見出し画像

2023年度の授業を振り返り2024年度の準備を始める

出張仕事が多かったこともあり、なかなかnoteに投稿する時間が
作れなかったこと、
体調を崩したこと、
内容を考えすぎて文章がかけなかったこと、
以上のことから久しぶりの投稿になりました。
言い訳ですけど。

授業を振り返る理由

さて、記事のタイトルにあるように今回は2023年度の授業を
振り返ってみようと思います。
私は数年前からとある大学で紙の修復を教えています。
そのため毎年シラバス作成のため授業計画を立てる必要があります。
大きな変更はないのですが、見直しをしてこの部分をもう少し細かく、
とかこの内容は少し簡単に、など小さな変更を加えています。
1年を終えると学生の理解度から自分の説明不足を感じることが多く、
見直しをして来年こそは、と気持ちを入れ替えるようにしています。
ベースになるパワポ資料も配布資料の原稿もあるので、手直しを
して授業に備えます。

この時期、授業がないため自分の仕事を中心に行っていますが
時間を作って5月頃までの授業資料を見直します。
フリーランスの仕事は、急に忙しくなったりしますので、時間に
余裕があるときに少しづつやっておくとあとあと追い込まれずにすむこと
を数年かけて学びました。

というわけで、2023年度の授業を振り返ってみます

2023年度の授業

ガイダンス(修復の目的と原則)
紙作品の修復とは(日本における紙修復の歴史と
ペーパーコンサベーション)
書籍の修復と掛軸の損傷
紙の劣化要因
洋紙と和紙
版画の技法と書写材料
版画修復実習
保存額装(マッティング)
紙作品修復処置工程まとめ&記録
繕い
裏打ち
保存容器の作成
1年間のまとめ

シラバスの作成時にはこのような計画を立てていました。
始めの頃は講義(座学)がメインなのですが、2コマ講義を
していると飽きたり、眠くなったりすることもあるようなので
(数年やって分かりました…)途中なにかしらの実習を追加し
進めています。
処置前調査からは、1コマ講義1コマ実習というように進めています。
マッティング、繕い、裏打ち、保存容器作成など1コマの実習では
終わらないこともありますので、その場合は2コマ、3コマと必要な
時間をとります。
学生の人数、当日の出席者の人数など実習の進み方は毎回異なるので、
ここで計画は少しづつ変わっていきます。

2023年度の授業の反省点

座学で最も大事にしていたのが、「修復の原則」と「修復の目的」を
知ってもらうことです。
以前のnote「予防保存をする」でも書きましたが、修復を行うにあたり
原形保存の原則
安全性の原則
可逆性の原則
記録の原則
という4つの原則があります。
詳しい内容は以前の記事を読んでいただければと思います。

壊れたから直せばいい、ということではなく、修復を行うにあたって
大事なことは何かを伝えていきたいと考えています。
けれども、なかなか上手に伝えられていなかったことが学生の発表を聞いて
分かりました。
座学はとにかく興味を持ってもらえるようにいろいろ工夫をするのですが、
「掛軸の損傷」という項目は、毎年異なる内容になっています。
私の授業は、洋紙の修復を主に教えているのですが、掛軸など表具をやってみたいという学生が毎年1人は必ずいます。
そこで、掛軸の構造を知るためにミニ掛軸を作っていたのですが、今年度はからくり屏風を作ることにしました。これはなかなか好評だったので、今後はこれで進めていこうと思っています。
しかしそのためには、もう少し屏風の構造を説明しないといけないと考えています。表具に関係する授業は、裏打ちの時間を除いて1回しか時間を作っていないので、中途半端なのもどうかとは思っています。

その他、紙のこと、書写材料のことなど修復に必要なことを説明しています。サンプルを用意したり、見本帳のようなものを作ったり、簡単なテストしたり、それでも十分な説明はできていないと毎年感じています。

そして、修復実習は半年程度かけて版画の修復を行っています。
教材用に損傷のある版画を購入し、処置前の調査から処置後の記録まで
1回につき1つの項目を伝えながら実習を行います。
なるべく同じような損傷のある作品を探し、同じ内容で処置ができるように
しています。
修復の基礎を学ぶことが目的ですが、版画の修復実習はとても興味深く、楽しみながら行ってくれているのでこちらはこのまま継続の予定です。もちろん処置の目的、方法は必ず伝えます。

問題は記録のまとめかたです。修復学校やその後のいくつかの工房での記録の取り方をもとに、必要な項目を残しているのですが、あまりにカチカチの形式にこだわるのもよくないと考え、大枠を決めてそこを埋めていく形にしているのですが、他授業での説明と混同する学生が多く、それは必要ないということも加え、こちらの指定を無視するということが起こってしまいました。記録の取り方は工房によって異なるので、内容をしっかり理解してまとめられればどこでも通用する、と私は考えていたのですが、そういうことではないのだなと気がつきました。
マニュアルのようなものを作ると、この通りにやったのにうまくいかないとかこの方法以外知らないと言い出すこともあるので、出来るだけマニュアルは作りたくはないですし、作ったとしてもこれ以外にも方法はあるということを必ず伝えるようにしています。
記録のまとめ方も、これでなくてはいけない、ということではく、この内容がはいっていれば十分伝わる、ということを言いたかったのですが、それでは不十分だったし、不親切だったのかもしれません。

繕いや裏打ちが版画修復実習に含まれないのは、修復する版画に破れている箇所がないためなのですが、大事な処置なので対象資料(作品)を変えて実習をしています。和紙に書かれた文書や展覧会のポスターなどを使っています。
繕いや裏打ちは好きな学生と苦手な学生に分かれてしまうようで、難しくていやだという顔を隠さない学生もいるし、難しいからこそできるようになりたいと楽しむ学生もいます。
学生の希望により、予定より多く実習の時間を作ることもあります。
今年度は、よい資料があったので例年より時間をとりました。

保存容器の作成は、作成した記録(報告書)を収めるフォルダーと修復した版画を収める簡易な保存箱を作り予定でしたが、今回はフォルダーの作成をしたのち、既成の組み立て保存箱を組み立て、収めました。
既製品があるのも知っているのですが、あえて作品寸法に合わせた箱を作るようにしています。
けれども、紙を切るのが大変なのか面倒だと感じる学生がいたことを知りました。これは、明らかに私の説明が伝わっていなかったということです。
既成の箱は寸法が決まっているので、収める作品よりも大きくなってしまうことが大半です。大きすぎると箱の中で、動いてしまいまたあらたに損傷を与えることになりかねません。ですから、作品に合わせた寸法で作成し、損傷を与えないようにすることが大事なのだと伝えていたのですが…。
全員ではないのですが、私にとっては非常に衝撃的なことでした。

次年度の授業に向けて

長々と振り返ってきましたが、
反省点はすべて説明不足と伝え方の悪さだと分かりました。
頭の中で考えていたことも、文章にしてみると結局何が原因だったのかが
分かりやすくなるような気がしました。本当は自分のノートだけに書いていればいいのかもしれませんが、モヤモヤしてきて愚痴だらけになって終わるというのが想像できるので、あえてこちらに書いてみました。

まずは、講義内容をもう一度見直して、分かりやすく伝えられるように、自分がもう少し勉強をしておかなければいけないと感じています。
実習は、楽しいだけでなくしっかりと目的と方法を理解してもらえるように
手順を考えていこうと思います。

今は、参考本の読みなおしの最中です。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?