バーチャル蠱毒 TOP3の人気の秘密を考える ~もなかNo.7と林檎No.5~


バーチャル蠱毒

この記事に辿り着いた方は恐らく既にバーチャル蠱毒が何なのかはご存知だろう。そう、「最強バーチャルタレントオーディション」の俗称だ。

https://avatar2-0.com/kiwami/

とりあえずまだ知らないという方の為に説明すると、企業が用意したVtuberデビューという椅子を獲得する為に、同じ見た目、同じ設定をした12人が戦い、最後に残った1人だけがデビューできるというオーディションシステムだ。詳細は改めて調べて欲しい。

これがどうにも蠱毒として例えられているのだ。蠱毒というのは同じ容器の中に大量の虫を飼って共食いさせていき、最後に残った1匹を呪術に利用するという呪術の事だ。この同じキャラクター同士が戦う事を共食いに例えてそう呼ばれているのである。


おそらくバーチャル蠱毒についてご存知の方はまた、「九条林檎No.5」をご存知だろう。

「九条林檎」というキャラクターの5番目の候補者、クローンだ。彼女のキャラクターの強烈さについてはまた後述するが、彼女が話題になる事でまたバーチャル蠱毒の知名度も広まっただろう。

このようにこのオーディションでは、候補者は1から12まででナンバー管理されている。キャラクターが5種類あるので、全部で60人程度が争っているのである。

その60人のうちTOP3(11/23正午現在)の地位を築いている配信者は、どうして人気なのか気になった。実際に配信を見に行ってみて、少し思った分析を書いてみる事にした。


※蠱毒騒動を聞いてにわかの書いた文章という事はご理解ください


3位 雨ヶ崎 笑虹 No.6

まず配信を訪れてみて、画面に映っている画像が印象的だ。

この配信サイトでは、所謂サムネイルとしてステージ上に掲げられている画像が1枚存在する。そこに他の配信者の殆どはキャラクターの絵を載せているのだが、彼女のサムネイルは「配信の予定」及び「お礼ランキング」なのだ。

配信の予定というのは、何時に何をしますという話題の予告である。

もう一つ、お礼ランキングとは「ギフトをくれたランキング上位者の為に何かしてあげます」という掲示だ。

つまり配信を最後まで見たくなってしまったり、ギフトをあげたくなってしまう仕組みが出来ているのだ。

また彼女のTwitterにはファンを応援してくれるボイスがある。そういう所で人は彼女に惹かれていくのである。総合3位・キャラ内1位という順位を見れば分かる事だが、これが彼女において成功している。むしろこれから言及する2人は規格外だ。彼女はかなり優秀なのだ。


2位 九条林檎 No.5

皆様ご存知、このゲームのダークホースである。

12人のクローンがたった1人生まれる為に争うというこの設定を見た時「アニメや漫画の世界みたい」と誰もが思っただろう。このイベントにはそれだけのエンタメ性がある。

そしてそういう設定のアニメに必ず存在するのが、「ゲームを俯瞰して眺めており、ゲームの運営者を皮肉する存在」というトリッキーキャラである。彼女はまさにこれだ。

基本的にバトルロイヤル形式の作品には、「なんとかして状況を打破したい主人公タイプ」や「怯え怖がるヒロインタイプ」、「最初に見せしめに殺される噛ませ犬」などある程度の典型キャラ文法が存在する。これはアニメや漫画などを幾つも幾つも消費してきたオタクにとっては既知の事実、あるあるなのだ。

そしてこのトリッキーキャラもかなりの確率で存在し、しかもゲームを盛り上げてくれる存在だ。その存在は視聴者にとって爽快で時に畏怖すべきものであり、その心理効果からか結構人気キャラになりやすい。

基本的にオーディションに参加している以上勝ちたい、消えたくないのだ。だから殆どは「ファンに媚びる」「なんとかしてファンを獲得する」という手段に出る。出ている。自分が消えない為に。

ここで九条林檎No.5が「違う」のは、目的が自身が生き残る事ではないという事である。

そもそも彼女はこのバーチャル蠱毒が話題になるまで、むしろランキング下位の不人気側の存在だった。恐らく彼女は心のどこかで自分が勝利する可能性を諦めていたに違いない。

だから彼女は行動に出た。自分が生き残る為ではなく、この地獄を楽しむために。傍観者を当事者に突き落とし、共に地獄を味わわせる為に。



エモい。


そうだ、これがバトルロイヤルに必要な存在なのだ。このオーディションをバーチャル蠱毒と例える人間にとって、まさにこの存在こそが待望したものだった。そして媚びる事を中心にした多くの存在との差別化にも成功した。

彼女は媚びに成功してはいない。でもゲームの主要登場人物になる事には成功してしまった。

あと「九条林檎」というキャラクターの人外という設定(九条林檎は吸血鬼のハーフだ)がこれにハマっている。人類を俯瞰している、人間以外の存在という設定がドンピシャにこの態度にハマっているのだ。配信という即興であそこまで人外ムーブできるのは、もう絶対に頭がいい。

そして彼女は不人気キャラから一晩で総合2位まで上り詰めた。しかし彼女は配信でこう言った(要約)。

「今人気でも、一週間後何人残ってるだろうな?」

「いくら数字を稼ごうと、最終的に選ばれるとは限らん。」

……そう、このオーディションには各審査過程に「特別審査賞」で通過できるというシステムが存在する。しかも最終審査は運営との面接。つまりランキングなどの数字を叩き出しても、運営が選ばなければ勝てない。全ては運営次第なのだ。

彼女はそれを知っている。知っているから意味のない数字の獲得には舞い上がらない。

彼女に関しては既に多くのコラムやまとめが存在している。さらに詳しくはそちらを参照して頂きたい。


1位 巻乃もなか No.7

おかしいと思わないだろうか?

これだけ九条林檎No.5がバズって人気になって話題性があって、それでなお頂点に君臨し続けるこの存在は一体なんだと思わないだろうか。

彼女の配信を見に行った感想を一言で纏めよう。「アイドルとして完成されている」のだ。

まず圧倒的に声が可愛い。プロの声優さんか何かだろうか、いやプロダクションに所属してたらこのオーディション出られないんだっけ。え?素人なの?と思う。典型的な萌え声声優だ。

ついでに言えばマイクの音質が良い。他の配信と比べてボソボソしてないしクリアなのだ。そこ?と思うかもしれないが、絶対良い機材を使っていると私は踏んだ。彼女はウィスパーボイス系なので、粗悪な機材を使うと必ず声はガサガサしてしまうはずなのだ。それがこんなに綺麗に聞こえるという事は、良い機材を使っているかBGMで誤魔化す事に成功しているかどちらかだ。

また彼女、結構配信の頻度が高い。たびたび配信ページを覗くと、いつものように配信をしているのだ。これも人気の秘訣の一つだろう。

そしてそのキャラクターもゆるふわで可愛く純粋。蠱毒の話題が出た時に、「こどく?こどくって、なあに……?呪術なの?こわいねえ……」みたいな反応をした。典型的な男性が好きになりやすい純粋で綺麗なアイドル像なのだ。何でも許してしまいそうになる。

挨拶も「~もなな」で語尾を統一して既に浸透している。「もなな」というのは「もなかの7番」から来た彼女のあだ名らしい。

確実にアイドルとして成功している。

前述した通り、九条林檎No.5は媚びに成功したアイドルではない。彼女はあくまで登場人物としてキャラが立ったのだ。しかしこの巻乃もなかNo.7、彼女はアイドルとしての成功を得ている。

多分九条林檎No.5みたいな頭がキレているタイプが好きな人は、これを「ちょっとバカっぽいな……」と感じるだろう。しかし逆にこれが九条林檎No.5と全く違う需要を拾っていると思う。

つまりこの1位と2位の争いはバトルロイヤルものにおける正統派ヒロインVSトリッキーキャラの争いなのだ。

キレッキレのブレインタイプが好きか。ふわふわのほほんとした純粋な女の子が好きか。これはタイプの分かれるところだ。Twitterというフィールドでは前者の方が受けやすいが、戦う舞台が異なれば正統派ヒロインは強い。それこそがこの「バズり」を受けてなお頂点に君臨し続ける理由だろう。

今現在の所、彼女は「ゲームの登場人物」としてはさほど面白い効果を持つ人物ではないが、アイドルとしては誰よりも成功しているのだ。



……分かる人にしか分からない例えをするなら、九条林檎No.5は狛枝凪斗であり、巻乃もなかNo.7は舞園さやかだ。

ダンガンロンパの例えだが恐らく、「外の世界の人間に誰よりも好かれたのは狛枝凪斗」だが、「同じ世界の人間に誰よりも好かれたのは舞園さやか」だ。狛枝はそのトリッキーさで人気キャラにのし上がったし、舞園さやかはその世界では国民的なアイドルだ。でもぶっちゃけ狛枝は同じ世界の人間にはそこまで好かれていないし、舞園は外の世界で評価されるほどトリッキーではなかった。

つまりメタ視点で見た時にエモいのは九条林檎No.5だが、同じ世界のアイドルとして応援したくなるのは巻乃もなかNo.7なのかもしれない。

とはいえ二人は別のキャラなので、厳密には争う必要はない。あくまで競う相手はクローンであり、別のキャラクターではない。だって二人とも勝者になる事が出来るからだ。ついでに言えば3位の雨ヶ崎笑虹No.6だって争う必要はない。


そしてこのバーチャル蠱毒オーディションはまだ始まったばかりだ。

これからどんな「ゲーム上に」登場人物が登場するのか、特に勝ち目のない下位の存在がどんな行動に出るのかが、まさにこれからが見物となってくるはずだ。

九条林檎No.5のせいで当事者になってしまった私は、このゲームを最後まで見守るしかない。


(追記11/23 20:00)

スタートイベントが終了したらしいが、最終的に1位と2位は入れ替わったらしい。林檎5様強いですね……。


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