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ぼくは(狂った)王さま #37

「つまり、きょうかいの安全を確保して、おひるねしたいということか」

 アラカに要約させれば、そういうことになるのでした。安全な場所でしっかりねむらないと、まほうの回数は回復しないというのはアラカも周知の事実でした。今のりゅうの女王とプリスは、半ば矢の尽きた弓なのです。その弓を無理に持ち歩くつもりもありませんが、さりとて捨て置いて自分の仕事に戻るというのも、たしかに薄情者のそしりを免れないでしょう。

「よし、きょうかい通りを目指して進むぞ」

 アラカの言葉を聞いたプリスの表情が、ぱあっと花開くように明るくなりました。ぼくの判断で仲間は泣いたり笑ったりするのだから、リーダーというものは責任重大だな、とアラカは誇らしい気持ちになるのでした。プリスはウキウキしながら、四方からむらがる異国の歩兵どもをモーニングスター二刀流で、ばったばったとなぎ倒しながら進みます。それを見たアラカは「やっぱりぼくがいっしょに行く必要は無かったんじゃないか」と思ってゆううつな気持ちになりました。

「ああ、プリス様。よくぞ迷宮から戻ってまいられた……」

 戦棍メイスを構えた司祭と、焼き菓子を作る為の麵棒めんぼうやビールを詰めるためのびんで武装していた大勢のシスターが総出でプリスを出迎えました。まるで彼女が、この教会で一番えらい人であるような扱いです。というか事実としてそうなのですが、この光景はアラカにとって面白くはないものでした。

(……自分の権勢けんせい誇示こじするために、ぼくをきょうかいまでひっぱってきただけなのでは?)

 それに、これだけ仲間に囲まれているならば、ぼくが出しゃばることもないだろう。そう思うとアラカは、りゅうの女王の手を引っ張って、こっそり王宮への道をひた走るのでした。今頃ユキエ兵長は、王さまを守りながら孤軍奮闘しているはずなのです。加勢できるのは自分しかいません。(続く)

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