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小さきものは、みなうつくし——櫻坂46 3rd TOUR 2023@東京Day1

2023年入ってようやく初ライブ参戦。櫻坂のフルサイズとしては初めての声出しOKライブ。すでに初日のセットリストがレポートされている様子だが、今回は、オープニングの「Reload」が示すとおり、コールあり環境でこの曲やったらどうなる? を一つずつ確かめていくようなセットリストだったのではと思う。また、センター一人ひとりをフィーチャーした演出があるのも「Reload」にかけているのかな。「Reset」でも「Restart」でもなく「Reload」。積み上げたものは実績のまま、再読み込みして、キャッシュを削除して更新する。

今回よかったと思ったのは既存メンバーでは幸阪だ。配信でも初期からわりとアップを抜かれる印象だったが、昨年ツアー後半ぐらいから、ダンスの練度が上がってきたからか、ステージパフォーマンスに自信がついてきたからか、実のともなった変化が現れてきていると思う。ぱっと見、同じ低身長の森田と見間違えるくらいになってきた、といったらいいすぎだろうか。

そして、武元はやっぱりダンス番長だ。櫻坂的なダンスという枠では小林・小池とかになるんだろうけど、武元は単純に「この子すごい!」という魅せるダンスをしていると思う。今回も群舞の中にいながら「今の誰!?」と思ったら武元だった、という瞬間がいくつもあった。

藤吉・山﨑は独自のオーラをさらに強くしている。この二人は5thシングルのミニライブ配信でも異彩を放っていたが、ある意味『摩擦係数』の理性と野生を地でいってる感じ。森田はどちらかというと理性のほうで、野生は藤吉だ。『One-way stairs』もそういう対比だと思う。藤吉はセンターよりソロ曲が似合うかもしれない。

楽曲で一番コールが湧いたのはもちろん『夏の近道』(もうひとつは『ブルームーンキス』)。曲中ずーっとコールが続いてる感じで、ここだけ別グループのライブみたいだった。そして『Dead end』。三期が既存曲やるなら『マイクロスコープ』とかカワイイ系かなと思っていたら真逆だった。センターは村井。三期生の最大出力を発揮するなら、適任だろう。ラストパートは谷口・山下がフロントに加わって、さらにブーストされた。三期生も低身長グループの谷口、村井、山下がパフォーマンスの中心になる。山下は全メンバーで体格的に一番小さく見えるのに、すでにオーラが出てる感じがする。“京都の妖精”を名乗ってもいいと思う。現時点では谷口・村井と比べてセンター性がまだ低いと思うけど、リアルで見ると、人気があるのが実感できる。
一期・二期なら遠目でもだいたい誰かわかるけど、三期はまだすぐに判別できないのがもどかしい。そのなかでも、的野・村山のフロントコンビはダンスに個性があってわかりやすいかも。ツアー中にもっと三期の出番が増えるといいな。

最大のハイライトは『桜月』だ。これまでもMVやテレビ、配信で観てきたけど、リアルで体験してここまで印象が変わる曲はなかったかもしれない。それはセンター守屋のフィルター的属性に依るものと思う。この手の楽曲、たとえば『偶然の答え』は主人公とコロス(ギリシャ悲劇のコーラス隊)というか、センターに集中していく求心的な楽曲といえる。『五月雨よ』は、Aメロ・Bメロと歌割りが変わっていくに従い世界が広がっていくのは『桜月』と同じだけど、山﨑のソロパートが強くて、やはりセンターに収斂されていく構成になっていると思う。それに対し『桜月』は、守屋はもちろん主人公なんだけど、12人のメンバーはコロスでもあり主人公たちであるという重層的な役割を担っている。大きくは、守屋(と小池・小林)、田村・森田、大園・藤吉・山﨑、土生・増本・松田、井上・武元の5つの人格・物語がずっと描かれていて(歌詞は一人称だけど)、さらに守屋の中で小池・小林の人格が出てきて、どんどん重層化していき、大サビで振りも大きく動いてブレイクするあたりで、人格・物語がバラバラのまま一度消尽してしまう。そして守屋のソロパートから再び物語たちが息を吹き返して「あんなに美しい散り方ができたらな」でフリーで踊るところからラスサビに入るところで一気に統合されて、感情が揺さぶられたまま、相当の余韻を残したまま不意に終わるのだ。リアルで体験すると、この楽曲がものすごいダイナミズムを体現していることがビシビシと伝わってくる。個々の輝きを放つメンバーの中心に自然体で存在できる守屋は、今の櫻坂に適任のセンターなのかもしれない。そして、守屋も小さきものだ。

あと、ちょっとよかったのは『Buddies』ラストで森田・大園の変則カンパイ(小池はさんで、正面に向かって乾杯してたと思う)が見れたことかな。

次回参戦はツアーラストの大阪。そのとき、会長はもういないんだな。


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