見出し画像

Netflix「愛の不時着」③:後世に残る普遍的な愛をテーマにした最高傑作

こんにちは、カイラです。今日は先日に続き、今なお話題の「愛の不時着(사랑의 불시착)」についてレビューしたいと思います!

「愛の不時着」については巷に様々なレビューが溢れているので、単なる作品レビューではなく、作品が持つ社会的なインパクトや考察を中心に新しい視点をお伝え出来ればと思います。前回の「①:韓国における女性の社会進出」「②:永遠のテーマ、南北関係」に続き、今回で最後となる三部作の構成になります。

今回は①②のような社会的観点というより、純粋に一ドラマ作品として素晴らしい点についてのレビューです。

----以下、ストーリーに関係するネタバレを多く含みます、ご注意下さい----


1. 全ての現代女性の理想型「リ・ジョンヒョク」

作品を語る上で、主演二人の美貌は外せない。とりわけ、韓国はもちろんアジア各国や世界中で女性を虜にしているのが、主演俳優のヒョンビンです。

画像3

もちろん彼の美貌やスタイル、演技力については語る必要がないのですが、今回のポイントは、過去記事「①:韓国における女性の社会進出」でも伝えた現代の新しい女性像ユン・セリというキャラクターに対して、劇中の「リ・ジョンヒョク」がまさに今の時代を反映する理想の男性像である点です。

本作品はあのVogue JAPANでも紹介されており、その中でも主人公リ・ジョンヒョクは、「有毒な男らしさへのアンチテーゼ」と表現されています。

これまでの男性らしさが、いわば困難に強く立ち向かい、必要あらば女性の腕をぐっと掴んで引き戻したりするようなものだとすれば、ジョンヒョクの優しさは、ただ何も言わずにそっと傍に寄り添ってくれる。そして、必要なものを言わなくても(自分なりに正解を一生懸命探した上で)「これで合ってるよね?」というスタイル。もちろん「ほら、準備したよ!」というドヤ顔なんてもっての他。Vogue Japanの当該記事でもロウソク(アロマキャンドル)を手に市場でセリを探すシーンを取り上げていましたが、まさにそんな朴訥ながら身に染みる優しさ、理想の男性像が集約されたシーンだと言えます。

画像1

泣きじゃくるセリのために灯り(ロウソク)を指でそっと消し、「すべて良くなりますよ」と優しく寄り添う。派手さはないかもしれないがそんな本質的な優しさを出会った頃から惜しみなく注ぐジョンヒョクに、韓国での生活に孤独を感じていたセリは少しずつ惹かれていきます。

画像2

俳優ヒョンビンの語り切れない魅力を置いといても、このリ・ジョンヒョクという押しつけがましくない男性としての優しさこそが、物語を引き立て、また叩き上げCEOでもあるセリとのシナジーを生み出していると言えます。また、昨今のMeToo運動や女性活躍への機運とと共に、より自立した新しい女性像が実体としてもロールモデルとしても多く世に出始めています。彼女たちに「見合う」理想の男性としてリ・ジョンヒョクが愛されるのは、ヒョンビンの美貌や俳優としての素質を超えた、現代的な理想の男性像の解釈も大きく貢献していると思います。

2. 日常に溢れる愛を伝えてくれる、全ての愛すべき「ウリ」な人たち

過去記事の「椿の花咲く頃」でもそうでしたが、本作品でも周囲のキャラクターはとても丁寧に描写されています。昨今、韓国でこういうパターンのシナリオが流行なのか、はたまたこういったシナリオだから成功したのかはわかりませんが、主人公以外のキャラクターの描写が作品に深みを与え、また巡り巡って主人公たちのストーリーをより盛り上げてくれるのは言うまでもありません。(大人気作品のイテウォンクラスもこの点は同様でした)

韓国語や韓国の文化に親しみのある人ならば、「ウリ」という韓国独特の表現を聞いたことがあると思います。直訳すると私たち、We/Our/Usと言えるのですが、この言葉一つで一気にそのコミュニティへの帰属意識を表現できるもので、自分の家族はもちろん、後輩や友人の子供、バイトやサークル仲間、そして会社そのものや会社のチームにさえ「ウリ」という表現を使うことで、彼/彼女らへの愛着を表現する言葉なのです。

つまり、当初は部外者、まさにエイリアンとして北朝鮮の村に入ってきたセリが、徐々に「ウリ セリ=私たちのセリ」として迎えられ、そして対立・警戒すべき相手から守るべき仲間へと変わっていく。

画像4

そしてそれは皮肉にも、セリが韓国で自分の家族や恋人と数十年過ごしても全く経験出来なかった温かさであり、まさしく愛情でした。だからこそ、韓国ではブイヤベースとシャルドネしか飲めず、「短い口のお姫様(かなりの小食という意味)」として過ごしていたセリが、北朝鮮の地でハマグリのガソリン焼きや草原でのとうもろこし焼きといったワイルドな料理にも、目を丸くしながら夢中で爆食いしたのでした。

画像5

物語の核となる北韓(北朝鮮)の人々とセリの交流は、家族的な温かさや地域コミュニティとの繋がり、年齢や国をも超えた友情、応援、互いへの尊敬など、様々なテーマが集約されています。「愛の不時着」の「愛」は決してセリとジョンヒョクだけでなく、セリと村の人々との関係、村の中での人間関係、相対的なセリとジョンヒョクの家族関係、ジョンヒョクと部隊の仲間たちの友情など、本当に沢山の愛のカタチを描いています。だからこそ、作品自体がとても愛おしく、全ての人に今ある愛の尊さ、日常に溢れる愛のありがたさを伝えてくれるのだと感じます。

画像6

3. 忠実なリサーチと再現力 - ディテールへのこだわり

作品を見た方であれば、数多く出てくる北朝鮮の村や平壌の街並みがとても気になったのではないでしょうか?私自身も10年以上前に北朝鮮、そして平壌(ピョンヤン)に行ったことがありますが、ドラマを見ながら何度も巻き戻したりしました(笑)特に、信号機代わりに立っている交通整理のお姉さんは、実際に北朝鮮に存在する職業で北朝鮮を象徴する一つでもあるので、とても懐かしい気持ちになりました。

画像8

今回、製作陣が特にこだわったのは北朝鮮の村や人々の暮らしのリアルな再現とのことで、実際に北朝鮮出身者へのインタビューや考察、監督や製作陣との事前対談など、かなり考証を重ねて作り上げたことが数々のメディアでも報じられました。その甲斐もあってか、北朝鮮出身の方からの評価も比較的高かったとのことです。また、村のシーンでは実際に北朝鮮出身者がエキストラとして出演もされていたとのこと。

まず気になる村は、全てオープンセット。残念ながら撮影終了後に全て解体されたようです。
画像12

そしてジョンヒョクとセリが初めに出会うDMZは、実際にをDMZを訪れたものの「手つかずの自然感」が感じられず、チェジュ島のアラドンのとある山で撮影したそうです。この裏話にも製作陣のこだわりを感じます。
画像10

また、平壌駅として登場したのは、実際に今も汽車を走らせているモンゴル・ウランバートル。汽車を止めることが出来ないため、止まってる間のいわゆるゲリラ撮影だったそうで、ここもこだわりがすごい!画像11

汽車が停電で停車して、二人が野宿するシーンも同じくモンゴル
画像9

また、CGかと話題になった程美しいスイスのシーンも実際に現地撮影されました。スイスの景色は、別次元で美しかったですね。

画像13

画像15

美しいシナリオや俳優の熱演ももちろんですが、結局のところ良い作品と呼ばれるものは、こういったディテールへの徹底的なこだわりなのだと改めて痛感しました。もちろんセットやロケ撮影だけが作品の全てではないのですが、これらの裏話を聞くだけでも、監督をはじめ製作陣の作品作り、そして1シーン1シーンへの強烈なこだわりを感じます。

個人的には、平壌の街(の設定)で女子会のお茶をする、百貨店で買い物する、ドライブする、といった文字通り日常の風景を多く描いている点も特徴的で印象的でした。

画像14


いかがでしたか?レビューの第三部は、特に作品の他作品と違った描き方や特徴にフォーカスしましたが、皆さんはどのポイントが好きでしたか?というか、きっと全部ですよね!(笑)

また次回、別の作品のレビューでお会いしましょう!

Thank you and addios!





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?