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Blanca's Dress まずは試作からスタート

私のところにアンティークドールがやって来るなんて、それは自分さえも驚くような出来事でした。それもこれも、ある日、気がついてしまったから。

文章中のアンティークドールの描写、持っているなけなしの知識を総動員してイメージを膨らませていたんですが、どうしてもダメだったんです。いくら想像したところで重さも堅さも温度も感じられない、しっくりこない。空想でこれ以上は無理だとついに白旗を揚げました。

そこで資料として求めることに。色々と調べていきついたのは、陶器製の胸部(頭部・手足)を持つ人形・パリアンドール。それをオークションで買うことに決めました。

最初は淡々としたものでしたが、同じ年代のババリアンチャイナコレクターとしてはどうも心揺さぶられるものがあったようです。私は徐々に、初めて見た白い肌(これがパリアンの名の由来)に編み込みの金髪、青い目の人形たちに夢中になっていきました。しかしこの金髪のパリアンドール、実はレアなコレクターズアイテムだったんです。

だからどうしてもバイヤーと競ることになる。もちろん、予算も経験も豊富な彼らに敵うわけがありません。いたずらに価格を釣り上げる片棒を担いだ挙げ句、最後の数秒で手の出ない金額を打ち込まれてノックアウトの繰り返し。数度叩きのめされた後、はと気がつきました。なにをしてるんでしょうか私は!

抱いた感触等が大切なわけであって、人形のコレクションを増やすわけではないんです。レアにこだわってどうする!私はオークションではなく、即売の表示が出ている同じ年代の人形を探すことにしました。黒髪に青い目の子がたくさんいました。彼女たちはパリアンではなくチャイナヘッドドールと分類されていました(まだ勉強不足なのでその違いは説明できません)。

ああ、これが一般的なのね、みんなが持ってたものなのね、そう思うとぐっとテンションが下がりそうでしたが、よくよく見れば彼女たちもみな、とても個性的でした。色彩(黒髪・青い目・バラ色の頬)は同じでも、顔の作り、パーツのあれこれこれが全く違うのです。

人形は顔が命、だなんてどこかで聞いた台詞ですが、まさにです。好みと言うのはやっぱり馬鹿にはできませんね。気持ちの入り込みようが違います。私は気になったものを一つ一つ丁寧に見比べていきました。

そして最後に残った彼女は・・・ドレスを着ていませんでした。けれど穿いているペチコートは手作りでずいぶん繊細なものでしたし、なによりもそのうっすらと微笑んだような表情と綺麗な眉が他の追随を許しませんでした。

好きなお洋服を作ってあげればいいのよ、と言ってくれた親友の言葉を思い出し私は決めました。ドレスがなかったからでしょうか、価格はなんと最初の予算の1/3でした。その分ドレス作りに情熱をかけるわ!と思わず彼女に約束してしまいした(笑)。

そういうわけで当初の目的(作品のための資料)とは少々方向性が変わってきましたが、私はこの取引に想像以上の満足感を覚えました。こうして彼女は我が家へやってきたのです。その時のお話はこちら。

私は彼女を Blanca/ブランカ と名付けました。スペイン語で白という意味ですが、彼女の生まれ故郷のドイツでも人気のある女性名です。真っ白な肌が、春に咲く大好きなノイバラの花を想わせることも決め手でした。

と前置きが随分長くなりましたが、いよいよドレス作り開始です。かつて雑誌の撮影で小さなミニチュアに衣装を作ったことがありますが、今回は向き合う大きさが違います。ブランカは18インチ(45cm)あるのです。適当なものでは通用しないでしょう。私は素直に検索を開始し、ドールドレスの型紙なるものを見つけました。

18インチの人形の代表と言えば、小さな女の子たちが大事そうに小脇に抱えるこれ、アメリカンガールです。ブランカとのパーツの大きさの違いは明白でしたが、人形の服作りなど素人も同然の私にとって型紙は神。手順やスタイルなど、なくてはならない情報が満載です。それに、ベースがあれば後々アレンジもできるわけですから。今回は上段の一番右のドレスとエプロンのようなものを作ろうと思いました。

開けてまず、この嘘のように薄い型紙に驚かされました。そっと扱わないとすぐに破れそうです。これでは作業もままならないと思い、まずは第二の型紙を取ることから始めました。その時のお話はこちら。


新しい型紙を基に作業を続けます。・・・すいません、お人形服なめてました。なんでしょうか、このギャザーの多さは。選んだものがクラシックなスタイルだからかもしれませんが、肩のギャザー、袖口のギャザー、ウエストのギャザー、裾のラッフル。こんなにギャザーを寄せたことは私のソーイング経験上一度もありません。

ああ、ドールドレス恐るべし。さらにはこれがまたなんともごっつくてうまく散らばせられないのです(選んだ布の厚みにもよるのでしょうけれど)。ブランカの穿いているペチコートに寄せられたギャザーの繊細さに、改めて敬服しました。

そうこうしながらも数日でドレスはできあがりましたが、やはり大きすぎました。ちょっと摘めば、どころではありません。甘かったですね、私。寄せてまくり上げて(袖口なんて随分下で使い物になりませんでしたから)ついには別物になってしまいました。

エプロンもどきなんて、このままの大きさでは絶対縫わない方がいい。そう、これでもかの横幅なんです。それなのにドレスから足首が見えるだなんて・・・。ブランカの顔が小さいくて足が長いということなんですが、今後のドレス作りを思うと、嬉しいやら悲しいやら。

それでもブルーのリボンでウエストを調整し、胸元に白バラのコサージュを付ければ見られるようにはなりました。袖はかなりまくり上げていますからこのあとどうにかしなければいけませんが、それよりもさらにどうにかしなければいけないこと、、、そう、それは型紙のやり直しです。

これはもう、とことん直すしかありません。できあがったものを毎回、寄せたりまくり上げたりするわけにはいきませんからね。選んだ生地を活かすためにも、ここで頑張るしかないわけです。

ということでえ〜い、なるようになれ!と言わんばかりに(立体ものが本当に不得意なので)ザクザクとオリジナルの型紙を切り刻みながら、とにかく勢いで仕上げました。一応形にはなっていますが、果たして出来上がりはどうなることやら。

まだまだ手探り状態ですから(初回よりもさらに不透明さを増しているという不甲斐なさ、涙)布を無駄にすることはできません。微調整も多いかもしれませんから、手持ちのさらしでいってみようかと考えています(初回もそうすべきだったねと突っ込まないで)。

そんなわけでドレス作りは波乱の幕開けとなりましたが、新しい楽しみが増えたと思って、とことん取り組んでみたいと思います。レポートの方も細々ながら、しばらく続くと思いますので、ソーイングお好きな方はどんどんコメントしてくださいね。さあ、次回は初のマイ型紙で挑戦です!

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