バーチャル蠱毒に重課金するという事 ~ソシャゲとSHOWROOM~


バーチャル蠱毒と呼ばれた件のオーディション。ついに予選を追えて本選が始まった。前回記事を書いたのはスタートダッシュイベントが終わる前だという事を思うと、随分勢いの速いイベントだ。今ではあの記事の情報もすっかり古いものとなってしまった。


さて予選の最終ターン、実に面白い事が起こった。

タワーの乱舞である。

SHOWROOMに明るくない人向けに説明すると、タワーというのは東京タワー型の有料ギフトの事である。このギフトを送ると本人の支援になりランキング化されるポイントとして加算される訳だが、このタワーというのは1個で1万ポイント分の価値がある。1ポイントは基本1円とほぼ同じ価値なので(消費税を含めて厳密に計算すると微妙だがここでは同じという事にしておく)、視聴者がこのギフトを捧げる為に必要な金額もまた1万円である。またこのギフトは有料限定なので、無課金で苦労してせっせとやっても手に入るというものではなく、これを得る為の対価は常にリアルマネーの諭吉でなくてはならない。

またSHOWROOMは同じギフトを10個投げるとボーナスポイントが加算される仕組みになっている。つまり同じ1万円を使うならば、タワー1つよりも下位ギフトであるくまのぬいぐるみ(1つ1000円)を10個投げた方が、最終的に推しに加算されるポイントは大きい。そういう意味でこのタワーというものの役割は基本的に、ボーナスポイントを二の次にして推しのステージにこのタワーというものを建ててみたいという欲求に基づくものにしかならない。


はずだった。


そう、ならタワーを10本投げてしまえばいいのだ。




頭おかしい(小声)


予選の最終日、それまで最下位だった結目ユイNo.7に30本のタワーが与えられ、なんと劇的な本選進出を決めた。というのは有名な話だ。キャラにもよるが大体予選突破のボーダーは30~40万台。突然30万与えたらそれだけで形勢が逆転する。

他にも雨ヶ崎笑虹枠は大接戦を繰り広げ、有志の調査によれば終了一分前まで3位だった雨ヶ崎笑虹No.1が7位まで転落するという大事件が発生した(ポイント差も大接戦である)。私はその時他の候補の配信を見ていた訳ではないので、実際に投げられたのがタワーかぬいぐるみかは存じ上げないが、それなりの金額が投げられたという事は想像に容易い。この笑虹No.1と、6位のNo.11が審査員特別賞で拾われなければさらにの事件は「惨状」「バ蠱毒の闇」として語られたはずだ。

また本選が始まった直後、結目ユイNo.12にタワーが10本建ったそうだ。結目ユイ界隈どうかしてるぜ。予選終わりから本選頭までのこの流れで本格的な札束バトルが開幕してしまったと言っても過言ではない。(逆に言えば殆どタワー爆撃に遭わずして好記録を叩き出す九条林檎No.5や巻乃もなかNo.7は真にヤバいと思う)

繰り返すが、1タワーは1万円である。恐れ戦け。




正直ソシャゲのガチャに課金するのすら躊躇してしまう自分自身にとって、これは驚くべき事であり衝撃だった。私は最も好きなソシャゲ・FGOですら課金するのは年に2度ある福袋(最高レアリティのキャラが確定で出てくる)がベースで、比較的好きなキャラが登場しても1万円以上の深追いはしないと自制している。

これには最推しのバリエーションキャラが登場してないとか、自身の所謂「メインジャンル」がソシャゲではない事による課金癖の無さなどがある程度起因してはいるが。それでも基本的にソシャゲへの課金は出来たら有料ゲームへの初期投資、追加ストーリーや便利アイテムの購入などの非ギャンブル的な手段が良いなと考えてしまうタイプである。

たまにソシャゲのガチャ、もしくはランキングを走る形式のイベントで「〇〇万円使って推しを出しました」というツイートを見かける。恐ろしい事にこれが50万円以上という事も少なくはない。10万円でもそれなりにヒエッと思うが、50万以上となると一体どこからそのお金が出てきているのかという心配をせざるを得ない。

ソシャゲに課金するという事の是非はたまに話し合われるが、自身の意見を述べればまあそれなりに実りがあると思う。まず課金して手に入れたカードは(それにいくら金がかかろうとも)手元に残る。それがただの高額なjpegデータだとしても一応手元に残るものはある。またガチャ形式の場合は目当て以外の物もうっかり手に入れる事も出来たり、一応〇〇万円分のハズレカードを売却してゲーム内通貨に還元されるという事はある。それがいくらみみっちくてもサービス終了以外の方法では無にはならない。

また仮に爆死したとしても、「このキャラに金を使いました!このキャラは人気です!公式様もっと供給よろしくお願いします!」という痕跡を残す事は出来るし、むしろそれを一つの目的としている場合もある。上手く行けばグッズなど別の展開への影響も期待できる。そういう希望を残す事も出来る。まあサービス終了すれば無なんだが、サービス終了「させない」という役割も担ってる。



さて、SHOWROOMにおけるこのバーチャルオーディションへの課金の場合、無になってしまうのではないかという恐れが生じてしまうのだ。


①候補が勝ち残らない

これはもっとも懸念されるべきそれである。いくら課金したところで他の候補が追って来れば負ける事はある。対抗にタワーが乱立してしまえば泥沼。そして泥沼札束合戦を勝ち抜いた所にあるのは、

最終面接である。

札束合戦を勝ち抜きなんとか推しを2位に入れたところで、審査員特別賞が最終面接勝者になった場合など正直目も当てられない。当然負けてしまえばその候補の末路は消滅であり、将来の供給など期待できない。確実にポイントという数字にはなるが、負けは0と変わらないという見方をするなら無になってしまう。

しかし目を付けた逸材を別の形で拾うとかあったらいいし、本人がやる気になって別の器に「転生」してくれたらまた話は変わる。

②本人に一銭も入らない

これはこのオーディションの最大の欠陥だろうか。仕組み上本人へのお布施にはならず、課金したマネーは全てSHOWROOMに吸い取られてしまう。

これはソシャゲというよりもクリエイターへの投げ銭という方が近い。好きな物へのお布施。「このお金で彼女がケーキの一つ買えたら嬉しいなウフフ」と願う事すら許されない。

③総合すると

つまりこの課金は「課金した人」と「課金された人(配信者)」の両方の手に何も残らないのではないか……と突然そんな暗い考えに至ってしまうのだ。




といっても

形には残らない。でも見えない所では働くと思う。

まずタワー爆撃のような重課金の場合は「有名な逸話」としてネットの片隅で語り継がれるだろう。Twitter上のトゥギャッターは勿論、今は非公式wikiが誕生してこうした話題をアーカイブする事が出来るようになった。

この記事を読んでいる皆さんも是非これを編集して欲しい。

推しのぺージで「編集」という所をクリックするといとも簡単に編集する事が出来る。私も推しのページについては知っている事についてたびたび編集しているが、いかんせん予選敗者を含めた61人は多すぎる。あなたも知っている事を是非ここに書き残してほしい。

話が脱線したが、派手な課金はこうした形で歴史の一ページとして刻み付けられるだろう。

またこれは配信者の方針にもよるが、特に有料ギフトの場合は名前を読み上げてお礼を言ってくれる事も多い。配信者が自分の事を見てくれるという体験はプライスレスだ。

また配信者自身が、例え敗れ去っても、自分にお金を出してくれたという体験を自分の中に刻み付けてもくれるかもしれない。そうした肯定感を持って次のステージへと歩んでいく、かもしれない。これに関しては「かもしれない」論にしかならないが。

さらに課金する心理を突き詰めれば「後悔したくない」だろう。「自分がタワーを建てていれば推しは消えずに済んだのに……」と接戦で推しが負ける事。これは雨ヶ崎枠で実際に起こった(審査員特別賞のお陰で消えずに済んだけれども)。後悔するぐらいなら……その課金も時として重要であり、最後の最後で使う課金はきっとそれだ。

そんな感じで、形には残らなくても今この時を楽しむプライスレスな体験を手に入れるには良いかもしれないですよという話だ。タワーを建てて周囲を驚かせるのもこのリアルタイムシーンではまた一興だろう。本選ラストには何が起こるのか、見物でもある。

私も推しに名前を呼ばれたいが為に課金したいとか思い始めながら、とりあえず今日もカウントしてお星さまを投げるのであった。





……ただ前述した通り、得るものが物凄く多い課金とは言い難い所はある。

課金は生活に影響がない程度で。

石油王以外については募金してもいいような金額で無理なく参加しよう。

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