『天外者』、『ブレイブ-群青戦記-』、そして三浦春馬さん

2002年の映画『森の学校』が注目されている。

舞台となった丹波篠山の近くに生まれ育った筆者にとっては、作品が描き出す内容は、時代がちがうものの、かなり身近な光景だった。

家には原作の本があったし、「いい映画だから」と勧められて、小学生のうちに2度『森の学校』をみた。


三浦春馬さんを再認識したのは、筆者が高校生の頃だった。

剣道少年だった筆者の前に、『サムライ・ハイスクール』というテレビドラマが出現した。

三浦春馬さん演じる気弱な主人公に、あるきっかけでサムライが乗り移り、とても強く、かっこよくなってしまうというお話。

当時の筆者にはとてもセンセーショナルで、「俺にも最強の侍が乗り移ってきたらええのに…」と、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ思ってしまった。


そんな経緯もありまして、観ない理由はないと思っていた出演作を観てきた。

亡くなられてから公開された映画というところもあって、台本と演出とはいえ、セリフと動きに重みを感じられた。


『天外者』は、五代友厚の話。

冒頭で、橋の上で身投げしようとする女を、三浦春馬さん演じる五代が助ける場面ー

「命を粗末にするな!」

筆者、うぐっ。


『ブレイブ-群青戦記-』は、高校生が戦国時代にタイムスリップしてしまう話。

三浦春馬さん演じる松平元康(のちの徳川家康)から織田信長の砦を攻めるよう命じられた高校生に尋ねる場面ー

「わしは先の世(未来)ではどうなっておる?」

筆者、ぐはぁ。


しかも、答えようとする高校生を制して、元康はいうのだ。

それを聞いてしまえば、楽しみがなくなるから聞くのは止そうと。

筆者、ばたり。


普通なら何でもないただの一場面だったかもしれない。

しかし、三浦春馬さんのセリフであったことが筆者にとてつもないダメージを与えた。

ひとつのセリフが、それだけ重みをもって、筆者の心に刻み込まれてしまった。


非常に辛く感じられることではあるが、しかし、公開してすぐに劇場でみた作品だからこそ、こういう気持ちを感じられたのかもしれないということもある。

例えば、1年後に動画配信されたものを見る人は、少なくとも劇場に足を運ぶほどには熱烈なファンでない人だろう。

同様に、10年後に見る人には、晩年の出演作だったということは調べなければわからないだろうし、若者にとっては、それまでメディアで目にしたことのない役者だということも起こりうるはずだ。

だからこそ、ある意味リアルタイムで、この2作品を見れたことは、新鮮な体験であったといえる。


三浦春馬さんは身のこなしがとても作品に馴染んでいた。

『サムライ・ハイスクール』のときなど、普通の高校生と、サムライが乗り移ったときの様子が、身のこなしだけで一発でわかるほど、動きが素晴らしかった。

(サムライは、歩くときに前に出る足と同じ方の肩が出る、ナンバ歩きにも通じる)

その身のこなしは、『天外者』『ブレイブ-群青戦記-』においても健在であった。

完成度へのこだわりが感じられる、名演者だったと思う。

それがもう新しく見ることができないというのは、とても悲しいことというほかない。


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