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牧くんと黒澤部長の「恋」について考える

「はるたんが、好きでぇ~~~す!!!(声割れ)」

絶叫の告白とともに明るみになった、天空不動産営業所部長・黒澤武蔵(55)の恋。しかし、告白の相手は同じ会社の部下、お人よしで冴えない春田創一(33)だった——。

というのが、今「視聴熱ランキング1位」のテレビ朝日土曜ドラマ『おっさんずラブ』の幕開き。

あーだこーだいろいろあって、5話では、何とはるたんと牧くんは、ちゃんと正式につきあうことに。「俺は、まぁ……」と、海と空を見つめて牧くんのことを思い出し、ふっと優しく表情を緩めて「ああ、俺、牧のこと好きなんだなぁ」と自覚したようにはにかみ「うん」と幼なじみのちずちゃんに告げたはるたん。田中圭くんの全力の演技力で「恥ずかしくないから」と告げたあの表情、きっとこれからも心動くことは無いだろうし、めでたしめでたしなんだけど、めでたく終わるはずもない。どうやら6話は、参報を味方につけたシンデレラのリベンジ回らしい。

そこでふと考えたのは、振られてもめげない部長と、もしも春田さんに「いや、お前とは付き合えねえわ」とあの時言われていたら、きっとそのまま部屋を出て行ってしまった牧くんとの違いについて。

SNSを見ていても、今のところ「部長愛され」「はるたんと牧くん幸せになって」勢が多いように見えるけれども、果たして黒澤部長は最後まで報われることはないのだろうか?

ぶっちゃけBL好きで、年季の入った腐女子の私の周りは大騒ぎになっていて、連日「牧春か」「春牧か」はたまた「マロ武スピンオフはあるのか」という論議が交わされている。公式の大サービスやもろもろな条件が相まって、BLという、腐女子からしてみれば「またそういうテーマを取り上げて…ほっといてください!」と反感を買うかもしれなかった危惧などすっかりどこへやら。

自分も例にもれず、みんな楽しそうだからちょっと足首つけてみようかな、ちゃぷんちゃぷーん、あれちょっと深いぞこの沼は。あれあれ~この沼あったかいよぉ~? と思う間もなくずぶずぶになってしまった。いわゆる「沼落ち」である。

そんな泥にまみれた腐った河童が、部長と牧くんの違いについて少し考えてみた。


黒澤部長は、キャラ紹介やどこかの記事で「ゲイ」と書かれていた。しかしそこには疑問が残る。

結論から言うと、黒澤部長は「そういう要素もあったけれども、今回好きになった人がたまたま男だった」、牧くんは「そっちの」人じゃないかと考える。

ゲイの方でもそれを隠して、女性と結婚している方もいらっしゃるだろう。しかし部長は、それを隠していたというよりは、自分にその要素があることに気づかずに、平和に結婚生活を送ってきた。そして「シンデレラ事件」ではるたんに恋をしてしまったわけだ。それがなければきっと、男に恋をすることなく、蝶子さんとずっとこの先も、夫婦を続けていただろう。

それを考えると、はるたんにはぜひ責任を取っていただきたいのだが、はるたんは部長のことを「かっけぇな」としか思っておらず、ここは完全に望み薄。そうなると、残りの2話は、春田さんと牧くんのあれやこれやに終始するのだろうかといえば、タイトルが『おっさんずラブ』である限り、春田さんと牧くんがおっさんになっても恋を続ける『ニューヨーク・ニューヨーク』路線を取るのかと期待してしまう。

「可愛すぎる存在が罪可愛すぎる」と、語彙が偏差値5になっていた黒澤部長は、はるたんとどうにかなりたいと思っているのかと言えば、そこまで考えていないのではないと考える。大好きなはるたんがそばにいて、いつも微笑んでくれていればそれだけで胸がきゅんきゅんドキドキという、まるで30年前のりぼんのような世界、それが黒澤部長の恋のように思える。

逆に、牧くんは花ゆめである。もっと言えばJUNEかきっちりBL。それもR18の。「いい所10個言えるか」に対して「悪いところ10個言えますか」は、「その悪い所も含めて俺は春田さんが好きなんだよ」というマウントで、例えて言うのであれば、真壁くんに初恋をしている小学生の女子に対して、泉拓人と自分との激しい関係性について語る南條晃司のようだった。

牧くんの恋には「報われるはずがないけれども好きでいよう」という覚悟がある。部長は部長で、30年連れ添った蝶子さんに突然離婚を切り出すすさまじい覚悟があるけれど、それは「恋の勢い」にも思える。

牧くんは、「俺ならお前を傷つけたりはしない」と、廊下でかつての恋人に商業BLで5000000回は見たセリフを吐かれても、それでも否定せずに「そうですね」と受け入れて笑顔で一礼して去っていく。傷ついても、傷つけられてもそれでも俺はあの人が好きですという、覚悟を決めた表情だった。美しかった。時代が時代なら、林遣都くんの美しさをめぐって国と国が争うレベルだった。

どっちが素晴らしい、どっちが良いということではなく、2人の恋には違いがある。部長はこの先2話、恋が成就しなくてもはるたんにアタックし続けるかもしれない。かたや牧くんは、万一「終わりにしようぜ」と春田さんに言われたら、国が滅ぶようなあの悲しい笑顔で「……そうですね」と笑うのだろう。

問題は、キャッチコピーの「君に会えて良かった」だ。これを最後に部長がはるたんに言うのか、牧くんが「あなたに会えて、良かったです」とトートバッグを持って春田さんに告げるのか。それを考えると、リアルに毎日睡眠4時間になるまで録画を何度も見続けることになるので、早く最終回を見たいと願う一方で、いくらでも金を積むから円盤(マロもしくは新しいタイプの年下わんこが「俺じゃダメっすか?」とグイグイ言い寄ってくる武川スピンオフ付き)発売の発表を早急に、公式にはお願いしたい。

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