リハビリテーションの新たな可能性「スヌーズレン」とは

突然ですが、「スヌーズレン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか⁈

“スヌーズレンの語源は2つのオランダ語、スニッフレン<クンクンとあたりを探索する>、ドゥースレン<ウトウトくつろぐ>から造られた造語であり、「自由に探索したり、くつろぐ」様子を表しています。”(日本スヌーズレン協会http://www.snoezelen.jp/)

つまり、視覚、聴覚など五感で感じたものに対するくつろぎや探索などの反応を引き出すもの、となります。

今回、橋本さん@hasiii0721からご紹介頂き、河本先生@KomoKomosasにお会いでき、しかもスヌーズレンを実際にされている施設を見学させて頂く機会を与えてくださいました。

河本先生はスウェーデンに42年間滞在され、作業療法士としてスヌーズレンを実践されてきて、現在数か所の施設や作業療法士養成校等と契約されてワークショップや講義などをされています。
http://www.geocities.co.jp/SilkRoad/7437/

今回案内して頂いたのは、障がい者支援施設で、重度知的障害や重度発達障害の療養者で、平均年齢40歳代の様々な年齢の方々がご利用されています。

施設の門では、作業の時間に作成した備前焼の作品達が出迎えてくれます。

テラスのウッドデッキでは、手づくりの椅子やテーブルがあり、実際にカフェなどもされたりするそうです。

そして施設の中へと案内していただきました。
施設内では、スヌーズレンの考え方に従ったコンセプトの部屋が用意されています。

・ホワイトルーム
白を基調とした部屋で、癒されるオブジェを置いたり光の演出などをしてリラックスすることを目指す部屋です。

・アクティビティルーム
ボールのプールや大きなブランコ、ボルダリングの壁など、遊びの要素が満載で
大人でも自然と体を動かしたくなります。

・屋外スヌーズレン
これは建物の外で中庭のような場所ですが、タイヤやバスケットゴールなどを設置したり、四輪の足こぎバギーが配置されてて、自然と体を動かしたくなるような工夫がされています。

・ブラックバス
そしてなんといってもこれ!

「ブラックバス」という部屋⁈です。これほ、使用済みのバスを利用してスヌーズレン用に手づくりでブラックルームとして内装したものです。

ブラックライトを当てた部屋内では蛍光塗料を使用した物がよく光り、普段は体験できない幻想的な空間を作り出しています。

利用者や従業員の方々がこのようなオブジェ達を楽しんで作られているのも印象的です^ ^

ちなみに蛍光用品などは三笠産業で専門的に扱っているそうです。

三笠産業株式会社(スヌーズレン関連用品)
http://www.mikasasangyou.co.jp/chemicals/uv_toner/snoezelen_catalog

・対象者への関わり方

先生のお考えや関わりの方針として職員の人たちにアドバイスしている事としてはいたってシンプルで、療養者さんの以下の4つの行為

1.「暴力」
2.「破壊行為」
3.「自傷行為」
4.「(飛び出しなど)危険な行動」

それ以外は寛容であるべきだ。ということだそうです。
つまり、なるべく意思に従ってやりたいことは否定せずに見守る、というスタンスによって本人の能力の芽を摘まずに伸ばしていく、ということを徹底していらっしゃる印象を受けました。

・リハビリテーションへの活用

今回は、幼児期からの発達支援なので「リ」を抜いた「ハビリテーション」を目的としてスヌーズレンを実施するということでしたが、このスヌーズレンの考え方は発達障がいに限らず認知症高齢者や脳血管障害のリハビリテーション、さらには健康増進、介護予防にまで広く応用できる考えだと思います。

つまり、見る、聞く、触る、といった感覚を活性化させられるような環境を整えていくことで自然に運動して活動している。そしてそれは、あたかも自分で運動することを決定したと思ってしまうかのような誘導ができるのではないか、ということです。
そうすることで、我々がリハビリの現場で行いがちな、いや行なっている「良くなるためには運動をしましょう!」という関わり方を変えられるのではないか、とも思えます。

このことは、私も所属しているコミュニティ「The Arth」を立ち上げた西野さん@PT50139040の記事「”リハビリテーションのカタチ”をアップデートする『リハビリテーション2.0』プロジェクト」http://hideyukiriha.com/archives/12702

にも書かれていますが、セラピストが「治療者」と「患者」という構造内で治療を押し付けるのではなく、対象者の「したい!」を促すための環境作りをしながら一緒に進めていく、というコンセプトによって、結果的にみれば活動能力向上や機能向上に繋がっていた、という「アフォーダンス」の考えを利用することが、対象者の意欲を引き立てやすい、ということもいえると思います。

※アフォーダンスとは


“アフォーダンス(affordance)とは、環境が動物に対して与える「意味」のことである。 アメリカの知覚心理学者ジェームズ・J・ギブソンによる造語であり、生態光学、生態心理学の基底的概念である。「 与える、提供する」という意味の英語 afford から造られた。”(ウィキペディアより)
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/アフォーダンス

つまり人間も、何か行動するためにはその前提として環境により刺激を受けているはずであり、その結果が行動として現れるものだ、ということだと思います。

あと大事な事は、その人がどのような歴史を刻んできたか、過去にどのようなものに興味を持っていたか、ということを最大限にいかして、その人その人の自分らしい環境を作ってと言う事だそうです。

このような考え方は、リハビリテーションの現場でも十分に活用できるものだと思います。


例えば施設入所されている高齢者の方々の個室の部屋の中を、その方が昔に慣れ親しんだ物(趣味の道具や写真など)を配置して、それを見ることで昔の記憶が蘇って脳が活性化したり、また昔に大好きだった音楽を流すことで昔を思い出すこともでき、それによって何かしようと言う意欲も生まれるのではないかと考えます。


また、私は現在訪問リハビリテーションの業務に携わっていますが、この訪問の現場においても、応用できるはずです。


例えば本人の気に入ってる事柄に関連する画像や動画をスマホやタブレットで見せたり、訪問中にリラックスできるような音楽をBGMとして流したり、また何か珍しいものを見せて触りたくなるような反応を促す、などなど、バリエーションとしては無限に近いぐらいあると思います。

しかもその環境作りは何も高価なものを使用しなくてもよくて、100円均一ショップにあるようなものをうまく利用することで十分に活用できると先生はおっしゃっています。

私も今後はこのような考え方のもとで利用者さんの反応をより多く引き出せるようなリハビリ行いたいと思いました。
そしてこれを読んでいただいた方々にも、考えるきっかけとなる何かを与えることができたならば幸いです。

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