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ボケてもいいよ?

と言われた。
We love 赤ちゃんプロジェクトというステキなキャンペーンで「泣いてもいいよ」というステッカーがあって、それを褒め称える記事をFBに書いた友人が、お年寄り向けに「ボケてもいいよ」というステッカーもできるといい、と書いていたのだ。

その人は本気で書いているのだ。
赤ちゃんがどこで泣いてもママが気にしなくていい社会。認知症の老人にも優しい社会。そうなるといいな、と、それが「泣いてもいいよ」と「ボケてもいいよ」で実現すると、なんてステキなアイデア!みんなもそう思うよね?ぐらいの感じで、本気で思っているのだ。

その人は50代だ。認知症患者が痴呆、ボケ老人と呼ばれていた時代をちゃんと知っていて、認知症から症を省いて「あの人認知だから」と言うだけで差別的と取る人もいるこの時代に、すごいカジュアルに「ボケてもいいよ」とボケてない側がいうのが「優しさ」になると本気で言っているのだ。一周周って「ボケてる」が親しみある言葉になる日がくるかもしれないけどそれは今じゃない。もっともっと先の話だ。

「わたしボケてます」と認知症の人がいうのはいい。けど旧知の仲でも「最近ボケの具合はどうですか?」なんて絶対聞けない、そういう肌感覚が全くない。恐ろしい。そんな50代、恐ろしい。デブって自称する人をデブと呼ぶのは非常識、それと当たり前のことが、なぜわからないのか。

あと「泣いていいよ」だから「ボケていいよ」で救われると思ってるのも怖い。赤ちゃんが泣くのは健やかな証拠で、うるさいと咎める人に気を遣わざるを得ないお母さんに「いいよ」と言うから優しいのだ。でも「ボケる」のは健全ですか?当たり前ですか?認知「症」というくらいだから病気じゃないですか。しかも不治かついずれ死に至る病ですよ。認知症と診断された時点で、それまで大人として認められていた当たり前の自由がかなり認められなくなる。だって危ないから。そういう病気だから。悲しいですよ。自分は正しいと思いたいのに間違ってるといわれ、おかしいといわれ、どこかで「そのとおり」と自分も思っている。さっきやったことがすぐわからなくなる。昨日できたことが今日できなくなる。そんな病、なって「いい」も悪いもないですよ。「なりたくない」。誰だってそう思うでしょう。おまえが認知症患者をどう考えているかなんて一切知らん。どうでもいい。なのに、なんでお前が「いいよ」といってくるのか?何様?なんの権利があって許可あたえてくるんですか?

それってお前以外の誰が気持ちいいの?

と、うわああああ!と突き上げてきたので、そのFBの投稿に
「もっと柔らかい言葉がいいなw」とコメントしたんですよ。もうそれが譲れる精一杯、看過はできない。それで気づけ!と思ったら、なんか揚げ足取ったみたいに思われたようで、もやっとした文言とともに「お年を召してもいいですよ」はどうか、とレスがきた。またもや冗談みたいだけど本気だ。年取ってもいいよ、というのを敬語で言えば優しく言ってることになる、と50も超えた大人が言っているのだ。政治活動やら市民運動やらに熱心で、記者としての勉強もしたらしい。そんな人が、本気で言っているのだ。

「ボケてもいいよ」がダメなら「お年を召してもいいですよ」でどうか、と。

年は取りたくなくても勝手にとるんだよ。許可与えられたって「けっこうです」て言えるなら言いたいよ。って自分が一番そう思ってるんじゃないの?お年を召してもいいですよって言われたら、今すぐババアとして生きていけるの?


その後も一歩も引かぬやりとりが続いているうちに「みんながハードル低く助けてって言えるような、お互い助け合えるような優しさを表したかった云々」と書いてこられたときに、本当に嫌になった。だから、「ボケるは侮蔑的表現だから優しさと真逆の印象を与える、と認知症患者の家族としていいたい」ともうはっきり書いた。

最初からそう書けばよかった。


ボケ老人とか痴呆とかが侮蔑的な意味があるから、わざわざ「認知症」と新しい名称を作ったわけじゃないですか。わりと最近の話だから、別に私が認知症患者の家族だからとりわけ詳しいわけじゃなく、一般的な、常識的な知識だと思うんですよ。
だから、そんな基本的なことをわざわざ書くのは、それこそ角がたつと思ったんですよ。なのに、結局言わなきゃならない。その人はほんとにそういう、言葉に対して感度が劇的に鈍いところがあって、たまにものすごい勢いで私の地雷を踏んでいく。踏まれたから不機嫌になったらむこうは踏んだ自覚がないから逆ギレてくるし、不機嫌のループにはまってしまうので、ある日「今地雷ふみました」とちゃんと言ったらやっと通じた。だから、またこんな軽やかに、大きな地雷を踏まれるとは、そしてまた「なにがわるいの?」みたいな態度で来られるとは思わなかった。


おもわなかったわー
超モヤモヤする!土曜日の夜なのに!!


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