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地獄へ、ようこそ ~誰か、トドメを刺して、楽にしてくれませんか…?~

そんなわけで、脳腫瘍の手術本番
1月30日、午前8時30分オペ開始

オペ室に入る前に、嫁と一言二言言葉を交わした…。内容は、覚えていない。取り留めのない会話を交わしたことだけは覚えている…。

オペ室に入ると、麻酔科の先生が簡単な説明を行う
「酸素マスクで呼吸していただきます。そうすると意識が失われていきますので…」

自分の記憶はそこで一度、途絶える
夢は見ていました…。真っ白く光る角砂糖のようなキューブに乗っているような…そんな夢を少し見て…

そして、気がつくと目覚め…
オペ室から出たところで、嫁が何か話しかけてきたので、何か答えた記憶はある…

元々左耳は難聴を持っているので、聞き取るのがようやくだった…

それより、右耳の騒音が凄まじかったのを、良く覚えている

音としては道路工事と、ジェットの飛行機が飛び立つような音、それだけが右耳からは聞こえてくる…

その状態で、なにやら訳の分からない部屋に運び込まれて、50度くらいの角度をつけさせられたまま、固定される
そこで、太股を強制的にマッサージする機械を装着され、固定されるのだ…

後から知ったのだが、所謂それはICUという部屋らしい

時間が過ぎるに連れ、今度は頭が痛くなってくる
まぁ、今から考えれば、脳の一部を切り取って、麻酔が切れてくれば、そうなる

そして、右耳からの騒音

せめて横に寝かしてくれれば楽なのかもしれないが、血が頭に回らないように…とのことで、50度の角度を保って、起きた状態のまま眠り薬などを投入される

が、眠れないのだ…

今までに聞いたことのない騒音と痛み、起こされたまま眠れない状態で固定され、固定されたところの痛み。
太股は訳の分からない機械で強制的に動かされ、心や身体で落ち着くところなど、どこにもない

さらに、床ずれじゃないが、どの角度になおしてもらっても、痛い。

そんな痛みと騒音の中、ずっと固定されている…
この痛みが続くくらいなら、いっそ殺してくれと言う痛みが続く…

「痛いので、何とかして下さい…!」
と看護師さんに伝えると
「今、夜の3時ですよ?他の患者さんの迷惑にもなりますから…」と言いながら、一応何かの注射はしてくれる

が、そんなもの、効くわけがないのだ
ひたすらの痛み、徹底的な騒音…

全身麻酔なんて、寝ているだけで、終わった後は疲れて寝ていれば日にちが過ぎて行くよ?大丈夫。

そう聞いていたが、脳腫瘍に関しては、違う。ひたすらに続く騒音と、頭が割れるような痛み、それらがひたすらに人の眠りを妨げる

それと、夜の3時に看護師さんに声をかけたときに気がついたのが、めまい

目を開けると、景色が遊園地のコーヒーカップに乗ったときのように、物凄い勢いで流れてゆく
自分自身は動けないのだから、何もしていないのに、見える景色だけは物凄い勢いで流れてゆく…

それはそれで気持ち悪いからと目をつぶっても、今度は物凄い頭痛とありえない騒音が右耳で鳴り響く。

「神様、いるなら私を殺して下さい」
「誰でも良いから、私を殺して下さい」
「一瞬でも早く、私を殺して下さい」

頭の中に広がる願いは、ただそれだけ
生きて何かを…とかじゃない。一瞬でも楽にして欲しい。頭の中にはそれしかなかった…

永遠のように続くかの苦痛、騒音、夜の闇。それらが終わって、朝になる…。そこで地獄が終わってくれればよいのだが、地獄は「ほんの少しだけ」優しくなっただけで、まだ続く…

今度はICUから、個室への移動となる…
別に、状況は何も変わっていない
ただ、個室への移動をさせられるだけ…だ

そして、個室での地獄が始まる

もし、気が向いたなら…