今年の6月、ベスト・アルバム『裸足のままの子供達』の発売と9公演の全国ツアー、そして年内での活動休止を発表したvez。彼らがツアー・ファイナルの地に選んだのは、2012年3月20日に現メンバーで初めてステージに立った場所である池袋CHOPだった。ファイナルというだけでなく、さまざまな意味合いが込められているであろうこの日に、僕は足を運ばずにはいられなかった。会場には本当に多くのファンが押しかけ、特別な緊張感と高揚感に包まれていた。

　やがてSEが鳴り、YA/NA（Ds.）が現れて重々しいドラムが響き始める。そしてメンバーがひとりずつ姿を現し、音を重ねていく。おなじみのオープニングといえる「目には目を その手に花束を」でライブはスタート。福岡でのワンマン公演でも感じたが、とにかくこのツアーはメンバーのテンションが高い。最初から全員が熱を帯びた表情で、絞り出すように音と言葉を重ねていく。さらに「Cut slider」や「Spinner」など、シリアスでヒリヒリとした空気を持つ楽曲が矢継ぎ早に披露され、一気に観客を引き込んでいく。いつでもライブが終わってしまうんじゃないかというほどのエネルギーを放ちながら、ライブは最高のスタートを切っていった。

　活動休止に触れたMCのあと、ベスト・アルバムに収録されている唯一の新曲である「裸足のままの子供達」が鳴らされ中盤へ。バンドにとって始まりの曲である「Black sheep tail」、最近のライブではあまり聴かれない「Heaven flower」、「Rain」や「Neon」といった代表曲がじっくりと鳴らされていく。1曲1曲を大切そうに綴る高木フトシ（Vo./G.）の姿が印象的で、中でも「Fairy tale」はハイライトと呼べるほど美しく、じっくりと染みこんできた。

　そして終盤に入り、SEからASAKI（G.）が空気を切り裂くようなギター・リフを響かせ「Fall silent」へ流れこむと、観客も一気にボルテージが上がる。続く「What you want and what you star」では、飯田成一（B.）が音だけでなく表情でも客席を煽り立て、このバンドの楽しさを全身で表している。怒涛の畳みかけのあと、「夜虹」が始まるといろんな場面がフラッシュ・バックしてきた。

「今　ゆっくりと
　軋む歯車 動き出す針は
　夜空へ 虹を架けるだろう
　そして 鳴り響く
　遠く風に乗り　輪を描くままに
　手を繋ぐ子供達の歌を　聴かせてほしい」
（「夜虹」の歌詞より抜粋）

合唱となったこのサビに出てくる"子供達"と、ベスト・アルバムのタイトルとなる「裸足のままの子供達」は同じなのだと感じた。そして本編ラストは「Sense of you」が高らかに響く。これ以上ないと思わせるほどの自信と誇りを伺わせるセット・リストだった。

　ほどなくしてアンコールが始まり、「杼」でじっくりとスタート。荘厳なサウンドの中、その場所にいるひとりひとりへ語りかけるように歌われる言葉に、思いがけず涙が溢れた。そして「Any」へつながり、その解放感に、まぶしさに目がくらむ。再度のアンコールでは、11月6日に誕生日を迎える飯田成一へのバースデイ・サプライズもあり、会場中が多幸感に包まれた。そして集まった観客へ感謝を述べつつ「Death star」へ。ステージも客席も、最後の1滴まで絞りだすように激しく1つとなりながら最高のツアー・ファイナルは終わった。

　年内での活動休止は決まっていながら、悲壮感は感じさせず、ただただ強くvezというバンドの輝きを改めて感じたライブだった。それはあの日、池袋CHOPという場所が、集まった人たち全員が導いてくれた光だったと思う。ライブは残すところあと1つ。12月15日の渋谷CLUB ASIAでのワンマン"vez are go!! #8 "（詳細は以下）。"今"のvezを全身で体感できる最後の機会となる。ぜひこのバンドの到達点を目撃してほしいと思う。

vez oneman "vez are go!! #08 "
at 渋谷CLUB ASIA
OP18:30 / ST19:00
ADV 4,000yen / DAY 4,500yen (+Drink)
TICKET:e+にて発売中
http://eplus.jp/sys/T1U14P0010163P0108P002241926P0050001P006001P0030001

vez Best Album『裸足のままの子供達』
￥3,000（tax.in） 会場限定販売　VEZCD-009
01.目には目を、その手に花束を
02.Sense of you
03.Cut slider
04.Here we go
05.Black sheep tail
06.Fairy tale
07.Rain
08.Neon
09.GHOST
10.Spinner
11.What you want and what you star
12.Death star
13.夜虹
14.Any
15.裸足のままの子供達（新曲）