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短編集

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140字まとめ、詩、短文、短編小説
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アラカルト詩

アラカルト詩

【一行詩アラカルト】

・あつらえた慕情の紐をほどく緩やかな指先の熱
・寂しげな背中に押し付ける今朝の甘い香り
・春の月をきつく抱き寄せて涙を降らす
・乾いたココロに絵筆を垂らした君へ
・束ねた想いの色を挿して日常を飾りたい

・茹だる頬に、食べくさしの熟れた桃
・真紅の紐を解いたひとひらの行方
・言葉の飾り付けに不慣れな本音
・食玩だった昨日までの私も見よう見まね
・変色した海に放り込んだ過去の

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短い詩 3作

短い詩 3作

・喜びの穂先に煽られて宵を受け入れ
実を生らすために花を咲かせる
言葉を結ぶ、濃霧のなかに佇む湖畔にて

・牧歌にわたりと欠伸が窪む
魂の汽笛が寂しげな蒸気とともに鳴り響いた
僕は硬質のアスファルトに横たわる

・咥えた模造紙を汗で濡らしたい
摘み上げた世界を肌で数えたい

140字 恋愛詩(5作)ちょっぴりダーク

140字 恋愛詩(5作)ちょっぴりダーク

深呼吸をする前に膨らんだ感情を
僕だけに教えてほしい
捕まえて、そっと耳に囁いて
温めた蜜を溶かして作った王冠を
頭に乗せてほら

暗い夜空に飛散した星々は
明るい朝を運んでくる

沈んだ夕陽をその手で隠してくれ
我が儘な僕のために
きみの声で目覚めたい
きみの声で目覚めたい

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強請って起こした本能の在処
きみの奥に座る漆黒の月
天井がない空を指先でなぞり
仰ぎ見た僕にかける終わりの

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娘が電話越しに言う。「お父さん、来月渡す物、決まったの?」
俺はカレンダーを見て「そんな日もあったなぁ」と返したら、こっ酷く怒られてしまった。
アドバイスを貰って買ってきたが、きっと俺は照れることなく、妻にほらよと渡すだろう。

(短い読切小説)

【童話風物語】月の鏡と迷子の天使【短編】

【童話風物語】月の鏡と迷子の天使【短編】

※商用作品の候補(納品時は大まか)の1つでしたが、別の作品を選んでこちらをボツにしました。いつもと違うストーリーの雰囲気を、絵本を読むみたいにお楽しみください。

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愛に満ちた天国は、喜びと微笑みの揺り籠。約束された安寧の空間。
そこでは神様に選ばれた天使たちが、幸せな日々を過ごしています。
なぜならみんな自由に生きていて、みんなに肯定されるからです。

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周波数の塗装に洗剤のメトロノーム
有塩なカタストロフィに瞑る目蓋
猫にカチューシャ
マイノリティなふくらはぎ
飾るは木苺のソプラノ
低音シャギー

(詩)

桜の海が沈んで言葉の線に触れ
息継ぎする魚の群れに落ちる

かじかむ指先と空の岩場
発火する心には導火線がない

右脳を抱きしめてパンジー
サメの弓に横たわる養老の砦

(詩)

消炎が狼煙の灰白月夜に嗤う
木曜のウサギは黒い毛皮で参上
然るべき安穏とした夕餉に立席
作用は赤黒の余命
ぱちぱち鳴る徘徊の手のひら
忘却が破れたアサツキに最奥

(詩)

光が手を伸ばして降りる
私の視線は別の方向へ行く

奈落の底に咲いた花の美しさに見惚れた
暗い涙が満ちて湖を作る

(詩)

イランイランの水槽【成人推奨】短編小説

イランイランの水槽【成人推奨】短編小説

嫌いだった臭いが、背後から抱きしめてくる。私は夏に髪を短く切るんじゃなかったと、身をよじらせた。露わになっている首筋へ、形の良い彼の唇が触れたからだ。嫌いなはずのタバコの臭いが付いた唇。

年下の女の子にモテる若手俳優並のパーツで完成された顔と、いつ鍛えたのか知らない筋肉質の体も良くて、おまけに声も良い。彼が隣を歩けば自慢の象徴となるが、私は都度、恋人ではないものの、気持ちが怯んでしまう。見た目的

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あざとかわいい幸福の味【短いおはなし/大人の百合設定】

祥子の小悪魔的な笑みに、幼いわたしの心は縮まり込む。息をすう、と短く吸い込んだ。なまぬるい息を、肺へと送る。
前を向いていたせいで、下ろしたフォークの先が白い皿の縁から外れ、獲物を掠めることなく手前で当たる音が聞こえた。

「見惚れたの?井坂ちゃんらしいわね」

卵と砂糖の甘い匂いがオーブンから現れた数分前に間接キスをしたせいだと、祥子がキッチンカウンターに立って綺麗に拭いている透明のグラスへ邪な

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色白の足が見える。黒いレギンスから出ている細い足首に、かとなくそそられてしまう。
同居人の由芽子は朝からリビングのラグの上に体育座りし、爪をぱちん、ぱちん、と切り落として、スーパーのチラシの上にばら撒く。テレビを見る俺の存在はこのときだけ透明人間だ。

(140字小説)

瞬きを忘れた詩の流星を見上げて

瞬きを忘れた詩の流星を見上げて

ユメノマの中島しんや様にご提案した詩のうち採用しなかった4点は流星に変え、
日々、綺麗な星々が瞬く、noteの名を持つ夜空へ放ちます。

私の言葉の海には存在しないと思っていた、夢見がちでふわふわな乙女系の詩ばかり。『ファンタズマ』に邂逅したおかげで掬い上げることができました。中島様に感謝です。

🌟

星屑のワルツに流星の居眠り
耳を澄ませてみたよ
透き通ったレースカーテンの向こう側へ

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