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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第152わ「いざ、電撃戦(ブリッツ)」

(承前)

二匹の人間狩りが俺を見下ろして微笑んでいる。心の底から、楽しくて楽しくて仕方がないとでも言いたげに。降り注ぐ灰は止むことを知らない。

「その灰、あまり吸い込まない方が身の為ですよ」

言われるまでもない。怒りで恐怖をねじ伏せるように絶叫する。『キングの前のポーンを二つ前に!』

「はい。基本に忠実、ダンナらしい一手です。では私は……そうですね……」

吸血女の手番になるや否や、灰の滝が一時的に収まった。人間狩りの双眸には紫の炎が迸る。さっきまでの笑顔は消え失せ、形の良い唇が真一文字に固く結ばれている。……チュートリアルだ。吸血女は、あえて必要の無い長考をして「私が考えている間は貴方の安全は保証する」と説明しているのだ。

「ううん……どうしようかな……」

時間をかけて放たれた手は俺と同じく、自らのキングの前に置かれたポーンを二つ前進させる一手だった。ポーン同士の正面衝突。即座に俺の棺桶へ灰の流入が再開される。

(続く)

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