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Biomedical Concept その他いろいろ

Biomedical Conceptについて記事を書いたのですが、そこから漏れた話題についてまとめておこうと思います。


1. 日本のコミュニティの動き

これまでの記事ではCDISC大本営の動きを追っていますが、日本のCDISCコミュニティの一つ、CDISC Japan User GroupのSDTMチーム内にBiomedical Conceptに取り組むグループがあります。

SDTMの自動作成を念頭において活動されているようですが、その成果物の一つとして、Biomedical Conceptの検索が可能なサイトが公開されています。無料でアクセスできるので、調べてみるのもよいでしょう

Public Biomedical Concepts Repository
(https://md-eval.tsclinical.global.fujitsu.com/cdisc/public/bc)

2. Biomedical Conceptの利用方法

Biomedical Conceptの用途としては以下が挙げられます。これ以外の利用方法も将来的に発生してくるかもしれません

  1. CRFのデザイン

  2. SDTM変換プログラムのソース

  3. 異なるデータソース間の連携

  4. Define.xmlのVLMのソース

4については以下の発表が大いに参考になるでしょう。
Working with Biomedical Concepts and SDTM Dataset Specializations for Define-XML using SAS© openCST

3-1. Biomedical Conceptの課題

Biomedical Conceptには現状、次の課題があると考えています。

1. 得体が知れない

Biomedical Conceptの問題点は、今もなお、その姿が曖昧であることです。「Concept Map」と「個々の検査項目を対象としたBiomedical Concept」は、どちらもBCと言えるのでしょうか?個人的には、どちらもBiomedical Conceptであると解釈していますが、同時にこの理解に対する疑念も抱いています。
最近では「Concept層」と「Specialization層」が現れました。この区別は「詳細レベルBiomedical Concept」にはフィットするのですが、「Concept Map」になると、どのように適用されるのかよくわかりません(そもそも、この推論が適切かどうかも不明)。
『Biomedical Conceptは●●だよ』とクリアに言えた方が、普及の上では有利ではないかと思います。

2. 仕様が不安定

Biomedical conceptの歴史で少しだけ触れましたが、BCの表現形式を見直したことがありますし、2020年代に入って構成要素が変わったりと、変化が多いです。仕様が不安定だと、何かのシステムに接続しにくいので、普及には不利だと思います。「この先また変わるんじゃない?」と思われると、Biomedical conceptを使った実験も敬遠されてしまい、ユースケースがない=実用性がない=敬遠される…という悪循環が生まれてしまうかも

3. リソース量が少ない

「蓼食う虫も好き好き」と言いますが、中には実用性や将来性を度外視して、まずはBiomedical Conceptを触ってみよう!という人もいるはずです。CDISC Libraryには、Biomedical Conceptのデータが入っていて、API経由で情報を引き出すことができます。
なら「SDTM変換プログラムを作成してみる小規模実験」とか、「CRFの1モジュールだけ作ってみる」といったお試しができないでしょうか?面白そうなアイデアなのですが、CRF作成に必要なメタデータを備えたBiomedical Conceptは2024年3月時点では一つも存在していません。いわば、中身が空っぽの貯金箱のような状態です。
SDTM変換プログラムに関してみると、SDTM Specializationについても100個以下のコンセプトしか定義されておらず、情報のリポジトリとしては貧弱なコンテンツ量です。DDFプロジェクトを通じて数を充実させるようですが、いずれにせよ「量こそパワー」の一面があるので踏ん張りどころです。

3-2. 課題解決できるか?

解決についてはCDISCに委ねる他ありませんが、当サークルは次のように考えています。

1. 仕様の不安定さは諦める

全く解決になっていませんが(笑)、個々のユーザーとしては「仕様は変わっていくもの」と割り切ってしまう他はないと思います。ということで、現状のまま気にしないでおく。大規模変更があったときは、旧式のデータを(雑でもいいので)インポートする仕組みで対応しつつ、しばらくは勉強と様子見のフェーズと構えておくのが現実的と考えます。

2. リソース量の稼ぎ場所

CDISC標準の世界では、Biomedical Conceptに限らず「荒稼ぎできる場所」が存在します。臨床試験の安全性項目は、どの試験でも似通っていますし、安全性を確認しない臨床試験はほとんどないでしょう。SDTM標準・ARS標準でもそうですが、Biomedical Conceptについても、典型的な安全性項目から手を付けていくことが王道と考えます。
昔からSDTM標準に存在するドメイン・・・用途が安定していて、コミュニティの支持がある・・・こういった分野のコンセプトは利用者が多く、投資に対して得られるゲインが大きいと期待できます。パブリックレビューや実装経験からの意見も収集しやすいでしょう。
逆にSDTM標準において不安定な領域に属するコンセプトは相手にしないことも必要でしょう。一例として、遺伝子系データ(PFドメイン)・フローサイトメトリーのような試験的な領域です。

もう一つの「鉱脈」はCode Table Mappingです。定期的に更新・管理されている上に実用的な情報が詰まっています。このマッピング情報だけではBiomedical Conceptとしてはサイズ感がありませんが、コンテンツとしては非常に魅力的なので、うまく利用するべきではないかと考えます

おわりに

とりあえず、これにてBiomedical Conceptに関する記事はおしまいです。何かネタがあれば、また続きを書いてみようと思います。


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