その2ヘッダー4

その2 次にフェンスをたてましょう

その年、最後の最後まで蕾をつけて私を喜ばせてくれたのは、
オースチンにおいて絶対的信頼のあるレディ・オブ・シャーロットでした。
絶妙なバランスで配合された、揺らめくようなオレンジのパレット。

澄んだ秋の光の中で揺れていた花も、いつしか冷たい雨の中でうなだれ、
やがてNYが本格的に秋の終わりを感じさせる頃になりました。

降りた霜に、ワイルドフラワーガーデンの花たちが縮みあがり、
ローズヒップの赤い実が震えた10月28日。
植物の動きが鈍くなったことを十分に感じて、私は秋の仕事を始めます。

並べていたブロックや鉢を脇にどかせば、むき出しの地面は寒々しく、
果たしてここに夢のような空間を作れるのかと、心配が湧き上がります。
けれど、そんな私を励ますように、大きくなったバラたちの健闘が蘇り、
まずは無心になって、地面をならしていくところからスタートです。

次に、買っておいたフェンスを運び込み、説明書を片手に位置確認。
簡単なようですが、しっかり立たせるにはなかなかの力仕事です。
それにこの地面、実はなだらかに傾斜しているという曲者。

何度も何度も測り直して、一つ一つ丁寧に地面に打ち込んでいきます。
向かって左角になる地中に、数年前に切り倒された樹齢100年ほどの木の
大きな大きな根っこが今もあり、徐々に腐っていってはいるのですが、
その岩盤ならぬ、木盤が無情にも行く手を阻みます。固い、固すぎる。
この根っことの戦いは、長く続くことになります(まだまだ進行形)。

そんな中で、フェンス自体が軽いことにずいぶんと救われました。
華奢な見栄えを重視したんですけど、結果、それで本当に良かった。
格調を求めての重量級だったら、私、完全にお手上げでした(苦笑)。

それに、そのまま放置してあったかつてのキッチンキャビネットも、
解体して移動させなければいけません。これまた力仕事の連続です。

次々と杭を打ち込んでは立ち上げ、キャビネットも叩き壊して運び、
さすがに最後のフェンス微調整は力尽きて、家族にヘルプを頼むことに。
それでもここまで頑張りました。ようやく形が見えてきて、ほっ。

すでに植えられている3本のバラたちを決して傷つけないように、
けれど離れすぎず、、、とかなり気を使ってこの作業をしましたから、
出来上がったのがもう嬉しくて嬉しくて、思わず枝を絡めてみたり(笑)。
シャーロット、健気に蕾が付いていますが、この低温では開花は無理です。
でも咲かなくてもいい、最後の最後まで見守りたい。

フェンスが立ち上がったらその中に、今度は春の球根を植えていきます。
いつかはバラで一杯になるとしても、やはり季節の花も一緒がいい。
少しでもローズガーデン内が華やかであって欲しいと願いを込めて、
原種のチューリップや小さな水仙を並べていきます。

それから、ふと思ってブラックベリーとラズベリーも下ろしました。
ずっと鉢で育てていたものですが、同じバラ科だからいいのでは、と。
この時点では、彼ら本来のたくましさ・力にまだ気がついていない私、
この後、巡ってくる春ごとに驚かされることになりますが、
奇遇にもそれは、大好きなBrambly Hedgeの世界への一歩でもありました。

球根や苗たちを守るようにマルチを敷いて、秋の作業は一旦おしまい。
実はこの脇に、新しい物置を作り始めなくてはいけません。
そちらは家族総出で、コンクリートを打ち、柱を立て、壁を作り、
床を敷き、屋根をのせて。これまた激しく力技の連続でした(涙)。
一ヶ月近くかかりましたが、無事完成。作業途中の様子を数枚。

キッチンもリビングも、床も壁も全部壊して自分たちで作り直した私たち。
物置も確かに大変ではありましたが、そんな在りし日を思えば(苦笑)。
いつかまた、そんなお話も紹介できたらと思います。

さあ、雪の予報も迫ってきました。氷点下の日々もすぐです。
真新しいフェンスゲートの鍵をしっかりとかけ、ガーデンを閉じます。
まだまだ作業は続きますが、春まで庭仕事はお休みです。

サポートありがとうございます。重病に苦しむ子供たちの英国の慈善団体Roald Dahl’s Marvellous Children’s Charityに売り上げが寄付されるバラ、ロアルド・ダールを買わせていただきたいと思います。