Dのわがままと悪事 #3

仕事でうまくいかないことが重なる時がある。そんなときは誰かに優しくされたい、癒やしてもらいたい、そんなちっぽけな願望が頭をよぎる。

そんなときに都合のよい彼女からの連絡をみると、いつもは無視するもののつい応答してしまった。しかし、今日も夜に接待の飲みが入っている。僕のことを好きならば何時であっても合わせてくれるだろうか。結局、接待は12時過ぎに終わり、彼女と連絡がつくかわからないが、例のバーにタクシーで向かう。

タクシーに乗りながらどこにいるか連絡する

「もう、電車で帰るとこ」

そうか、なら一人で行きつけのバーで軽く飲んで帰ればいい。

「帰ってもいいし、そのへんにいてもよいです」

自分でもよくわからない返事をしてしまった。

接待で飲んだ酒ですでにベロベロだ。

彼女に会いたい訳でもない。眠いし、セックスする元気もない。

「帰るのたるいから、待ってるよ タクシーで帰るか、その辺一人で泊まってもいいし」

明日休みなのか職業柄なのか性格なのか自由人だ

「じゃ、新宿の〇〇の前で」
「了解」

僕らは一体何をやっているのだろう。

タクシーの運転手に目的より遠いところに降ろされてしまい、待ち合わせ場所に向かう。

「おー、久しぶり」

「どのくらいぶりですかね」

「3年ぶりかな?何時に帰りたいの?」

「今すぐに」

疲れているし、眠いのだ

じゃ、なぜこんなことになっているんだ

「今来てそれ?とりあえずどっか行こーよ」

なんで僕はこんな女と会ってるんだ

一人で静かに飲むためにタクシーで移動してきたんじゃないのか

部屋に入れば、無言で唇をむさぼり合う

彼女の手が舌が耳から首筋、胸に下りてくる

「なんかあったの?」

確かに子供が産まれたあとは完全にセックスレスだ。
家政婦としては優秀だが、たるんだ身体、気を使わない身だしなみでもう女とは見れない。

「べつに」

喘ぎ交じりに答える。

彼女はんー?という表情をする。

気持ち良すぎて言葉がでない。
自分の普段はださないような喘ぎ声が部屋に響く。

人肌が触れるのが心地よい。

唇を重ねて、耳を舐められ、声が漏れる

満足そうにしつつも彼女は寂しそうに言った。

「相変わらず良い声でなくねえ、でも好きになりたくはなかった 自覚したくなかった」

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