学びのあった2019年暮れの読書

もうですね、三十代も終わりに近づくと肉体的な衰えが顕著で、ウェブ記事を読むのも目に負担がかかってくるわけですよ。インターネッツの仕事をしているのに、スマホ見るのがツラくなってきまして、最近の読書は紙です。

紙の書籍は良いですね、読んでて疲れない。疲れないので冊数をこなせる。沢山読めるので、今さら学びが多い。学びが多いので共有させてください。

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00年代のイノベーションのジレンマ

Netflix創業から2012年頃までのお話。店舗型DVDレンタルサービスのブロックバスター(日本で言えばTSUTAYA?)との熾烈な戦いを、Netflixとブロックバスター、双方の視点で描いているのがおもしろい。Netflixが困難に喘いでいた一方そのころブロックバスターは、というように視点が入れ替わり歴史をなぞっていく。Netflixの創業がDVDの通信レンタルっていうのも興味深いですね。
なるほど、こうしてイノベーションのジレンマに陥るのかという実例を以って知ることができる、という点で学びがありました。

ウェブメディア、ニュースのお作法 成立史

同僚らが、なんのコンセンサスも無くこの本を読んでる前提で会話し出すので困る。で、とりあえず読んでみたのですが、そこにはリアルな肉声を感じるメディア史があって面白かったですねぇ。このへんの話とかおもしろい。

ヤフー「新聞社の記事でPV集めたサイトに広告載せて儲かってるンゴ!」
読売「気に食わねぇから配信やめるわ」
孫さん「っちょwww まwww 50億出す」
読売の記事提供料が、毎日の倍額、地方紙の10倍になりました。

「2050年のメディア」でもイノベーションのジレンマを学べますが、それよりも、今に至るウェブニュースメディアのお作法であるとか、暗黙のルールとかがどのように生まれ浸透してきたのか、(それは結局、読み合いと、泥臭い折衝、それからメディアとしての矜持であるとか、それら全てのぶつかり合いを繰り返し生まれてくるのですが)というコンテクストを理解する本として学びがあります。

マーケティング脳をつくるための概論

新刊ではありません、勧められて読んでみました。重要なところを要約すると次の通りです。

消費者は、購入対象をエボークト・セット(Evoked Set)から選択する。エボークト・セットとは、購入検討の対象として頭の中に思い出すブランドの組み合わせ。通常は3個~5個程度が含まれる。過去の購入経験から、買ってもよいと思ういくつかのブランドの候補が既にあり、その中からそのとき買うブランドをランダムに選んでいる。
(僕の場合、コンビニでビールを買うならキリン一番搾りか、サントリープレモル。次点でサッポロ黒ラベルかエビス。)
エボークト・セットから、この一つ、と決め手になるのは、「プレファレンス(Preference)」である。プレファレンスとは、消費者のブランドに対する相対的な好意度、選好性。
エボークト・セットのなかでプレファレンスが高いものが選択される。(スッキリ飲みたいからプレモル、今日はコクを味わいたいから一番搾り、外で紙コップならスーパドライかな、みたいな)
プレファレンスは、ブランド・エクイティと言いかえることもできる。ブランドの資産。そのブランドが持つポジション的な優位性。花王の「アタック」なら「驚きの白さ」みたいな強み。(これに本当の白さは除菌もできることだ、とぶつけたのがP&Gのアリエール)
なお、プレファレンスは、ブランド・エクイティのほかプロダクトのパフォーマンスそのものや、価格的な優位性などの含んだ全体の概念。
ゆえに、プレファレンスをつくり高めること、そしてプレファレンスが効く対象範囲(想定ユーザー層)を広く取ることがマーケティングの常道。

8章までありますが、1-3章までが結論で、後ろは論拠なので3章迄を読むでも良いかも。マーケティングの基本の考え方みたいなことが書いてあって勉強になりました。マーケッター以外の職域の方が読んだほうが良いんじゃないだろうか、概論理解として。

ロジカルなマーケティング実践論

読後感の印象は、「確率思考の戦略論」が概論の書である一方で、「顧客起点マーケティング」は実践論という感じです。顧客マッピングの手法が、いちいちロジカルです。顧客ピラミッドのつくり方と、ピラミッドにパレートの法則やキャズム理論をかけ合わせる見方なんかは既視感ありますが、さらに理論を組み合わせてセグメントマップを用意し、マーケティングコストを投下するための費用対効果を設定する方法は、そうかそうかと納得が大きく学びがありました。
ただし、これ、僕の場合、一回読んだだけでは半分も理解できませんでした。書いてあることを理解は出来るが、咀嚼が難しいというか。何度か繰り返して読んで馴染んでいくタイプの本ですね。

関心のつくり方、話題の起こし方

プロレスは興行ですから、プロレス団体は恒久的に耳目を集めなければならない宿命と共にあります。ならば如何にして話題をつくるか、人々の関心を集めるのか、プロモーターとしても超一流であるアントニオ猪木の手腕を知るための一冊として読むと、途端に広告、マーケティング的な指南書になります。
1974年とは、猪木が異種格闘技戦をぶち上げて、ルスカ戦、アリ戦、パク戦、ペールワン戦を戦い抜いた、プロレス史におけるターニング・ポイント的な1年。特にモハメド・アリ戦においては、アントニオ猪木同様、超一流のパフォーマーであるアリが、どのように自らを演出しスーパースターになったのか、なんていう話も読めて、やはり学びある一冊でした。(関心のつくり方、話題作りの手法自体はネタバレになるので伏せます)

新しい組織のつくり方

そうなんですよね、ただ昭和のプロレス史が好きなだけなんですが。
1984年とは、第1次UWF立ち上げの年です。新日本プロレスという巨大組織からスピンアウトして前田日明がUWFの代表になった年、未知の荒波へ飛び込んでいった年です。1984.4.11 大宮スケートセンターなわけです、「選ばれし者の恍惚と不安と二つ我にあり」の年ですよ。ですから、(ですから?)2019年の昨年、組織を流転した僕が、新組織を創設しどのように編成してゆくべきか活路を開くために手にとりました。
やはり、人が多く集まったらそのつながりを強固にするのはイデオロギーなのである、という、まあ、そうだよね、ってことがノンフィクションとして書いているわけです。それだけでも組織論視点で読んで学べる訳ですが、ご存知の通り、第1次UWFから続くU系譜のレスラーは皆キャラクター揃いですので、アンサンブル・プレイとして読んでも楽しめます。

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ちなみに自分で購入して読んだ本は、読了後すべてメルカリで売りました。読んだら手放す、いま読んでいる本は常に1冊に留めておいてパラレルで読まない、というルールを作ってみたら、だいぶ積ん読を消化することができました。


このエントリを書いた人:マメ比久造 a.k.a 阿部
コーヒー豆にほっそーいお湯を垂らしたくて、トランギアのケトルのさきっちょにつける「sosogu」を購入しました。Instagramで造り手を探してコンバージョンするとか今っぽいな、と思いました。

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