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やりがい搾取に対抗! 医療従事者に必須のマネーリテラシー

やっとの思いで大学での専門教育を終えて社会人になった。ひとつでも落とせば留年,というカイジのような修羅場をくぐり抜けてきてみんな医療者になったはず。だがしかし,あんなに苦労して医療者になっても待ち受けているのはまたもやカイジの世界だ。やりがい搾取,自己研鑽という名の奴隷労働,「患者第一」の美辞麗句の元に医療従事者はボロ雑巾のように扱われるのが今の日本の医療だ。

そんなカイジや北斗の拳の世紀末世界を生き抜くために,われわれは「医療」という専門知識とは別に,「マネーリテラシー」という武器を手に入れなければならない。

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研修医で目の当たりにした労働対価の洗脳

私は大学病院で初期研修を行った。私が研修した大学病院は当時としては悪くない待遇だった。給与は年俸制で,働いても働かなくても一定の金額だった。そんな事もあって研修医仲間はだれも給与明細に目を通してはいなかった。私を除いては。

あるとき,毎月の給与明細を見比べてみると数百円程度の上下があることに気づいた。年俸制なのに一定ではないのはおかしい。すぐさま私は事の顛末を確認しに行った。原因は社会保険料の変動によるものだった。こんなことに気づく人は今までだれもいなかった。そもそも給与明細をみんな見てないのだから。

超過勤務手当についても闘った。年俸制ということは,働けば働くだけ労働単価が下がるということだ。医者の労働は定時ではなかなかおさまらない。もちろん緊急の仕事が入ることもあるが,そもそも医療の世界は「定時」という概念がガバガバなので,カンファレンスやノルマが17時を超えても普通に予定されていたりする。これらの超過勤務についてはすべて無償労働となっていた。これについて私は結構な声で異を唱えたことがあった。こういう声に対してはお決まりの「勉強中の身なんだから」という「雰囲気」で押し切られそうになった。しかし,学生ではないのだから労働に対する対価は払われなければならない。なんなら労基署に判断を仰ぐことも告げた。こんな私はある意味で異端であり白い目で見られもしたが,結局超過勤務の申請ができるようになった。

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 ■医療労働と金を絡めるのは不浄なのか

研修医の間でわかったことは,医療の世界は労使ともに「労働」という概念や,それに対する「対価」という考え方がガバガバで,それについて言及することは「金に汚い」という判断をされる世界なのだということだった。

一方で「勉強」や「やりがい」をやたらとおしてくる。間違ってはいけないのは,それらは自発的に感じるものであって,使用者(雇用主)が無理やり押し付けるものではない。勉強したいのであればこちらからお金を払って頼むわけで(例,大学院に対する学費),金の流れの発想が逆なのだ。大原則として労働対価は必ずお金で支払われなければならない

労働基準法 第二十四条
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。


私は地獄のような世界に足を踏み入れたのだなと実感した。


収入は少なくないが,充分でもない

医療従事者はみな資格を持っている。これはある意味で資産形成においてはアドバンテージとなる。多少の差はあれど,ある程度の収入が見込めるからだ。

研修医以降,ある程度のまとまった給料が毎月支払われる(労働時間には非比例していなかったが)。それをどう使うかは本当に個人差が出た。全部使い切る者もいれば,質素な人もいた。

 ■仕事で必要な支出も多い

医療の世界は日々情報が更新されていくもので,働き始めてからもずっと勉強が必要だ。これに対する必要経費もゼロにはできず,教科書もバカ高い(※UpToDate を個人で契約すると年間 5 万円程度必要)。学会の年会費や学術集会の参加費用なんかも必要になってくる。もちろん所属学会が増えれば倍々ゲームで支出も増えていく。こう考えてみると,収入がかならずしも多すぎるということはないのだ。

 ■無償の時間外労働でどんどん単価は下がる

医師 3 年目以降,労働状況はさらに修羅の度合いが増してくる。大学院に入ろうものなら,「勉強中の身」という呪いが更に強くなり,その呪いが高度に結晶化すると「無給医」という呪縛霊,タタリ神になるのだ。無給医は「勉強中の身」なので休むことも許されず「無医」にもなる。もうこうなると現代の奴隷制度へ完全に組み込まれてしまうのだ。


無知が損をする世の中

先述の時間外手当の件でもそうだったように,そもそも不遇な扱いを知らないと勝手に損をさせられていることがある。この世の中は隙きあらばタダで労働者を使おうとしている。

給付金の類もそうだ。コロナ禍でさまざまな給付金が設定されているが,その多くは申請しないとはじまらない。つまり知らないとそもそも申請さえできないのだ。

無知なものはどんどん搾取されて損をするようにできている。


無知にサヨナラ! マネーリテラシーを磨こう

今までみてきたように,社会に出るということはあなたの資産(労働力も含めて)の防衛の日々でもある。世の中は隙きあらば給与支払いをちょろまかして不当にあなたの労働力を使おうとし,奪い取ろうとしてくる。マネーリテラシーをつけるということは,何も必要以上にお金を稼ごうということではない。自分の労働に対して適切な対価を受け取り,資産を守ろうということだ。

あなたのことを守ってくれるのは医局でも,病院でも,厚労省でも,医師会でもなく,あなた自身しかいないのだ

あなたの人生には仕事以外にも,結婚,家庭,子育て,趣味などさまざまなイベントが詰まっている。人生を豊かにするためにも自分の資産を守る必要がある。そのためには,自分を知り(資産の IN/OUT バランス),世の中の仕組みを知り(法律や制度),そして資産を育てる方法(正しい投資法)を知ることだ。


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