するまでの残り数か月でできることはまだたくさんある。思いつく限りやれることはやりきって「なんか最後の最後に、あきらめんと粘って活動してよかったな」と笑顔で卒業してほしいと思う。そんな先輩たちを過去に何十人も見てきたから。そして意外とそういう先輩の方が会社で大躍進して後輩の教育をしたり、学内企業説明会で熱心に学生に説明してくれている。学生時代に出会った頃のグダグダ感はもう跡形もない(笑)置かれた環境でどう花開くのかは誰にも分からないし、結局は自分次第だと思う。

「それって戦略的フリーターなの?もう少し就活粘ってみない?」

今日もわたしは4年生にそう問いかける。




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