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【限定承認】民法解釈の体験談

こんにちは、今日もブロックチェーンの話題は一旦脇に置き限定承認についての体験談。民法ベースの回想🐱✨

前回のお話はこちら

限定承認に関する民法の条文は第922条から第937条まであります。順番に追っていきつつ専門家の意見のリンク先をまとめていきます。

相続放棄と限定承認の違いを考える必要がありますが、ざっくり下記の場合は相続放棄をする前に1度専門家に相談しましょう。

✅プラス財産、マイナス財産両方が不明
✅代襲相続についてわからない
✅債務があるが一部はどうしても残したい

なぜこんなに限定承認の知名度が低いのでしょうか?多分、複雑(手間)な割に報酬が見合わない分野だから使う人が少ないのではないかと個人的に思います。上手く段取りを組めば、士業の先生の報酬も想像以上に確保することと依頼者の負担軽減が可能です(後日、有料体験談にします)

まずは専門家のコラムを読んでみましょう。
👉限定承認が利用されない理由
👉限定承認の有用性 など

限定承認の申述を提出できる期間は相続放棄と同じく「相続を知った日から3カ月以内」
ですが、生前に把握していないケースの方が多いかもしれません。

その場合でも「熟慮期間の伸長の申請」である程度柔軟に対応してもらえるようなので、必要な手続きさえ抑えていればOKという認識です。やはり東町法律事務所さんのコラムはわかりやすい👀

👉熟慮期間の伸長の申請の検討
👉限定承認の申立て
👉限定承認の申立てが受理された後にすべきこと



限定承認(第922条)

(限定承認)
第九百二十二条 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。

取り敢えず「相続放棄」ではなく
取り敢えず「限定承認」の世界観もあるんじゃないかな。残せるものまで放棄する必要はないと思います💰

た、だ、し
専門家の中でも限定承認を行った実績のある専門家に依頼することを強くおすすめします。計算も複雑ですが(債権者や相続人が沢山いる場合や財産が多岐に渡る場合は特に⚠)中には鑑定人が必要だったり、場合によっては競売で換価したり。ケースによって難易度がすごーくかわります。複雑なケースでは完了するまでに1年以上かかる場合もあります。

特に受け継ぐ不動産など故人が取得した評価額と現在の評価額が大きくプラスになる場合は“みなし譲渡所得税”が課税されるため、残したい内容によって費用が大きく変わります。罠というか、そういう制度🥺


共同相続人の限定承認(第923条)

第九百二十三条 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。

ここ、たまに専門家さんの中でも意見がなぜか別れました。相続放棄をした人は相続人としてカウントされません。裁判所のHPにも書かれているため気になる方は調べてみて下さい。私の場合は私一人が相続人となり他の人には相続放棄をしてもらい進めました。これがダメだと言われることもありました🥺
(わたしが記事を書く1番の理由)

ちなみに相続放棄をしない相続人の中で、1人でも限定承認に反対する人がいれば、限定承認はできません🥲


限定承認の方式(民法924条)

(限定承認の方式)
第九百二十四条 相続人は、限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。

「相続を知った日から3カ月以内」に裁判所に限定承認の申述をしなければ、自動的に単純承認(普通の相続=プラスもマイナスも引継ぐ)ことになりますよ。申述書を提出する時は相続財産の目録も一緒に提出してくださいねという内容で、時間内に財産目録(財産の内訳の把握)ができない場合は前もって「熟慮期間の伸長の申請」を提出する必要があります。

限定承認の申述を3カ月間以内にしなかったがために単純承認にならないよう要注意です。


被相続人に対する権利義務(民法925条)

(限定承認をしたときの権利義務)
第九百二十五条 相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対して有した権利義務は、消滅しなかったものとみなす。

限定承認者による相続財産の管理(民法926条)

(限定承認者による管理)
第九百二十六条 限定承認者は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならない。

この辺りは、責任の所在地を明確にするための条文。例えば、残したいものに金品以外のものか含まれる場合(超ざっくり)、権利や保存義務などの責任は限定承認を受ける人に発生し消滅しません。ということ。

くわしくは専門家に相談です🙆

相続債権者等に対する公告・催告(民法927条)

(相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告)
第九百二十七条 
1 限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
2 前項の規定による公告には、相続債権者及び受遺者がその期間内に申出をしないときは弁済から除斥されるべき旨を付記しなければならない。ただし、限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者を除斥することができない。
3 限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者には、各別にその申出の催告をしなければならない。
4 第一項の規定による公告は、官報に掲載してする。

ここの解釈も限定承認のポイントのひとつではないでしょうか?裁判所で限定承認の受理がされてから5日以内に官報に掲載しなくてはなりません。個人で行うと実務的に積むリスクがあります。段取りなく進むと受理後5日以内の官報掲載は無理…

そして、官報掲載は2ヶ月以上掲載する必要があります。掲載文にはルールがあります。掲載に必要なキーワードを網羅した原稿を作る必要がありますが、専門家に依頼した場合は官報掲載の予約や原稿作成、掲載まで行ってくれます。

限定承認をする人は、把握している債権者や受遺者に限定承認をする旨を報告する義務があります。うちの場合は弁護士さんが各所にお手紙を送って全ての方に催告をしました。
自分に取って都合悪いからこの人には催告しない。とか絶対ダメです。

バレたらせっかく進めていた限定承認がパーになり、自動的に単純承認になります。なので、事前の債権者などの把握はとても重要です。官報掲載期間終了後の精算完了まで油断できません。


公告期間満了前の弁済の拒絶(第928条)

(公告期間満了前の弁済の拒絶)
第九百二十八条
限定承認者は、前条第1項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。

この条文からしばらくは債権者寄りの条文になります。限定承認を公平に行うために、官報掲載期間の2ヶ月間はお手紙を送った債権者から拒まれる場合もあります。一方的に裁判所に受理されたから関係者に対して限定承認を通します。これは通用しません🙅


公告期間満了後の弁済(第929条)

(公告期間満了後の弁済)
第九百二十九条 
第九百二十七条第1項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産をもって、その期間内に同項の申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。

2ヶ月間の官報掲載が終わった後は、債権者に対して弁済しなければなりません。債権者が一社の場合計算は比較的簡単ですが、複数社ある場合は按分計算が難しくなります。

裁判所への限定承認の申述書の提出は誰が出しても受理されますが、自分で手続きをしようと思っても進むとこのような複雑な按分計算で詰みます。実際、ここまで自力で進んで専門家に駆け込む方も少なくないようです。

ならば、最初から一貫して専門家に依頼したほうが合理的です❣️


期限前の債務等の弁済(民法930条)

(期限前の債務等の弁済)
第九百三十条 
1 限定承認者は、弁済期に至らない債権であっても、前条の規定に従って弁済をしなければならない。
2 条件付きの債権又は存続期間の不確定な債権は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って弁済をしなければならない。

現金や有価証券、不動産以外のものに注意
👉動産、貴金属類:自動車、宝石、絵画など
👉権利証書類:借地権、借家権、知的財産権など
👉その他:ゴルフ会員権、立竹木など

これらは、裁判所が選任した鑑定人の評価額によって故人の相続財産になります。間違えて限定承認の精算手続きから除外しないように注意です。ここで失敗しても単純承認になる可能性があります💩


受遺者に対する弁済(民法931条)

(受遺者に対する弁済)
第九百三十一条 限定承認者は、前二条の規定に従って各相続債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。

ここの条文も専門家の皆様で解釈に違いがあります。よくありがちな専門家さんの解釈は、相続財産よりも負債の方が大きい場合、弁済ができないから限定承認が使えないという解釈の先生方が大多数。

実際、私のケースでは財産よりも明らかに負債の方が多かったのですが…限定承認は通りました。この解釈はごく一部の士業の先生がご存知でした。

リアル知人弁護士へ「限定承認通す」って話したら「そいつは本当に弁護士か?大丈夫か?」と心配されたこともあります。心配してもらえることは有難いですが…🙀

私が記事を書くきっかけになった理由がまさにこれで。この解釈を発信したくて素人体験談を書いています🐱🌈


弁済のための相続財産の換価(民法932条)

(弁済のための相続財産の換価)
第九百三十二条 前三条の規定に従って弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付さなければならない。ただし、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる。

ここには競売と書いていますが実際は必要な財産を残すため相続人が先買権の行使するための条文です。プラスの財産の範囲で残したいものを相続が買取るイメージでしょうか。


相続債権者等の換価手続きへの参加(民法933条)

(相続債権者及び受遺者の換価手続への参加)
第九百三十三条 相続債権者及び受遺者は、自己の費用で、相続財産の競売又は鑑定に参加することができる。この場合においては、第二百六十条第二項の規定を準用する。

財産よりも債務超過していましたが…
先買権の行使で…残せました…よ…

👉限定承認手続における換価方法
👉任意売却での処理
👉先買権とは?
👉先買権を利用した任意売却


不当な弁済による限定承認者の責任(民法934条)

(不当な弁済をした限定承認者の責任等)
第九百三十四条 
1 限定承認者は、第九百二十七条の公告若しくは催告をすることを怠り、又は同条第一項の期間内に相続債権者若しくは受遺者に弁済をしたことによって他の相続債権者若しくは受遺者に弁済をすることができなくなったときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。第九百二十九条から第九百三十一条までの規定に違反して弁済をしたときも、同様とする。
2 前項の規定は、情を知って不当に弁済を受けた相続債権者又は受遺者に対する他の相続債権者又は受遺者の求償を妨げない。
3 第七百二十四条の規定は、前二項の場合について準用する。

平たく言うと、手続きをひとつでも間違えたり記載漏れがあったりすると単純承認になります。限定承認はいつでも不備があれば債権者にひっくり返されるものだと思っておいたほうが良いと思います。じゃないと公平じゃありません。


公告期間内に申し出なかった相続債権者等(民法935条)

(公告期間内に申出をしなかった相続債権者及び受遺者)
第九百三十五条 第九百二十七条第一項の期間内に同項の申出をしなかった相続債権者及び受遺者で限定承認者に知れなかったものは、残余財産についてのみその権利を行使することができる。ただし、相続財産について特別担保を有する者は、この限りでない。

2ヶ月間の官報掲載期間に申し出ることがなかった債権者の扱いについて。


相続人が複数人いる場合の相続財産清算人(民法936条)

(相続人が数人ある場合の相続財産の清算人)
第九百三十六条 
1 相続人が数人ある場合には、家庭裁判所は、相続人の中から、相続財産の清算人を選任しなければならない。
2 前項の相続財産の清算人は、相続人のために、これに代わって、相続財産の管理及び債務の弁済に必要な一切の行為をする。
3 第九百二十六条から前条までの規定は、第一項の相続財産の清算人について準用する。この場合において、第九百二十七条第一項中「限定承認をした後五日以内」とあるのは、「その相続財産の清算人の選任があった後十日以内」と読み替えるものとする。

ここにきて最初に裁判所に提出する限定承認の申述書のお話に戻ります。限定承認を受ける場合、私のように単独で行う場合と複数人で行う場合があります。前者と後者ではルールが若干変わります。

複数人で行う場合、申述書に誰が代表になるか、もしくはどの先生に委任したか記載するとこの条文はあまり関係ないと思います。
私の場合は弁護士の先生に一任したため、特に精算用の口座は作りませんでした。

精算用の口座のお話についてはこちらの記事をどうぞ。限定承認では財産を1箇所に固めて精算していきます💵


法定単純承認の事由がある場合の相続債権者(民法937条)

(法定単純承認の事由がある場合の相続債権者)
第九百三十七条 限定承認をした共同相続人の一人又は数人について第九百二十一条第一号又は第三号に掲げる事由があるときは、相続債権者は、相続財産をもって弁済を受けることができなかった債権額について、当該共同相続人に対し、その相続分に応じて権利を行使することができる。

これは債権者保護のため、限定承認の前に財産を処理していたり、財産を隠していた場合限定承認ではなく単純承認になって債務の弁済義務が発生しますよって条文。相続分に応じてとはいえ当たり前ですね。踏倒し、逃げ得なんてありえません💩


まとめ

限定承認は実務をご存知な専門家に依頼しましょう。素人の野良猫の戯言なので、ご参考まで。少しでも限定承認が使いやすくなるように願って🥰

Cat007🐱🌈

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