餃子とライス

 餃子の店にはライス※もある。これは間違いないと言っていいだろう。餃子と一緒にライスを食べると美味しいからだ。そうだそうだ。 
 いや待て。なぜ餃子と一緒にライスを食べると美味しいのだろうか? その理由を求めるべく私は黄河の源流へと向かった……。(※この記事では「ごはん」「白米」のことを全て統一して「ライス」と表記します。これが本当の米印。)

 そもそも餃子というのは、刻んだ野菜や肉をこねた餡を小麦粉で出来た丸い皮で包んで蒸し焼く料理である。つまり素材の構成要素は大まかに分けると、

・小麦粉
・野菜(白菜、キャベツ、ニラ、ニンニク、タマネギなど)
・肉(牛、豚など)

ということになる。これらが組み合わさって出来る餃子は、ライスとの相性が良い。では、もしこれらの材料を用いた料理が他にあるとしたら、それはライスに合うということなのだろうか。そう考え始めた瞬間に想起されたものがある。お好み焼きだ。
 お好み焼きと言えば、小麦粉を溶いた生地に刻んだキャベツや豚肉を混ぜ、円盤状に広げて焼く料理である。構成要素は、小麦粉・野菜・肉。餃子と一致している。
 しかしこのお好み焼きという料理、ライスに合うと言えるだろうか。「合う!」と胸を張って言える人々が存在することは知っている。知っているが、残念ながらあなた方は少数派だ。お好み焼き屋でライスがなかったために肩を落とす人はほとんどいない。お好み焼きの供にライスは求められていないのだ。考えてみれば、小麦粉とライスはともに炭水化物であり、これらの相性が良いことの方が奇跡なのかもしれない。
 小麦粉・野菜・肉の組み合わせがライス相手に苦戦することがあると分かったところで、この三要素がそれぞれ具材として主張されるほかの料理も挙げて、ライスに合うかどうかを分けてみた。

 【ライスに合う】
・餃子
・すいとん(汁物は反則に近く、これはライスの代わりにさえなる)
 【ライスに合わない】
・お好み焼き
・ピザ(欧米の主食)
・サンドイッチ(洋の主食)
・ハンバーガー(アメリカの主食)
・タコス(メキシコの主食)

 なんと、今の私にはこれだけしか思いつけない。絶対にもっとある気がする。しかしこれだけでも分かったのは、小麦粉は往々にして主食になるということだ。餃子のような例の方が珍しいのかもしれない。
 なぜ餃子だけはライスと合うのか。私は途中から気づいていた。鍵を握るのはおそらく、餃子に最終的な味をつける醤油の存在である。
 醤油は、もはやライスに垂らすだけでパクパクいけてしまう調味料だ。そのパワーは小麦粉にも屈せず、餃子をライスの供たらしめている。小麦粉と肉で構成されるシュウマイだって醤油につけて食えばライスとの相性バツグンではないか。もはや日本人はライスを食べるために醤油を用いている可能性まで考えられる。もしかしたら餃子も中国ではライスと合わせずそれだけで主食となっているかもしれない。
 醤油に着目したところで、お好み焼きがライスとの相性に難ありな理由も見えてきた。お好み焼きに味をつける調味料はソースである。ソースは甘みが強い。ライス自体が甘みであるのにソースの甘みも加わったらくどく感じるのも無理はないというわけだ。そうか。そういうことだったのか。あれ、じゃあトンカツは?
 
 餃子の話ではなくなってしまった。最終的にはライスと調味料の相性の話である。こんなつもりではなかった。
 私は餃子が好きだ。その餃子の良さを見いだそうとしたはずだったのだ。しかしこれではまだ餃子の魅力に光を当てられていない。悔しい。
 満足できない私は、餃子の真価を追究するため長江の源流へと向かった……。

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